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生ける屍
日時: 2009/11/23 13:32
名前: テイル (ID: acQ6X1OT)

ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
俺は『ミイラ取り』 その前は『脱獄囚』
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
背中のリュックに入れてきた食べ物は、全て腹に消え、
水筒に入れてきた水は、全て尽き、
いずれ手に入る金への執着も、何処かへ消えた。
今は『タダ、イキタイ』それだけ。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
足は水を求め、機械的に動く。
身体は何も感じず、ただ規則的な足音しか聞こえない。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
ハラガヘッタ ハラガヘッタ ハラガヘッタ
頭にあるのは、それだけだ。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
歩いていると、ふと右腕が視界に入った。
そうだ、これを食べればいいんだ。
タベラレル ヤットモノヲタベラレル
夢中で自分の腕に貪りついた。
グチュッという音と共に、肉が骨から剥ぎ取られる。
生臭い臭いが、口中を支配する。
この味、どこかで食べた気がする・・・・・。
何処でだ?


あり得るとしたら・・・牢獄の中。
じゃあ、いつ?





・・・看守が食べ物を、一ヶ月間も運び忘れ、周りの奴らが、飢えで死んでいった時。
俺は・・・そいつ等の生臭い肉を喰った・・・。
そして、今食べた肉の味は・・・・・・



死肉・・・?











それからしばらくして、砂漠の真ん中で、右腕の喰われた、腐さったミイラが見つかった。
足跡を辿った途中に、彼の物と思われる、腐った左腕が見つかり、
彼の身体には、猛毒の蟲が大量に寄生し、羽化しかけていた。
心臓などは、腐りかけ、血がこびりつき、蟲にも喰われ、ボロボロになっていた。
彼は、何百メートルもの距離を、生ける屍として歩いていたのだ。
干からびた目玉が乾ききった風に儚げに揺れていた。

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