ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ヒナタ&ミナバ
- 日時: 2009/11/18 19:22
- 名前: 全身真っ黒 (ID: cRxReSbI)
主な登場人物
・志野 雛大【しの ひなた】 男
のんびりやで行動力がなく、周りからは「役立たず」と呼ばれている。
が、その実体は唯我独尊・縦横無尽・怪力無双の超異常な人間。
・土井 水葉【つちい みなば】 男
饒舌だが大抵無表情。人を騙すことに長けており「勝利」への執念が強い少年。
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- Re: ヒナタ&ミナバ 〜 暴力も計画的に 〜 ( No.1 )
- 日時: 2009/11/18 18:56
- 名前: 全身真っ黒 (ID: cRxReSbI)
プロローグ
ここに無数の分かれ道があったとします。
独りぼっちの道、恋が実らぬ道、自ら死に向かう道、苦痛を味わうだけの道、そして、人が通ることのできない幸せの道。
人は迷います、人生に地図などないのですから。
こっちに行けば死ぬかもしれない、あっちに行けば大切なものを失ってしまうかもしれない。
しかし、そんなことを考えずに突き進むのが人、それは無知であり愚かそのものなのです。
さて、ここに用意された「幸せ」があります。
私は別に興味がないのであなた方に譲りましょうこの「幸せ」を。
欲しい方は手を上げてください。
またはその「幸せ」を強く欲しいと念じてください。
手を上げました? 強く念じました?
人気ものになりたいですか?
恋を実らせたいですか?
自らの夢を叶えたいですか?
- Re: ヒナタ&ミナバ 〜 暴力も計画的に 〜 ( No.2 )
- 日時: 2009/11/18 19:13
- 名前: 全身真っ黒 (ID: cRxReSbI)
01.「涼しげな静けさ」 —— シノ ヒナタ ——
時に思った。
——中学一年生ってマジつまんないな。小学生の時は静かだったヤツが急にうるさくなるわ、男子と女子の溝は深くなるわ、学校の勉強は難しくなるわ、先輩だの後輩だのめんどくさいシステムに捻じ込まれるわ、ほんっと意味わかんない。
志野雛大(しのひなた)、童顔なだけに制服である学ランやワイシャツが全く似合わずに対外の場合はジャージ姿で授業に出席している少年。背が低いのもあり、まわりからは弱々しく思われ、行動力がないうえに、勉強や運動、日常会話までギクシャクしていてクラスではかなり浮いている。
しかし、当の本人は何とも思っていなく、のんびりや兼めんどくさがりやの性格が「困ってない」と感じているので特に不便はない。
寂しくもなければ、楽しいわけでもない、そんな空っぽな毎日。
——やがて学校の授業は終わり放課後、部活に入ってない雛大は早々と帰りじたくを済ませると、教室から押し出る人の流れに逆らうことなくうまくかわしながら昇降口に向かった。
階段は降ることなく慣れた足取りで飛び降りた。体育の授業で役に立つ動きはできないものの、こういうことにだけは雛大は長けている。
「おい、役立たず」「オイ!」
直後、背後(階段の踊り場)から野太い声が聞こえてきた。
振り返るとそこには、髪が逆立った太り気味の少年と、それに対するように背の高いハゲ頭(薄っすら生えている)の少年が立っていた。
雛大は何も考えず太った少年達を無視して歩き出す。理由とすれば彼らが嫌いか、それとも気を悪くしたかのどちらかだ。恐怖などは微塵もなく、浮かび上がった感情といえばハエがうるさいと思うほどの嫌悪感だろう。
「おい!」
数秒もしない内に追いつかれ、肩を捕まれた。気持ち悪い、家に帰ったら消毒しなきゃな。いや、新しく買い換えた方がいいか?
