ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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XIII
日時: 2009/11/16 10:27
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

小説は初の試みですが、頑張って執筆していきたいとおもいます。

どうぞよろしくお願いします。^^;

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プロローグ ( No.1 )
日時: 2009/11/16 07:37
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

 『死』。
 それは全ての生命に平等に訪れる存在。
 始まりが在り、終わりが在る。
 それが、世界の理である。

 ではその『死』の存在が無くなってしまったら?
 
 

XIII ep-1 ( No.2 )
日時: 2009/11/16 10:28
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

———コンコン。

 病室のドアをノックし、中に入る

 ベッドの上で、いつもの様に、スケッチブックに絵を描いているその少女は、ふっとこちらに振り向く。

 「よ。元気か?」
 
 軽く挨拶。

 「いらっしゃい、祐樹。うん、今日は体調良いみたい。」

 絵を描く手を止め、笑顔で優しくそう応える少女。

 「そかそか。ま、だからってあんま無理すんなよ。由美。」

 俺は上着を脱ぎ、ベッドの脇の椅子に腰掛ける。
 
 「……相変わらず、好きだねしかし。」
 
 少女の手元のスケッチブックに描かれているのは、可愛らしくデフォルメされた猫やら、犬やらの動物の絵。

 「うん。絵を描いてるとね、気分がとても楽しいの。」

 と、スケッチブックに目をやりながら応えるこの少女、由美は、まぁ……幼馴染ってやつである。

 しっかり成人はしている訳だが、小柄で細く、幼げな顔立ちで、少女という単語がやけにしっくりくるような感じである。

 「まぁ、俺には絵なんてよく分からないが、趣味があるというのは良いことだ、うん。」

 と、応えてみる俺。

 「祐樹だって、高校の頃凄かったじゃない。弓道の全国大会で準優勝しちゃうんだから。」

 「……過去の栄光にすぎないっつの。今はただのしがない暇人大学生だよ。」
 
 まぁ金欠で毎日バイトに追われる日々だが。
 正直暇なんぞロクに無い。
 今日もこれから居酒屋のバイトである。

 「私は運動なんて全然出来ないから……祐樹が羨ましいよ。それに凄いなぁって思う。」

 由美は幼い頃から病弱であった。
 日常生活を送るのには支障は無いが、あまり過度な運動は出来なく、学校以外は家で過ごしている事が多かった。
 それゆえに、友達も少なかった。
 そんな由美の家に、俺は小さい頃からよくちょっかい出しに行っていた。
 家も隣だったし、元々由美の母親と俺の母親が、学生時代からの友人なのもあって、家族同士での交流も多かった。
 おかげでよく小さい頃はからかわれたものだが。
  
 
 「ま、男だしな。運動ぐらいはできなきゃ。しかし、お見舞いに来てくれる彼氏でもいないのかお前。」
 
 と、若干皮肉交じりに言ってみる。

 「あはは、いないよそんなの。」

 と若干苦笑いしながら応える由美。

 容姿はむしろ良い方、というか普通に可愛い部類なのだが、何故か今まで一度も彼氏が出来た事が無い。
 と、いうよりは作る気がなかったのか。
 友人いわく、結構沢山の男に言い寄られていたらしいが、どれもすっぱりと断っていたとか。

 「そういう祐樹は〜?」
 
 と、ややニヤニヤしながらそう聞き返してくる由美。
 
 「いや〜、モテモテだぜ俺なんか。今彼女三人いるし。」

 とか言ってみる。
 
 「……祐樹〜?」
 
 何やら由美の背中から黒いオーラが出ている。
 表情はにこやかだが目が笑っていない。
 
 「だ〜、冗談だっつの!いえ、冗談です!すみませんでしたぁ!」

 身の危険を感じ、即謝罪。

 「……くすっ。まったく小さい頃から全然変わらないね、祐樹は。」

 と、いつもこんな感じのノリ突っ込みが俺達は多かったりする。

 由美は俺にとっては、家族みたいなもので、まぁ……妹みたいな存在だ。

 「……さて、元気そうな由美の顔も拝めたし、そろそろバイト行くわ。」

 腰掛けていた椅子から立ち上がり。上着を着る。

 「うん、頑張ってね。……いつもありがと。」

 優しく微笑む由美。
 
 「おう。由美も、身体お大事にな。」

 と応え、俺は病室を後にした。

 だが……俺には分かっていた。







 ———由美の余命は、あと半年も無いことに。
 

XIII ep-1 b ( No.3 )
日時: 2009/11/16 16:57
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

 由美の身体は先天性の臓器不全とか……素人の俺にはよく分からないが、現代の医学ではどうしようも無いらしく、とにかく今まで生き長らえてこられたのが不思議なくらいらしい。

 医師から俺に告げられたのはそんな言葉だ。
 
 今まで由美が生き延びてこれたのも、あくまでも薬の効果が効いていたからに過ぎず、延命するには更に強い薬を投与し続ける他方法が無い。

 が、それにも限界がある。
 これ以上強い薬は、もう由美の身体が持たないらしい。

  
 ……ま、それが由美の寿命だと思ってしまえばそれまでである。
 しかし、俺にはいまいち、納得が出来なかった。
 
 あいつは何も悪いことをしていないのに……何故なんだ?

