ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Fate of Chains
- 日時: 2009/12/01 18:44
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
- 参照: http://noberu.dee.cc/noveljunia/keijiban/black/read.cgi?no=119
※カキコだと3000字以内などという規制や、小説自体にも色々描写不足や誤植があったので、一旦ノベルで整理してからもう一回来ます。
というわけで少しの間ロックします。整理できたらリメイク版をこちらに立てます。
〆御挨拶
どうもこんにちは。某さんです。名前に関しては以下省略ry
何故か俺の立てた「Fate of Chains(フェイト・オブ・チェーンズ)」が無くなっていました、何故か。
まあ初めからの書き直しになるんですが、宜しくお願いします。
今作は「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をモチーフとしたハイ・ファンタジー+ダークファンタジーです。
※荒らし退散。
※どっかの某漫画と似てね?って方。作者自覚してるんで、どうか心の奥に仕舞っておいて下さい。
※アドバイス歓迎です。俺駄文なので。
※フランス語の使い方がめちゃくちゃ。「de」なんて場合によって余裕で付けない作者。いや、殆ど付けないかもしれない。
〆目次
Episode00 Secret-始まりの時- >>1
Episode01 Temptation-ウサギの誘い- >>2
Episode02 Rabbit Hole-悪戯ウサギの通り穴- >>3
Episode03 Black and Black-黒服の二人- >>5
Episode04 Parallel World-異世界と少年- >>7
Episode05 Craig-黒狼(ルー・ノワール)- >>8
Episode06 Discussion-支部長命令- >>9
Episode07 Alice of the Game-少女の退屈しのぎ- >>10
〆訪問者様
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- Re: Fates of Chains ( No.1 )
- 日時: 2009/11/21 16:08
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
Episode00
Secret-始まりの時-
「……で、予知ではこうなったわけだ」
大きい屋敷の一室、三人の人間が何やら内密な話をしていた。一人は長い金髪にエメラルドの瞳を持つ少女、一人は眼鏡に灰色の髪を束ねた長身の男。一人は銀髪に透き通った蒼い瞳を持つ少女。
銀髪の少女の言葉に、灰色の男が口を開いた。
「へえ、あの白兎(ホワイト・ラビット)自身が動くとはねえ……有難うレイシーちゃん」
「妾にちゃん付けをするなと何回も言っておろう。……まあ、この予知も当たっているか自身が無くてのう。妾の予知は、白兎に邪魔されているからな……」
銀髪の少女——レイシーは、「はあ」と溜め息をついてキコキコとロッキングチェアを揺する。
レイシーの言葉を聞いて、金髪の少女も口を開く。
「大丈夫だとは思いますがね。最近の白兎は、何やらこそこそと準備を始めているようですし……。まあ、あのゴキブリウサギさえ邪魔しなければ、副支部長の予知は絶対ですから」
灰色の髪の男も「うんうん」と同意するように頷く。
「そうそう、私の愛しのルチアちゃんの言う通り……ぐふぇっ!」
男の恥じらいのない言葉に、金髪の少女——ルチアがすかさず蹴りを撃ち込む。蹴りは脛にヒット。「弁慶の泣き所」など言われるところに蹴りを撃ち込まれれば、さすがに痛い。男はこれには慣れているらしく、苦笑しながら脛をさする。
そんな男を余所に、ルチアは話を続ける。
「万が一の事がありましても、私が行けば問題ありません。速攻で白兎を抹殺します」
「ルチアちゃん……殺すんじゃないんだからね? 僕たちは白兎を拘束するんだからね? そこ分かってる?」
「五月蝿い黙って下さいロリコン支部長」
