ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- そしてトナカイは夜を駆ける【01更新】
- 日時: 2009/12/09 21:32
- 名前: 左廻いよ ◆.dmxDXVJPU (ID: 18A54hU9)
初めましてー左廻いよと申す者ですー。
飽きやすい面倒くさがりやの自分ですが、久しぶりに小説を自己満足程度に書こうと思います。
まぁ今インフルで学年閉鎖中だからこそやってると思うので、来週や後2日3日頃には多分消えてると思うんですけどね!
■アドバイスはおkですが、暴言・性的発言(あまりきついもの)をするかたはお帰りください。
■多分分かりにくかったり文章なってなかったりすることあります。その辺はご了承を。
題名:そしてトナカイは夜を駆ける
作者:左廻いよ
傾向:ブラックファンタジー
Page:1 2
- Re: そしてトナカイは夜を駆ける ( No.1 )
- 日時: 2009/12/09 20:23
- 名前: 左廻いよ ◆.dmxDXVJPU (ID: 18A54hU9)
story-01 【断頭アガサによる自身の追憶】
その夜、僕は逃げていた。
何から? ……俗にいうヤのつく職業の方々と言えば、お分かり頂けるだろうか。まぁ正式にはマフィアと呼ばれる人達だと思う。
何しろこの町は、元ヨーロッパ州全域を都市とした最大の拠点、また中心部である———通称ファーストシティ。
しかも僕が今いる場所は、その中でもマフィアがまだ残っている元イタリア。100年経った今でも、マフィアの数が少なくなることなどないのだ。
「だからって今僕を追いかけている理由にはならないんだけどね……」
自嘲気味にそう呟くと、また次のビルの角を曲がる。細い路地ゆえに男達は自分を追いかけにくくなるだろう、と考えた結果の行動だった。
すると、息をつく暇もなく自分の背後から先ほどの男達の足音と怒声が聞こえ始めた。
「こらぁ! 糞餓鬼、待ちやがれ! 」
「テメー、子供だからって容赦しねえぞ! 」
そこは容赦してください、なんて戯言をほざいでみる。……相手には伝わらないと知りながら。ふと唇に伝わった冷たい粒を、僕はぺろりと舌で舐めた。
捕まったら、殺されてしまう。……そんなあっけない終わりは、僕はごめんだ。
(もっと早く……走るんだ……っ)
走るのに適さない足場————水気を多く含んだ雪は、足元をびしゃびしゃと濡らした。だけどそれより大切なことは、雪に足元を掬われないことだ。
すっかり薄暗い道の、敷き詰められたレンガを暗闇にまだなれない目で必死に瞬きを繰り返して見やる。
ちらりと男達に目を移すと、男の一人が鋼鉄製のハンドガンを構えていて———
「だっ……から・・・待てっつってんだろーが! 」
そして、パンパンッと僕に向けて銃のトリガーをひいた。すると零点七八秒後には、僕が三秒前に居た地点には細かい弾痕が残っていた。
—————ぎりぎりに避けたとはいえ、弾痕の深さが、その攻撃力の高さを物語っている。
(やばいって、やばいって……! 銃はナシですよ御兄さん方……! )
相手が銃を自分に向けて発射した。
つまり、もう自分は狙撃対象として認められたという訳で———! ……そう確信しただけで、体中の血が凍りついた。
と、真っ青な顔の僕の心中を察知したのか、追いかけてくる三人いた男の中の一人の男が、ぴたりとその場に立ち止まった。その男が止まったことに気づいたのか、後の二人も同じように止まる。僕も異変を感じて止まった。
- Re: そしてトナカイは夜を駆ける ( No.2 )
- 日時: 2009/12/09 20:23
- 名前: 左廻いよ ◆.dmxDXVJPU (ID: 18A54hU9)
(何かするのか、それとも諦めたのか……? )
馬鹿野郎、止まるな……止まったら撃たれるんだぞ……!?そう思っているのに、次に相手の不審な行動に足が止まる。これは恐怖か、それとも好奇心か。
男は苛立ちを隠さずにその怒りに満ちた顔を上げると、まるで宣言するかのように周りの二人に向かって高らかに言葉を発した。
「おいジニー、マルティ……俺はもう“コレ”を使うぞ……! 」
「ハッ……!? タギー何言ってんだ、アレはご主人様から、最後の最後でどうしようもなくなった時に……って言われたから貰ったんだろう!? 」
「そうだ、ジニーの言う通りだぜ!? あんなガキに使う意味ねぇって……! やめろよ、俺たちまでとばっちり受けるだろっ」
……コレを使うとか言ってる奴——タギーと呼ばれた無精髭の生えた男は、完全に目がイっていた。よほど僕のようなガキに逃げられているのが悔しいらしい————ぶつぶつと半開きの口からは僕に対しての呪詛が流れ出ている。
対して、針金のような細い体にだらしない長髪をしたジニーと、でっぷりと脂の乗った体躯をしたマルティは、おろおろと大人気なく取り乱していた。
「うっせぇ! ……やるといったらやるんだよおおおお」
半ば叫びに近い大声で、タギーは咆えた。
その咆哮に怖気づいたジニーとマルティはびくりと体を震わせ、タギーを後ろから見守っている。
タギーの視線はもはや僕に向けてじゃない。僕の方向にいる誰かに向かってだった。
「アレって何ですか……何をするつもりなんだ! 貴方たちは!? 」
僕はそう言って、ようやく動き出した足で走り出した。呪縛から解き放たれたかのように、足は軽い。だけど、これから来る不安に対しての恐怖心は消えなかった—————だけど、走らな
「撃て、狙撃毒サソリ(ストライク・スコーピオン)」
「————え? 」
呼吸が、止まった。いや、視界、が、白、に。
え、な、にがっ、て、え?