 何故あいつが死ななきゃならない?
 それもこんなにも早く。
 まだこれからという年齢で。
 
 なんて思ってしまう。
 
 しかし俺にはどうすることも出来ない。
 ただ、俺にできるのは、ああやって毎日由美のお見舞いに行ってやることぐらいである。

 もっとも、当の本人が嬉しがっているのかどうかは分からないが、少なくとも、俺はあいつと一緒にいたり話したりしているのは楽しい。
 
 だから……死んで欲しくは無い。
 あいつを……由美を失いたくない。
 
 ……変だろうか? 

 うん、変だな。
 これじゃあ、俺がまるであいつのこと……。
 
 ……分からない。
 
 ……由美は、俺の事をどう思っているのだろうか?
 
 失いそうになって、俺は初めてそんな事を考えてし
まっていた。
 
 しかし、俺は聞かなかった。
 いや、聞けなかったのか。
 
 ……怖かったのか?
 関係が変わってしまうことが。
 それを聞くことで、何かが失われてしまうことが。

 結局、毎日お見舞いに行っては、由美を励まし続けるしか、俺にはできなかった。
 
 ……そしてとうとう、その日はやってきてしまった。
 

XIII ep-1 c ( No.4 )
日時: 2009/11/16 17:25
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

 息を切らし、病室に俺は駆け込んだ。
 ……由美の両親がいる。

 担当の医師もいる。

 ベッドの上には……息をしていない由美が、静かに横になっていた。

 ……俺は泣いた。
 声を出して、泣きじゃくった。

 由美の両親も、泣いていた。
 
 何もしてやれなかった自分を悔やんだ。
 由美の気持ちなんて理解していたのに……それを聞き出せなかった……言い出せなかった自分を悔やんだ。

 あいつが恋人を今まで作らなかった理由も……本当は分かっていた。
 
 由美は待ってたんだよって……、でももしかしたら、それは迷惑かもしれなかったから……祐樹君は他に好きな人いるかもしれないから……由美の友人から、そんなこと言われなくても分かっていた。

 もうあいつはいない。
 失われた生命は、戻ってこない。
 
 生きている以上、死は平等に訪れるもの。
 それが早いか、遅いかの話である。

 俺は、必死に自分にそう言い聞かせていた。

 だがもし、もしまたもう一度逢えるなら……逢うことが許されるならば……。

 
 ———そんなこの状況を傍観していた、『本来この世にいてはいけない者』が俺の目の前に現れたのは、由美の身体が炭と化した後であった。

 そして、俺はそいつを……その存在を知ることになる。
 

XIII ep-2 a ( No.5 )
日時: 2009/11/16 18:21
名前: メバチ (ID: LWvVdf8p)

 「ククク。想い人に気持ちを伝えられないまま永遠の別れ……哀れな男よ。」

 漆黒の衣に身を包んだ『その存在』は、俺の目の前にいきなり現れた。

 「……!?なんだ……お前は?」

 どう考えても浮世離れしたその服装、容姿。そして背中には漆黒の羽根。
 
 人間の男性のような姿形をしてはいるが、そいつが人間では無い、というのを、俺は不思議と感覚で理解できてしまった。

 顔面を覆いつくすその白色の仮面の下で、そいつは俺を嘲笑しているようであった。

 「……何?か。……そうだな、貴様達が分かりやすいように言えば、『死神』とでも言っておこう。」

 ……死神?
 普通なら変な冗談だと聞き流していただろう。
 しかしこの状況は普通では無いのだ。
 なぜなら……

———俺とそいつ以外の存在の時間が、止まってしまっていたからだ。

 道の車も、歩行者も、俺の身に付けている腕時計も、俺とそいつ以外の全てのモノの『時』が止まってしまっていたのだ。

 「……なるほど、この状況は……お前の仕業、なのか?」

 俺はあえて冷静に、そう聞き返した。
 普通ならパニクっていてもおかしくない状況だ。
 しかし、ここは冷静になれ。俺の中の何かが、そう俺に告げていた。

 「この状況?……違うな。これは貴様自身が引き起こしている現象、だ。」

 ……俺、自身?

 「才能、という言葉を知っているな?これは貴様の才能そのもの、『力』とでも言っておこうか。」

 ……どうゆう、ことだ?

 「我は万物の『死』を司る存在。命に従い、貴様の想い人に『死』をくれてやった。それだけの事。」

 何……だと?

 「悪く思わないでくれたまえ。これも仕事なのでね。我は命に従い、動いているに過ぎない。」

 


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