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壱百年戦争
日時: 2010/08/04 10:34
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

こんにちは
初心者の海鼠デス

いろいろミスがあるかもしれませんが
そこんところはよろしくお願いします^^;

【登場人物】

○Sp-0006-ヒィ
  2050年生まれ
  人間が宇宙開発のために作った、
  人型宇宙探測機(通称SPアンドロイド)。
  
  
○Ub-0101-陽子
  2149年生まれ
  最新型のウイルスバスターアンドロイド。
  
○Hb-0002-人斬舞子
  2049年生まれ
  ヒューマンバスターアンドロイド。
    
○岡本健太
  壱百戦争の生き残りの一人。
  未来が見える。

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Re: 壱百年戦争 ( No.1 )
日時: 2009/12/06 13:23
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第壱話

2150年。
宇宙での仕事がやっと終わった!…
ココが宇宙だから当たり前だけど、
なんだか体が軽い。
心も体も達成感で満ち溢れている。

…気が、する。

早く東京に、地球に帰りたい!
ずっと一人でデータ探索していたから
皆の所に早く帰りたい!!

そう思っていたら地球が見えてきた。
本部に電話しないと。

「…こちらSp-0006-ヒィ。
 聞こえますか?今から地球に…」

おかしいな…応答がない。
電波の調子が悪いのかな?

体が重くなる。
気がつくと、ここは地球の空だった。
ここなら電波が届くかな?

「こちらSp-0006-ヒィ。聞こえますか?」

やっぱりおかしい。
何も聞こえない。

早く帰ろう、なんだか凄く凄く嫌な予感がする。


—どういうこと!?
ココは本当に東京なの!?

東京は、あたり一面灰色だった。
人の気配が全くない。

一体、私がいなかった100年間に
何があったのだろう。

すごく体が重い。
しばらく何も考えられなくなった。

—とにかく本部に行こう。
本部に行けば何かがわかるかもしれない!




本部も灰色と化していた。

「機長…?
 いますかぁッ?ミィ機長!」

とにかく強く強く叫んでみた。
何も反応がなかった。

私の中でプツンと何かが切れた。
とうとう私は泣いてしまった。

一人なんだ、私は——。

背中に柔らかいものが当たる。
振り返ると機長がいた。

「…生き残っていたのですね、ヒィ。
 よかった…、ずっとあなたを待っていました。」

機長はノイズ交じりの声でそう言って
わたしを抱きしめた。

—私たちは、ロボットの一種だ。
人間みたいに「温かさ」なんて感じない。

でも、なんだか安心した。


10分ぐらい機長の胸の中で泣いた。
涙がだんだん枯れていく。
私はゆっくり顔を上げてた。

「…機長、私がいない間に何かあったんですか?」

機長は黙っていた。
澄んでいる青い目でずっと私を見ながら。

「どう言うことなんですか!!?
 教えてください、機長!!
 ほかの皆は一体ッ・・・!?」

「壱百年戦争。」

機長はポツンと呟いた。


灰色の町に冷たい風が通る。—

Re: 壱百年戦争 ( No.2 )
日時: 2009/12/06 13:58
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第弐話



「…機長、私がいない間に何かあったんですか?」

機長は黙っていた。
澄んでいる青い目でずっと私を見ながら。

「どう言うことなんですか!!?
 教えてください、機長!!
 ほかの皆は一体ッ・・・!?」

「壱百年戦争。」

機長はポツンと呟いた。

「ヒィ。あなたが地球から出発した直後…。
 つまり100年前に人間とアンドロイドは
 戦争をし始めたの。…小さな理由で。」

人間と戦争…。
だから人の気配がなかったんだ…。

「2025年。とあるプログラマーがね
 アンドロイドに『感情』というデータを
 取り込んだの。
 嬉しい、楽しい…。『感情』は
 それだけじゃないってことに
 そのプログラマーは気付いたの。

 でも遅かった。
 アンドロイドは人間に対して
 憎しみを持ち始めたのよ。…」

私は気づいてしまった。

「それが…、『感情』が元凶?」

機長はコクンとうなずいた。

「ほかの宇宙探知機…。
 皆は戦争のためにこの仕事を辞めたわ。
 そして…消えていった。」

そうか…。だからいないんだ。
皆、消えたんだ。「死んだ」んだね…。

『感情』が原因。
『感情』さえなければこんな悲しい気持には
ならなかったんだろう。

この胸の痛み…。
これもきっと原因は…。

柔らかくて冷たい手が私の横ポニを触る。

「逃げるのよ、ヒィ。」

機長が真剣な目で私を見た。

「あなたはね…、本当は壱百年戦争の間に
 完成するはずだったの…。でもね、
 戦争をする直前に、あなたを完成させた。
 私たちの希望は、すべてあなたに託したの。」

機長の目はとてもきれいだった。

「だから、逃げて。
 誰もいないところに逃げて。そして生き残るの。
 一人で寂しいかもしれないけど…。」

一人…?