「……ッ痛うっ…! 」
次の瞬間僕の体は宙を浮き、重力によって勢い良くレンガに叩きつけられた。まだ目の前がちかちかして————やけに星が綺麗で。つい自身の今の状況を度忘れしでしまいそうだ。
息を吐こうとした瞬間、右腕に痛みとは思えない鋭い衝撃に襲われた。痛いはずなのに、痛過ぎて声が出ない、まるで————
「どうだぁ、俺の愛する毒サソリ(スコーピオン)はぁ? 効いたかぁ」
ダギー……だったっけ。奴と後ろの二人がゆっくりと間合いを詰めてくる。来るな、来るな……と必死に懇願する。
だがダギーはげたげたと下卑た声をあげて笑いながら、苦しんでいる僕を見下ろして、また笑った。
そしてごそごそと何やら自分の内ポッケをまさぐり、小さなその“何か”を取り出した。その探り当てた何かは、機械製で、親指の爪ほどの大きさで、……それはまるで————
「た、種……?」
「そうだよ」
取り出した種を僕に見せびらかすようにして、その種の手の平に乗せたタギーは———僕が辛そうにしているのが面白いのだろう、愉快そうに言った。
「お前、知ってるかぁ? この種。……今俺たちがいる裏世界では流行中の流行よぉ。何しろこの種、約300年前———世界的マッドサイエンティスト、紫宵散罪が作り出した悪魔の代物よぉ! 」
「紫宵……散罪? ……悪魔? 知らないよ、そんなの————」
ダッ……!
あえて重く使えない右腕を重心として、ふらつきながら立ち上がる。そして走る———!
後ろからタギーが狂った笑い声を響かせてゆっくりと歩いてくる様子が聞こえた。だけど気にするな、今は逃げろ、逃げるんだ———。
目が霞む、息が掠れる。だけど僕には今、逃げるという選択肢しか無い。そう思った。
そうして、何度も左や右に曲がって走っていると、やがて細い細い道の裏に、廃棄場があるのを見つけた。
「……これで、休むことが」
できる、と半分壊れかけたベッドに隠れるようにして崩れ落ちた。体の中を、まだ銃弾が飛び回っているかのような熱さが巡る。
「血は、……止まらない、よね」
真紅に染まっていた僕のセーターは、そろそろ深紅になり変わろうとしていた。やばいかも。
多分、さっきのダギーの銃弾に毒が塗っていたんだろうか。先ほどの銃は何だったんだ、種って紫宵散罪って誰だ。それでそれでそれで————……
「————ねよ、う」
声が出ない。眠いのだ。
毒が効いてきたのだろう、体の熱さが引いていく。その代わり、あまりにも冷たすぎる感覚が体内を支配して行く。
寝よう、眠ろう。
僕なんかがいなくても、世界は回るのだから。
息をゆっくりと吐き、吸う。冷たい空気と雪の味がした。あ、塩辛い血が頬を伝った。温かい。世界が滲んでゆく。
そんな僕の視界の端に、ロウソクか何かの明るいオレンジの炎がちらついた。
そういえば、僕は今こんなことしてるから忘れてたけど、今はクリスマス・イヴだったんだ。こんなこと、してて……忘れてた、けど。
でも、もう————
「もう、良いよ————……」
そう言って、瞼を閉じた。瞼に積もっていく雪の冷たさが心地よい。さあ寝よう、寝るんだ。
「死ぬの?」————え?
突然耳に届いた、世界からの鈴の音のような声に耳を傾けた。
「死ぬの?ねぇ、答えてよ」
ふと、瞼を開けると目の前には一人の少女が立っていた。えらく不恰好な黒のマフラーで顔を隠した、目立つ銀髪の少女。きっと、僕と年齢はそう変わらないだろう。
少女はじっと僕と視線を合わせた。赤と緑の不思議なオッドアイ。長いまつげには少し雪が付いている。
少女はじっと僕の体を隅々まで珍しそうな目つきで眺めている。そしてしばらく無言だったが、ゆっくりと口を開いて、僕に問うた。
「ねぇ君、君を助けてあげようか? 」
「……は? 」
これが、君との出会いだった。
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