男の突っ込みも軽く受け流し、しかも毒舌を吐き捨てるルチア。男はこれも慣れているらしく、苦笑で受け止める。というか苦笑というよりは、にやけているように見えるのだが。
——此処までいくとこいつもいよいよマゾだな……。
レイシーはふとそう思ったが、心の奥で留めておいた。
「さて、話を戻すとしよう。私達の目的は白兎を拘束し、此処に連れてくる事だ。で、それなんだけど……」
男はちらっとルチアを見る。ルチアも分かっていたようにこくりと頷く。
「んじゃ緊急命令って事で、ルチア=フェデリーチ。お望み通り白兎の拘束を頼むよ。ただし……」
男はくるりと反対方向のドアを見る。するとそこには、いつの間にか一人の少年が立っていたのだ。レイシーも驚いたように少年を見る。
ルチアは少年を見て顔を歪めた後「やっぱりか」とでも言うように溜め息をつく。
「監視係としてクレイグ。ルチアが白兎を殺さないように監視するのと、一緒に白兎の捕獲、頑張ってね」
「はいはい、メンドくせーけど……。支部長命令じゃ仕方ねえな」
クレイグと呼ばれた少年はひらひらと手を振る。そしてちらっとルチアを見た後「チッ」と舌打ちをした。ルチアも快く思っていないようで、クレイグを殺意のこもった眼で睨んでいる。どうやらお互い仲が悪いようだ。
まあこの空気がいつまでも続いても仕方無いと思い、男がこの空気を終わらせるように口を開いた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
ただ一言、そう言った。
男の言葉に二人は一礼した後、静かに部屋を出て行った
- Re: Fate of Chains ( No.2 )
- 日時: 2009/11/15 11:34
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
Episode01
Temptation-ウサギの誘い-
”おいで、おいで、こっちに……”
「ん……?」
何か聞こえたような気がして、銀髪に蒼と金のオッドアイを持つ少年——セシルは後ろを振り返る。だが此処は森で周りには、うっとおしい程の木々。それから自分と姉がいるだけで、自分を呼ぶような人は姉しかいない。だが、聞いた声は優しげな男の声だから姉ではない。
——きっと空耳だったのだろう、セシルはそう思った。だがまた聞こえる。
”おいで、おいで、セシル=エヴェレット……”
自分の名前を呼ぶ声が、何回も繰り返し、繰り返し、エコーのように聞こえるのだ。それも耳から聞こえてくるのではなく、頭に直接テレパシーのように響いてくる。
——誰、僕を呼ぶのは……。
声はやがて、頭を圧迫するかのように重く響く。だんだん、だんだんと、意識が遠のいていこうとしていた。が、その時。
「セシル? どうしたの?」
金髪の女性——姉であるシャーロット、通称ロッティの声が聞こえた。セシルはハッとなってがぜんと意識を取り戻す。
——何だったんだ、今の。
セシルは頭に響いてきた声を疑問に思うが、考えたところでまったく分からない。
「いや……何でもないよ姉さん」
何でもなかったわけじゃないが、頭に謎の声が響いてきたなんて別に言う必要もなく、とりあえずそう言っておいた。
「そう……。あ、そうえいばそろそろお昼ね。メリッサがお昼を用意して待っているわ。お屋敷に戻らないと」
セシルとロッティの家はエヴェレット家と言われる大貴族で、屋敷も国のなかではかなり大きい方だ。メリッサとはエヴェレット家に使えるメイドで、セシルやロッティの友人でもある。
セシルはロッティの言葉に「そうだね」と懐中時計を開き、頷いた。懐中時計の針は一時を指している。
だが、セシルは帰ろうという言葉に「うん」とは言わなかった。
「……姉さん、ちょっと先に帰ってて。僕、少し気になる事があって……」
——何でだろう、あの声が気になる……。
何故かは分からないが、セシルにはさっき頭に響いてきた声が気になって仕方なかった。
——あの声、初めて聞いた声の筈なのに、どこか懐かしい……。
「分かった。なるべく早く帰ってくるのよ」
シャーロットはそう言い残して、屋敷の方向へと帰っていった。もっともセシルは、先刻の声の事をずっと考えていて、その声には気づかなかったが。
”セシル……早くおいで”