口にこそ出さなかったか挑発やその手の考えではなく彼は本気でそう思った。太った少年の手には限りなく緑色に近い脂汗が滲んでおり、その太り気味の少年とハゲ頭の少年からは排泄物に似てどこか吐き気のする悪臭が漂っていた。要するに、手がベトベトで物凄く臭いのである。
「おい、シカト決めてんじゃねぇよ!」「キモイんだよ」
いまどきのチンピラでもいいそうにない逆に胡散臭いフレーズ。
雛大はルックスにこそ自信はないがこの二人には勝るであろう特定の女子曰く「可愛い顔」をしていた。しかし、男が童顔で可愛い顔と言われれば気持ち悪くないとは否定できない。
だが、目の前の「モテないチンピラ」な顔をした二人に言われても全然悔しくもなんともない。むしろ「鏡見たことある?」と訊いてやりたいくらいなのである。
その時、
「おい、どうしたぁ? あぁん?」
物凄くチャラついた人が割り込んできてデブとハゲに話しかける。
即座にデブが「コイツ生意気言ってんです!」と言い、ハゲが続いて「シメちゃってくださいよ、センパイ!」と言葉を紡いだ。
——「コイツ生意気言ってんです!」……って、おれは一言も喋ってないんだけど……。
そんなことはお構いなしにチャラついた人(制服ですらない)は首に掛かってる鎖をジャラジャラ鳴らしながら「しかたねぇなぁ〜」と言って雛大の胸倉を掴むなりイキナリ殴りかかった。
はぁ……、ほんっとに「しかたねぇなぁ〜」——
- Re: ヒナタ&ミナバ ( No.3 )
- 日時: 2009/11/18 19:28
- 名前: 全身真っ黒 (ID: cRxReSbI)
* *
「……ねえ、何かあったの?」
昇降口辺りがざわついていた。よくわからないが、自分の内に眠る野次馬根性が「楽しいもの面白いもの」と騒ぎ立てて現在情報を求める。
そして、ちょうど隣にいた別に仲のよくないポニーテールの少女が答える。
「喧嘩だって」
そのセリフを聞きつけてか、その周りにいた人達も男女問わず言葉を浮かべる。
「南場(なんば)センパイと」「ウチらのクラスの志野が」「ケンカしてるらしいんだけど……」
ここで言葉が途切れる。
シノ? どっかで聞いたな。えと……そうだ。あの物静かなシノヒナタだ。クラスでは「役立たず」だとか言われて独りぼっちで本読んでたっけな。
しっかし、あの南場先輩が相手か。あの子も残念だねえ。まさかあのチャラついた意味解んないくらい喧嘩っ早いあの人とケンカとは。
「それが……さ」
学ランの似合う眼鏡をかけた委員長っぽい少年が言葉を濁しながら言う。
「あの志野……がさ」
「うん」
何なに? まさか意外にも勝ってるとか? それとも血塗れで許しを請うがそれでもまだ暴行を受け続けてるとか? まさかなんか魔法っぽいの使ってバトルッ!?
「……南場先輩が……志野に……」
「うん!」
もったいぶってないで早く教えなさいよ!(笑)
「南場先輩が……志野に……」
またその眼鏡くんは口籠る。
「……消火器をな? あの赤いヤツ」
は? しょ、消火器? 危なくない? それ? あと「赤いヤツ」とか言われなくてもわかるから。
ってゆうか、ヘタしたら消火器そのものが爆発しちゃうじゃん……!?
まさか、それで……。
「……志野に、な? ……その、消火器を……投げ……つけた……らしいんだ」
- Re: ヒナタ&ミナバ ( No.4 )
- 日時: 2009/11/18 19:47
- 名前: 全身真っ黒 (ID: cRxReSbI)
チャラついた男の人が殴りかかってきたときには体はもう反応していた。
冷静かつ迅速に引っ掛けた足につまずいてチャラついた人の拳が背後の壁にぶつかる。すかさずその場から一メートル近く離れ、チャラついた人が倒れこむのを雛大はめんどくさそうに眺めていた。
金ぴかジャラジャラなチャーンが倒れこむときにうまい具合に顔の部分と重なり、ほんの少しだがチャラついた人の顔に鎖を押し付けた後が残った。鼻血がたれている。
——しっかし、胸倉を掴まれたから当たると思ったけど、なんだ。全然弱いじゃん、この人。
たぶん拳法もなんにも極めてないただの不良だな。
拳法を極めてる中学生などまずいないという常識を知らずに少々蔑みの意を込めて倒れてるチャラついた人(以下「チャラ男」)を再び見る。
数秒を経たずに立ち上がり「う゛う゛ぅぅ、こ、このガキぃぃ!!!」と(何かのおまじないかな?)を言いながら昇降口近くの消火器をケースから無雑作に取り出すと、
「うぉおりゃぁあああ!!!」
“消火器の使い方”を知らないのか、その消火器を雛大の頭上目掛けて投げ飛ばした。
——ああ、めんどくさい……。
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