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俺と世界と夢戦争〜mind war〜
日時: 2009/10/28 20:13
名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)

大半の方は初めまして。HNは違いますが前作を知っている方はお久しぶりです。
敢えて名乗る事はしません。作品を読んで「この人かな?」と思った方は気兼ねなく訊いてみて下さい。

アドバイス、誤字や脱字の報告は非常に有り難いのですが、一行レス及び内容の薄いコメントやギャル文字の使用、その他ネットマナーに反する行為は控えて下さい。


それではお付き合い下さい。

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Re: 俺と世界と夢戦争〜mind war〜 ( No.1 )
日時: 2009/10/30 18:48
名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)

war:-1 タイトル、無名

 日常とは何か。非日常とは何か。俺の日常と思ってた毎日は嵐のようにやって来た非日常によって容易く壊されてしまった。
 いや、これが日常になってしまった。あの夢のせいで。夢、なんだよな。

 そう、アレは不思議な夢だった。……夢、だった。

※  ※  ※

(あれ、ここはどこだよ? 暗くて辺りが見えん。どっかに電気のスイッチか何かねぇのかよ)

 俺が今居る場所は何故か辺り一面の暗闇に染まっていた。別に俺は第六感の類は信じない方だが、直感が動くな、と全力で警鐘を鳴らしていた。何故だろうか? 今動けば二度と日の光が浴びれない気がする。ええと、例えるなら、アレだ。断崖絶壁の崖の先端に立たされてる気分、みたいな? うん、家に帰ったら現国の勉強しねぇとなぁ。多分、一昨日の小テストの結果見せたらお袋怒るよなぁ……。あーあ、ずっとここに居てぇなぁ。まぁテストなんてどうでも良いさ。
 因みに今更だが俺の得意技はどんな時でも独り言で楽しくなれる事さ。ヘイそこの子猫ちゃん、俺と一緒にお茶しませんか!?
 などと暗闇に慣れていつも通りのテンションになった所で、多分ポージングをした時に足を動かしたせいで、柔らかいゴムのような物に包まれた硬い何かを踏んでしまった。

(ん? 何か踏んだよな。ったく危ねぇよ! 転んだらどうする!!)

 少しの苛立ちとまた襲って来た六感の警鐘に少し動揺しながらソレを見る為に顔を近づけた。少し暗闇に目が慣れたのか、ぼんやりと輪郭が浮き出て来た。

(んだよ、ゴムのオモチャか? ったく、何でこんな所に置いと、く……)

 俺は見てしまった。「ソレ」は、ゴムのオモチャなんかではなく、切り離された人体の一部、それも太い血管が通ってる体の上の方、右肩と左肩の間の中心から上に伸びている少しくびれた部分から人間の頂点に当たる部分だった。「ソレ」が、一個二個の数なんかではなく、数百、数千単位で転がっていた。確信した時、「ソレ」が放つ独特な臭いが鼻を通って脳を焦がした。

(し、死体!? え、あ、何で、っ)

 口の中に広がる酸っぱい物を服や顔が汚れるのも構わずに含んでいた物を出すと幾分かはスッキリしたが、また込み上げてきそうだった。

(ここ、やべぇよ……逃げろ! 足、動けよ!! 畜生! 動けよ!!)

 逃げたいけど足がすくんで動けず、俺は呆然と突っ立った。「ソレ」のように動かない俺、その周りを本物の「ソレ」が囲んだ沈黙を破ったのは断末魔と共にこちらへと放られた、新たな「ソレ」だった。
 冷静に見ている場合ではない、早く逃げないとどんどん近づいて来る。

「あ、ひぃ、あ」

 情けない声が出てようやく足が動き、俺は足が千切れそうになるくらい両足を動かした。動かす度にぬかるんだ泥を踏んだような音と、「何か」が折れて足場が崩れて転びそうになったけど、生憎俺は下を見れるような勇者じゃないから必死で踏みとどまって足を動かした。



 やがて道が開けてくると、そこは雨が降っていた。
 ケガをした時に体内から出て来る液体と同じ色の。
 直接言うと、つまりアレだよ、えーと、その、あれ。「殺人現場」。あはははは、なんだか恰好良い四字熟語みたいだなぁ。よし、リピートしてみよう。

「殺人現……「ようこそ。私の殺人現場へ。うふふ、また、会いましょう?」

 突然、さっきまで中心で「ソレ」を作っていた小柄な少女が振り向いた。少女は人間が作れる表情とは思えない程の恐ろしい殺気立った、それでも棘のあるバラのように美しい妖艶な笑みを浮かべた。

(何で? こんな狂った奴、知らない筈なのに見覚えが、ある?)