また声が聞こえる。頭に直接響いてくるから、どこからその声が聞こえるかは分からない。だがセシルは気づけば歩き出していたのだ——向かった先に声の持ち主がいるような気がして。
自然と動く身体に従い、辿り着いた場所には爽やかな雰囲気の一人の青年。頭に白い兎の耳の付いているミニハットをのせているという、少々変わった外見だがそれを除けばごく普通の青年だ。
「やあ、セシル=エヴェレット?」
青年はにこりと笑みを浮かべて挨拶をする。その優しげな声は間違い無く、先刻自分を呼んでいた声だ。
「えっと、こ……こんにちは」
いきなり自分の名前を呼ばれ、戸惑いつつも挨拶を返す。
——そうえいば……何で僕の名前を……。僕はこの人の事、何にも知らないのに……。一体誰……。
「何で初対面の筈のオレが、君を知っているかって?」
セシルはビクッと身体を震わせた。考えが分かるかのように、見事セシルの考えていた事を言い当てたのだ。
「図星のようだね」
そう言って青年はまたにこりと微笑する。そして次の瞬間、青年はセシルの目の前にいた。セシルと青年の間には10m程しか差がないが、こうも一秒足らずで10mを歩ける者はいないだろう。
「そんなの……オレが君を知っているからさ。セシル=エヴェレット」
- Re: Fate of Chains ( No.3 )
- 日時: 2009/11/18 21:42
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
Episode02
Rabbit Hole-悪戯ウサギの通り穴-
*
「まったく、何で俺がお前と一緒の任務なのか……」
様々な次元と繋がる巨大な穴——通称『ウサギの通り穴』(ラビット・ホール)の中に、ルチアとクレイグはいた。
巨大な穴でしかも特殊な時空であるとはいえ、何故仲の悪い二人が穴の中で一緒にいるかというと、彼らにはある任務がかせられていた。
「知りませんよ。少なくとも白兎捕獲は私一人で充分でした。なのに支部長は監視係、しかも貴方のような者を任務に連れて行けと言ったのです」
「お前一人で行かせたら白兎殺しかねないから、俺が監視係として来てるんだろ。ていうか支部長『連れて行け』なんて言ってねーよ。何で俺がお前の部下みたいな扱いになってんだよ……」
「私の方が貴方より上だからです。全てにおいて存在において」
「……一発撃たれたいのか?」
クレイグは懐から一つの小型の銃を取り出す。表情は変わっていないが、怒っているのは行動からよく分かった。ルチアもそれに対抗しようと、どこからか取り出したかは分からないが、暗殺用の数本のナイフを取り出していた。
彼らにかせられた任務とは白兎の捕獲。だがこれでは間違って白兎を殺す前に、仲間同士で殺し合いが始まりそうな雰囲気である。
『おい、二人とも武器を収めろ。今は喧嘩してる場合ではなかろう』
ルチアとクレイグの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。先程副支部長と呼ばれていた、銀髪の少女レイシーである。何らかの方法で二人に自分の声を届けているようだが、それが何なのかはまったく分からない。
「申し訳ありません副支部長。只監視係が無能なだけで」
「悪かったな無能で……」
ルチアの容赦の無い罵りに、クレイグの中にふつふつと怒りが込み上げてくる。でもそれを心の奥で止めているのがさすがだ。先刻は銃を取り出していたが。
レイシーはルチアとクレイグのいがみ合いを軽く流して、話を続ける。
『そろそろ白兎が来る。一人の子供を連れてだ。白兎が来たら拘束して支部に連れて来い。子供は保護して同じく支部に。子供をどうするかは、支部長と妾で決める』
レイシーの言葉に「はい」と二人とも返事をすると、そこでレイシーの声は途切れた。
声が途切れると、クレイグは「はあ……」と小さな溜め息を付く。
「どうしたのですか」
「いやさ……何か面倒臭い事になりそうな気がしてな」
その言葉に、ルチアは無表情で答える。
「貴方のゴミ屑のような勘など、当たらないので大丈夫ですよ」
「そーか、そうだといけどな……」
*
青年の言葉に、セシルは驚きを隠せずにいた。初めて会った筈なのに……相手は自分の事知っているのだ。
