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HAIDO
日時: 2009/10/24 19:32
名前: 呑月闇夜威 (ID: .CNDwTgw)

〜プロローグ〜

政府が極秘裏に計画を進め、ついに完成させた薬。肉体強化薬。
その爆発的な効果から科学者達に『HAIDO』と名づけられた。
しかしその効果の分、副作用もとても強く、並大抵の人材では体が
耐えられず、よくても一生動けない体になってしまうほど凶悪な薬
なのだ。しかしその副作用に耐えられる披験体のことを皮肉を込め
て、『ZIKIRU』と呼んだ。


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政府専属の陸軍の中では一つの話題でもちきりだった。
短期間階級特進新記録、60年以来の記録更新。3ヶ月で13階級昇進。
人柄も良く明るい青年で周りからも慕われ、上司にも気に入られ、
とにかくこの3ヶ月はこの『姫蛇 獅頭也』の話しか上がらなかった。
しかしその裏でコツコツと地味に昇進している青年がいた。
『杜賭眩 竜』彼もまた3ヶ月で9階級昇進。この記録も歴代で4位。
すごい記録。少しでも姫蛇とズレていたら彼もまた話題にあがって
いただろう。しかし目立ち過ぎている姫蛇の存在のせいで、全く話
題に上がらなかった。しかし控えめな子のため、その状態に満足し
ていた。可哀想な子である。


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科学者たちは、完璧な実験結果を見るため、有能な人材を欲しがっ
ていた。軍から抜き取ろうとするのだが、そんな危険な実験に軍に
必要な人材を渡せる訳もなく、硬直状態が続いていた。
そんな時、政府は竜の存在に気づいた。目立つ事もなく、まだ階級
は低め、しかしこのスピードならポテンシャルもあり…科学者は、
薬に耐えられると予想した。
早速軍に申請する。軍の出した答えは『OK』だった。



一章『投与』

竜と獅頭也。実力はほぼ同じ、性格が違うだけでここまで変わるも
のなのか、と考えさせられる二人である。
光と影の様な二人だが、とても仲がいい。親友といったところか。
あまり知られていないので初めて聞いた者は驚くだろう。
まぁこの関係が悲劇を招く事となるとは誰も予想しえないことであ
る。



竜は知らされないまま研究所に護送される。
不安そうな顔をしてみるものの誰も声さえかけてくれない。虚しい。
車がとまりドアが開いた、研究所についたようだ。
何重にもセキュリティチェックを受け、ようやくたどり着いた部屋
には拘束用の椅子が一つ、あるだけだった。
「座れ」
覚悟を決め、座る。予想通りというか何というか、手足を椅子に縛
られた。微動だにしない。はてさてどうなる事やら。…ふざけてみ
ても落ち着かない。

ウィー—…

あからさまに怪しい薬と注射器を防護服を着た男…かどうかは分か
らないが、人間と予測できる生物が運んできた。
今になって恐怖がこみ上げて来た様だ、寒い部屋で汗をかいている。
一歩一歩勿体を付けながら歩いてくる。相当性格が歪んでいるよう
だ。
距離5メートル弱時間にして15秒しかし5時間くらいの体感時間だ。
その5メートルを歩き終え、注射針が右腕の皮膚に触れる。
そして、少しづつ肉を裂いて体内に鉄独特の冷たさが広がってくる。
入りきった。ここまではいい、小学生でも味わう事だ。この後注入
されるものは何なのだろう。竜はそう思っているだろう。
注射を銃に例えたとき引き金にあたる物、それに触れている指が動
いた。


ガラララララララ

突如、強い揺れが研究所を襲った。

椅子しかなかった部屋が瓦礫でいっぱいになる。
その瓦礫の中運良くがれきの当たらなかった竜が、薬の副作用で苦
しみ、もがいていた。
科学者は…ドS全開で竜をいじめた天罰が下った様だ。



陸軍。
獅頭也は竜が研究施設に引き渡され、その研究所が地震で崩壊した
ことを知る。
そして、親友を助け出すべく研究所に向かって走り出した。
その顔には珍しく焦りの色が滲んでいた。

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2章『救出』 ( No.1 )
日時: 2009/10/24 19:43
名前: 呑月闇夜威 (ID: .CNDwTgw)

——ハァ

———ハァ

果てしなく続く草原を必死に走る青年が一人。
姫蛇獅頭也である。
彼は友を助けるべく、全速力でもう20分は走っている。足はもう限
界を越えているはずだが走り続けている。走れメロスだ。
研究所が見えてきた。更にスピードが上がる。

———ハァ—ハァ…

見事に崩壊している。しかし明らかに不自然な煙が立ち上っている。
紫と黄色と白が交じり合った煙。その発生源に、竜はいた。
目が真っ赤になり、肌も赤みを帯び、頭を抱えてもがき苦しんでいる。
「竜…!」
「獅…頭……也…?」
竜をかかえ、病院に運ぼうとする。すると、床が崩れ地下に落とさ
れてしまった。地上への階段は瓦礫で塞がれてしまっている。上か
ら出るのも無理そうだ、上までは瓦礫で昇れても穴が中央にあるの
で届かない。
「くそっ…!」

———カラン

瓦礫の中から試験管が転がってきた。中には濃い緑の液体が入って
いる。そして『HAIDO』と表記してある。
「!」
長官のお気に入りで期待のエースの獅頭也はこの薬のことを聞いて
いた。これを飲めば何らかの力が手に入る事も…。
これを飲めば、竜を助けられるかもしれない…。
迷いわ無かった。試験管の蓋を壊し、一気に飲んだ。

バクンッ

胸に激しい衝撃が走った。一気に血が流れたのだろうが、あまりの
強さに痛みさえ覚える。
その直後、頭に激痛が走る。
「うあぁっ!!」
思わず倒れこんでしまう。
しかし、こんな痛みに負けていては意味が無い。
「ぐ…くっ」
立ち上がった。気合だ。根性だ。

———パァン———

頭の中で何かが割れたような音がした。痛みは凄かったが一瞬だった。
何か頭の中にあった無駄なものが弾けとんだ様な感じだ。
爽快な気分だ。
力が湧いて出てくる様で、何でもできそうな気にもなっていく。
突如、頭の中にイメージが流れ込んでくる。曖昧な物だったが、
分かる。
風。

右手に力を入れて見る

ブォォォォオオオオオ

風が発生する。しかも

ブォォオオオ

操れる。手足のように。



これで助けられる。


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