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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 前に故人を見ず、後ろに来者を見ず
- 日時: 2009/10/31 21:46
- 名前: 梵鍼いち乃 (ID: NAPnyItZ)
ひとり、中国を歩く。一匹、それに付く。盲目の旅人・千曹。幼少の時とある事故で世界を失った。人よりひとつ、千の修羅をその身に背負い、膝を折る変わりに足を一歩踏み出す。その旅中で彼が出会うものとは。そして、つかんだものとは。
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- sled.1 杖の男 ( No.1 )
- 日時: 2009/11/21 15:37
- 名前: 梵鍼いち乃 (ID: NAPnyItZ)
太陽が中天に上がっていた。
干上がったようなあぜ道を、一人の男が長い杖をつきつき、歩いている。
編み傘を深くかぶり、裾を紐で縛った長モンペに藁草履と、ひどくここらでは浮いて見える格好である。
しかもその後ろを、鞠のように追いかける一匹の黒い仔犬があった。
ゆっくりと、足の下の地を確かめるように足を進める男のまわりで、先にいっては戻り、ぐるぐると駆け回って男に付かず離れずといった距離でじゃれ遊んでいる。
「獲麟」
男がふいに口を開いた。
前へ行っていた仔犬が、道上の小石や木枝をけちらして、戻ってきた。
獲麟。それは、神獣麒麟を捕らえるという猛々しい名。それとともに、孔子の最後に書き残したという、終焉を意味する言葉でもあった。
「この先に、川がある。そこで休もうか」
仔犬は一声心地よげに鳴いて、男の横に付いた。
水田地帯を抜けて、この村の東のはずれ、街道へと続く橋へと向かう盲目の男と仔犬の上を、涼風が駆け抜けていった。
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