 目が慣れてもやはり暗闇なので、細部までは見えなかったが、記憶のどこかに彼女の姿があった。懐かしい、ノイズとモザイクだらけの思い出が。

「あ、あの、あのさ!! 君、どこか、で出会った、訳、な……」

 決死の思いで俺は彼女に話しかけてみたが、最後まで言う事は出来なかった。

※  ※  ※

 目玉の機能が正常に戻った。そう思った理由は、今映し出している風景が見慣れた自室だったからだ。最近、模様替えしたばかりの淡いブルーのカーテン、机の上には投げ出された現国の小テストと開きっぱなしの参考書、その隣にはどこにでも売っていそうな安っぽいシルバーのシャープペン、机の隣に空になったペットボトルや古い雑誌を乱雑に詰めこんだプラスチック製のゴミ箱。何もかも、俺の風景だ。意味なんか伝わらなくて良い、とにかく日常だ!!

「あ、はは。ははははっ!! 妙に怖くてリアルな夢だったなぁ」

 ……夢だよ、な?

Re: 俺と世界と夢戦争〜mind war〜 ( No.2 )
日時: 2009/10/29 20:44
名前: 十六夜 葉月 ◆Gl6JohbFiw (ID: A8w5Zasw)

war:0 忘却と言う名の舞台の上のニチジョウ

 俺だって一応青春真っ盛り、幸せ一杯で楽しい事に溢れてる毎日を過ごしてる。それにもう高校生だ。いくら怖い夢を見たからって一週間もすれば忘れてしまう。
 あの時の、俺も忘れてたんだよな……。

※  ※  ※

 黄昏時に、並木道に沿ってうっすらと黄色く色付くイチョウの葉を眺めながらゆっくりと歩いて家路に就くのが最近の俺の日課だ。
 なんて少し洒落た事を言ってみたが、俺の通っている高校の、特に俺の住んでる築十ウン年の割には防音設備が悲惨な事になっていて毎晩俺を悩ませている、とにかくボロいマンションの周辺に住む奴は皆通っている、当たり前の事を俺は少し恰好良く言ってみたかったのだ。他の奴は別として、俺はそんな年頃なんだよ、多分。
 傍から見れば独り言を呟きながら時々表情を変えている様は正に「ヘンジン」であろう。だが俺は変人ではない。法条 優希(ホウジョウ ユウキ)と言う立派な名前もあるし、後ろを振り返ればまだうっすらと我が学舎、私立春星高等学校が見える。身元も、多分学歴も分かっているなら変人じゃないじゃないか! 至って普通の高校生以外に何と呼ぶんだよ!? 自慢じゃないけどな、成績も運動神経も何もかもが並だ。こんな個性の無い人間が変人の訳ないだろ!? 変人に三指ついて土下座して謝ってこい!!

「わぁっ!! いきなり大声でそんな事言うから驚いたじゃん。にしてもユキちゃん、真面目に……頭、大丈夫? 今度、従兄弟が勤めている腕が良いって評判の病院、紹介しといてあげようか?」

 俺は背後に潜んでいた気配を察し、ある予想を立てた。絶対に奴だ。栗色の長い髪を後ろで大きなヘアクリップで纏めた見た目美少女、中身極悪のアイツ……

「やっぱり予想通りで御座いましたか。って、いつから俺の背後に居た!? どこまで俺の独り言聞いてたんだよ! ってか毎日毎日ストーカーするな! そしてユキちゃんって呼ぶなぁあああ!!」

 叫びは虚しく辺りに響いただけでアイツは聞いてなかった。むしろ満面の笑みを浮かべている! ヤバい、ヤバいぜ中佐!! 敵はトドメを刺そうとしていますよどうしましょう!?

「ん、大丈夫。安心してよ。最後までしっかり一語一句聞き逃さないで聞いてたから」
「笑顔でそんな事言うなよ……」

 ああぁぁぁあさらば俺の青春……。そうだ、何もかも俺の背後で笑ってる森川 千歳(モリカワ チトセ)のせいだ! 畜生!! アイツは運動神経も成績も並外れて天才的なのに、なのになんでそれを良い方向に使わないで俺を虐げる方向に使ってるんだよ!! 畜生! ちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって! つか、あのファッションセンスは意味分かんねーよ。何でジャージを制服の上に羽織ってんだよ!! 男のロマンがぁぁああ! 煩悩がぁぁああ!!

「もしもーし。ユキちゃん、チャネってるのは分かったから戻って来て。イタいから。幼稚園児に指差されてるよ」
「好きにしろよ……」

 そんなこんなで結局、背後に千歳を残したまま、再び歩こうとした時、周りの風景にそぐわない黒塗りの高級車が目の前に止まった。
 それが、悪夢の再来の鍵だったのかもしれない。


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