ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 痛覚
- 日時: 2009/11/05 17:28
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: z9DnoDxA)
今度こそ消えんように頼んますぜ
仲矢真由乃と申します、以前書いてた小説が手違いかなんかで一覧表示されなくなったので復旧するまで違うのでも書こうかと
ちなみにかなり流血云々するかと思われます ご注意ください
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- 1 ( No.1 )
- 日時: 2009/10/23 23:59
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: PIWwehw3)
血が流れている。痛みはない。
血が流れている。自分の体から。
血が流れている。切れている唇から。
血が流れている。頬の切り傷から。
血が流れている。首輪で固定され、それによる首の皮の擦り傷から。
血が流れている。釘で固定された両腕から。
血が流れている。釘で固定された両足から。
血が流れている。痛みはない。
涙は、流れない。
- 2 ( No.2 )
- 日時: 2009/10/24 00:29
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: PIWwehw3)
「やあ」
聞き覚えのある声に新聞から顔を上げると、声の本人の姿が目に入った。我が友人の稲田である。
「お、久しぶりじゃないか」
「忙しくてね」
彼とは高校以来、15年ばかし続く友好関係を保っている。おそらく親友というものであろう。いや、訂正する、親友だ。断言できる。
「やっぱり大変か、孤児院の経営は」
「孤児院という呼び方は止めてくれ、と前に言ったはずだが」
「そうだったな、すまない。何だったか、児童養護施設?」
「合っている。まあ、孤児院というのが普及しているからしょうがないといえばしょうがないがな」
そう言って稲田は苦笑する。
男の私が言っても稲田はさほど嬉しくは思わないだろうが、彼は非常に良い男である。それは顔立ちだけではなく、性格等々も含めての評価だ。
容姿はといえば、それは端整な顔立ちをしている。彼は私と同期であるので、もう33というオッサンなのだが、私はともかく、彼ならば20代前半と言っても誰も疑わないだろう。まったく羨ましい限りだ。私なんぞは最近、ある友人に「立派なオッサンになったな」としみじみと言われたばかりだ。着実に中年へと歩みを進めている。とても恐ろしい。
また、稲田は性格も大変よろしい。15年付き合ってきた私だから言える、全くの事実である。彼以上に男前な性格をしている男性に、私はまだ会ったことがない。
さっきの会話であったが、彼は児童養護施設、「桜の蕾」を経営している。彼は成績等も非常に優秀であり、様々な大学から引く手あまただったのだが、それを全て蹴ってその道へ進んだ。その進路は中学の頃から決めていたらしい。
多少の友人補正はあるかもしれないが、それを省いたとしても彼は素晴らしい人物だと私は思っている。
- 3 ( No.3 )
- 日時: 2009/10/24 16:33
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: 1YHdpXpY)
ところで、現在の位置を書くのを忘れていた。
今、私と稲田がいるのは古本屋である。経営者は私だ。
昔から古本屋という古風なにおいのする店が好きだった。結果自分で建てるまで行き着いたのだが、まあそこそこに軌道に乗り、金銭に困ることもなくなった。有難い限りである。
「どうだ、不況の波だが」
「こっちは大丈夫だ。むしろ新本を買わないで安価で済まそうとする人が多くなって客が増えている」
「なるほど」
「俺としてはそっちの方が心配だが」
「ああ、心配するな。むしろ貯金が増えた」
「増えた?」
ここでいう貯金というのは、稲田個人の貯蓄ではなく、桜の蕾の貯蓄である。
「晶は覚えているか?」
「晶ちゃんか。あのぶ……黒髪の綺麗な」
一瞬、「無愛想な」と言いかけてしまった。
今年でいくつになったか。もう中学生であることは間違いはない。小さいころから美人になると思っていたのだが、そろそろ身目麗しくなってきているのだろうか。
「昔から機械いじりの好きな子だったが、2か月ほど前、遂にコンピューターを作ってしまってな」
「ぶっ」
喉を潤そうと飲みかけていた水を噴出してしまった。
本にかからなくて何よりだ。
- 4 ( No.4 )
- 日時: 2009/10/24 21:42
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: 1YHdpXpY)
「コンピューターという物は中学生が作れるような代物だったか?」
「違うだろうな」
いやはや、晶ちゃんはやはりすごい子だ。
私もよく桜の蕾にはお邪魔をするので、目立つ子供達の名前は大体覚えてしまっている。
晶ちゃんというのは、話から見てとれる通り、「桜の蕾」に在宅している少女である。両親が交通事故で亡くなったらしく、7,8歳の頃からあそこにいる。
しばらくはほとんどしゃべらなかったらしく(大抵の子はしばらくそうなのだが)、どんな子か特徴が掴めなかった、と稲田は言っていた。
彼女の特異性を知ったのは、電子レンジが壊れた時らしい。
結構に年季の入った電子レンジだったのだが、5年ほど前、遂におじゃんになってしまった。その頃はまだ貯金も少なく、新しく買うべきか否か悩んでいたらしいが、そこで晶ちゃんが才能を発揮した。電子レンジを軽々と解体して、再び組み立てたのだ。しかも、稲田が電源を付けてみると、以前よりも調子が良くなっていた。
その後も、彼女は冷蔵庫、テレビ、エアコン、洗濯機などなど、多種多様な電化製品を直していった。勿論稲田は大助かりである。
説明になっているとは言い難いが、まあ、つまりはそういう子なのだ。
「どこからかは知らないが、結構前から壊れた基盤とかを拾いはじめていてな」
稲田が事の発端を語り始めた。
「晶のことだから、何か作るんだろうとは思っていたが、まさかコンピューターを作るとは思っていなかった。学校で解体とかしてないといいんだが」
晶ちゃんなら有りうるのが怖いところだ。
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