もしかしたら目の前の青年は、自分が知っている人間なのかもしれない。此処は名前を聞いてみよう、とセシルは結論付けた。
「あの……名前」
「ん?」
「貴方……何ていう名前なんですか?」
セシルの問いに、青年は笑顔のまま答えた。
「オレか……。まあ知る必要の無い事だろうけど、一応教えておくとしよう。オレはフラン=ベイクウェル。改めて宜しくね、セシル=エヴェレット」
——フラン……? 聞いた事はない筈なのに、どこか懐かしいような……。
セシルが何やら考えているうちに、フランはセシルの手を掴んでいた。がっしりと、セシルが逃げられないように。
セシルは吃驚して慌てて手を離そうとするが、やはり逃げられない。一瞬、フランの笑みが「にこり」から「にやり」に変わった。その笑みは見る者を震わせる、妖しい笑顔……。
「じゃあ、一緒に行こうか?」
笑顔を元の優しい笑顔に戻したフラン。その時にはもう、二人はその場にはいなかった……。
- Re: Fate of Chains ( No.4 )
- 日時: 2009/11/16 15:07
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
※登場人物の名前変更について。
〆シド→セシル
※いや……キャラデザ作った時に、やっぱシドってのはあれだなー……と思い、小説を立て直した時に変えてみたり。
〆セス→フラン
※元々セスでいくつもりだったけど、主人公の名前がセシルになったから、セスじゃ被るな……と。他にもシド、アレンなど候補はありましたが、何故かフランに←
〆エルヴィス→クレイグ
※これもエルヴィスで通すつもりでしたが、後で何か似たような名前のキャラが出てくるんで……。キャラデザ作った時に「クレイグに変えるか」と思ったり。
〆ミーシャ=アレニチェフ→ルチア=フェデリーチ
※ミーシャって名前は結構気に入ってたんですけどね、ミーシャ=アレニチェフって某ラノベのキャラみたいでww某ラノベ知ってる方は、名前見ただけで何のキャラと名前似てるか分かると思いますが。
そしてルチア=フェデリーチは、俺が昔書いていた小説(途中放棄)のヒロインの名前←
以上、何かの報告←
- Re: Fate of Chains ( No.5 )
- 日時: 2009/11/19 15:25
- 名前: 某さん ◆PHKOj6t3P2 (ID: YpJH/4Jm)
Episode03
Rabbit and Wolf-黒服の二人-
*
「はっ、離せっ! 僕をどこに連れていく気だ!」
「はいはい、五月蝿いよ」
闇が蠢く中、セシルを抱えながら先の見えない巨大なトンネルを飛行するフラン。セシルがどれだけ騒いでも、軽く受け流している。これ以上騒いでも無駄か……そう思ったセシルは、とりあえず黙ってフランの様子を見る事にした。
「ん? 急に黙ったようだけど、何を考えているのかな?」
フランはさっきの優しげだがどこか不気味な笑顔で、セシルの顔を覗き込む。その笑顔に気圧され、一瞬セシルは「ひっ……」と声を漏らしそうになる。
——負けちゃ駄目だ、早くロッティ姉さんのところに帰るんだから……。
セシルは心に決め、グッと胸のあたりで拳を握る。だがフランは、セシルが頭の中で考えていた事さえも見破っていた。
「早く帰りたいようだね? でも……」
突然、どこからともなく伸びてきた鎖がセシルの首元に飛び込んできた。鎖の先は尖っておりあと1㎜でも前に進めば、セシルの首に突き刺さっていただろう。
「残念だけど、君を帰すわけにはいかないんだよねえ」
そう言ってにこりと笑うフラン。左手にはつい先刻までセシルの首元にあった、先の尖った鎖。
——何者なんだ、この人……。人間じゃない……。
さすがにセシルもそろそろ顔が青ざめてきた。鎖なんてフランは持っていなかったはずなのに、何故。どこからそんな物騒なものを取り出したのか。まるで魔法だ。
セシルが完全に怖気付いたのを見ると、にこっと笑って追い討ちをかけるように言う。
「君みたいな人間じゃあ俺みたいな”エーテル”には勝てない。例え100%全力を出したとしても、俺は5%ほどの力も出さずに君を殺せる。だからさ……あんまり余計な事考えると、殺しちゃうぞ」
笑顔で声も弾んでいたが、目は軽く本気だった。
——駄目だ……。やっぱり僕じゃこの人には勝てない……。
セシルの目が涙ぐんできた、その時。
