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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 秘密の金魚 その3
- 日時: 2009/10/26 16:40
- 名前: 綾咲麗奈 (ID: f7aWX8AY)
- 参照: http://sakuradukino.web.fc2.com/
03:睡眠
森綾香は目を覚ました。このごろ彼女は、睡眠不足に陥っていた。理由は誰も知らない、ただ、彼女は夜中に目を覚ます。
「月が、今日は紅い」
今日の月は紅かった。昨日は青かった。彼女は毎日月の色を口にする。
「明日の月は……きっと黒い」
明日は新月である。一定の周期で回ってくる月が無い日。満月とは逆の、月である。新月のときだけ、彼女は夜中に目を覚まさずに寝ることが出来る。
彼女は泣いた。新月の前の晩、彼女はその細くなった月を見ながら涙するのであった。
「ごめんなさい、きっと、あの時私が———」彼女の言葉は消えた。
風が彼女を攫う。言葉でしか、存在を表すことの出来ない彼女の唯一のものを、風は呆気ないほど簡単に攫う。
そうして、彼女は、徐々に存在を攫われ、睡眠不足で病に倒れ、食はどんどん細くなり、やがて完全に無に変わる。
そういう夢を、綾香は毎日、見るのだ。
彼女は睡眠不足ではないし、食も細くなっていないし、月を見ることは無い。だが、彼女は、確実に蝕まれていた。
…………冷静さを、恋によって。
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