「白兎、一体誰を殺すんですか?」
ビュッと風を切って、銀色に光るナイフがフランのすぐ横を通り過ぎる。フランはナイフが飛んできた方向を見て、にこりと笑いかける。そこにいたのは太股の中間まである長い金髪と、エメラルドの瞳を持つ黒服の少女。それと黒いコートにガンベルトを身に着けている、血のような紅い眼を持つ黒髪の少年だった。
「まったく、不意打ちなんて危ないなあ……。相変わらずそうだね、三月ウサギ(マーチヘアー)それと黒狼(ルー・ノワール)……いや、それは通り名だから、クレ……グレイ? クレア? だっけ?」
フランはふざけたようにケラケラと笑う。だがバンと銃声が響き渡ったかと思うと、銃弾がフランの右腕をかすって傷口から血が出ていた。右腕で抱えられていたセシルはそ、のまま落下していったが、そこを金髪の少女が小さな身体で軽くセシルを受けとめた。
黒髪の少年は銀で装飾されている、黒の小型の装飾銃をガンベルトに仕舞うと、吐き捨てるように言った。
「……グレイでもクレアでもねーよ。クレイグ=バーネットだ。何回も顔合わせてんだから、いい加減覚えろ白ウサギ」
フランは腕を掠っただけとはいえ、銃で撃たれた事を何にも気にせずポンと手を叩く。
「ああ、クレイグだったね。通り名の方で覚えてたから、すっかり忘れてたよ」
わざとらしくそう言うフランに、クレイグは「チッ」と舌打ちをする。
「まあ仕方ありませんね。貴方の名前なんて覚える必要は欠片もありません。つまりは貴方の存在を記憶に刻んでおく必要も、まったくありません」
「理論は意味不明だが、とりあえず俺に喧嘩を売っているって事くらいは分かる」
「貴方では、私に髪の毛一本触れる事さえできませんよ」
セシルを片手で抱えながら、無表情で毒舌を吐く少女。それに対して段々と殺気を纏う少年。漫画でよくあるバチバチと火花が散る光景が、今見れたような気がしなくもない。
それだけならまだしも、少女は暗殺用の軽いダガー、少年は先程の装飾銃を手にかけ、今にでも殺し合いを始めそうなところが怖い。フランもさすがにこの光景には呆れているらしく、口出しせずにその光景を眺めていた。セシルも巻き込まれたくないので、口出しせずに見ている。
「……まあいいや。こんな事してたら、またレイシーさんに怒られるからな……。んじゃそういう事で」
クレイグはフランの方へと身体の向きを変えると、手に持っていた装飾銃をフランへと向ける。
「白兎、ヴェステン支部支部長ルイス=スプリングフィールドの命により、お前を拘束する。おとなしくして貰おうか」
「……嫌だと言っ。って危なっ!」
フランが言い終える前に、少女がシュッとダガーが矢のように投げた。フランは一見ギリギリ避けたかのように見えたが、左手には少女が投げたダガーが握られている。
それを見て、少女は驚きもせず無表情で感想を述べる。感情を表さずかみもせず言葉を紡ぐその姿は、まるでロボットだ。
「さすが、ととりあえず言っておきます。ですがこっちは二人。対してそっちは貴方一人。勝ち目はありません、おとなしく拘束された方が身の為では?」
どこから取り出したのか、さっき投げたのと同じダガーが少女の手には握られていた。それに合わせてクレイグも銃をフランへと向ける。
この危機的状況にフランは焦りの色など一つも見せず、にこにこと笑っている。
「何が可笑しいのですか?」
「……いやさ、もしオレが君達に勝てなかったとしてもね」
そう言うと、フランは右手をグッと握った。そして突然そこから眩いフラッシュが放たれた。
——何が起こってるんだ……!?
あまりにも眩しすぎて、セシルたちは目を開ける事ができない。
「此処は一旦退かせて貰うよ。どうせその子——セシル=エヴェレットを保護した事で、そっちの目的は半分果たされたんだろう? その子は一時そっちにくれてやる、だけどいつか——オレはその子を奪いにまた現れる」
「っ! 待て!」
クレイグがそう叫んだ時にはフラッシュは止み、既にフランはその場にはいなかった。
「……あのゴキブリウサギ、今度会った時には原型を留めないまでに切り刻んでやります」
沈黙の中、ただ少女の何やらグロテスクな呟きだけが紡がれ、消えていった——。
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