「機長!!一人ってどういうことですか!?
 機長も一緒に逃げましょう!!」

機長は私の耳元で呟いた。

「大丈夫。」

優しい声で機長はそういった。
機長の『中』からピッピッと音がした。—



私は本部から出た。
そして、すぐに本部から離れた。

—数秒後、大きな爆破音がした。

Re: 壱百年戦争 ( No.3 )
日時: 2009/12/13 15:30
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第参話



—機長はもういない。
今度こそ本当に一人だ…。

焼け野原になった本部を見て
私は呟いた。

感情という機能は本当に面倒くさい。
胸が痛くて、頭がキリキリする。

とても、とても「寂しい」。

気がつくと私は泣いていた。
泣き叫んでいた、一人なのに。
構ってくれる人なんていないのに。


「誰だ!?」


突然のことだった。
後ろから大きな声がした。

「コード番号と名前を言え。」

一体何なの!?

「…Sp-0006-ヒィ。…」

「Sp?宇宙探知機はまだいたのか。」

『後ろの人』は、そう言って
どこかに行こうとした。

行かないで——。

そんな気持ちでいっぱいだった。

「待って!お願いッ!!」

「な…何よ?
 びっくりするじゃない。」

私は必死だった。

「お願い、傍にいて!
 あなたしかいないの!
 もう帰る場所もないの…。」

『彼女』は、何か考えていた。
少し間を開けてから、

「いいわよ、ヒィ。
 お友達になってあげるわ。

 あたしは、Ub-0101-陽子。よろしく。」

あっさりとした答えだった。
でも、何か企んでいるように見えた。

Re: 壱百年戦争 ( No.4 )
日時: 2009/12/16 08:49
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第四話



「着いたわ、ここがアタシらの本部。」

これがウイルスバスターの本部…。
なんだか思っていたよりちっちゃいなぁ。

私がまだ宇宙にいなかった頃、
ウイルスバスターアンドロイドがたくさんいて
大きな企業だったんだけどなぁ?

「ちょっと中で休む?
 さっき宇宙から帰ってきたばかりなんでしょ?
 あたしのいれるココアは最高なんだから。」

陽子ちゃんがニヤリと笑う。

「ちょっとここで待ってて、
 ココに入るの、すんごく大変なのよ〜。」

そういうと「暗証番号入力」「本人確認」など
表示されたモニターが次々出てきた。

なんだか時間がかかりそう…。

「あっ!」

小さな女の子の声が聞こえたと同時に
私の足にコツンと何かが当たった感じがした。

「コレ…ビー玉?」

私はビー玉を手に取り、
曇っている灰色の空に透かしてみた。

——濁った藍色だった。

このビー玉、一体だれの…?

「…。」

錆びた電信柱の方に人影があるのが見える。
その影はちっちゃくて…。—
私はゆっくり、電信柱に近づいた。

—女の子だ、6歳ぐらいの可愛い女の子。
女の子は小さく震えていた。
怖いのかな、私はしゃがんでみた。

「怖がらなくていいよ。これあなたの?」

ビー玉を持った手を差し出すと、
女の子はビー玉を見つめ、
ゆっくり私の顔を覗いた。

…機長はこんな時、笑っていたよな。

そう思いながら笑ってみた。
女の子の震えが止まる。

「…おねーちゃん、ありがとー…。
 そのビー玉、おねーちゃんにあげる…。」

女の子は私の手を握って
どこかに去って行った。

ビー玉は、やわらかなオレンジ色だった。

Re: 壱百年戦争 ( No.5 )
日時: 2009/12/28 17:46
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第五話



「ふーん、アンタ100年前に作られたんだ。
 あぁ、どうりで錆くさいわけだ、……納得。」

納得って…。
私は少し眉間にしわを寄せ、
陽子ちゃんが入れてくれた『ココア』を
少し飲んでみた。

アンドロイド用のココア…。
私がいない間に、世界は発展していったんだな…。
私だけ取り残されたようで、少し悲しい。

ココアの甘い香りが、
そんな悲しい気持ちを優しく包むように
だんだん体が温まってきた。

「んで、どうすんの?行くとこあんの?
 よかったらこれからウチで寝泊まりする?」

わかんない、と呟くと
優子ちゃんはムッとした顔で
ため息をついた。

「まぁ、別にいいけど。」

陽子ちゃんはそっけなく答えた。
私はビー玉を強く握った。

「…何それ?」

陽子ちゃんが食いついてきた。

「…ビー玉。
 もらったの、こんなちっちゃな女の子に。
 色が変わったりしてきれいなのよ。このビー玉。」

「女の子…」
 
陽子ちゃんは、私が思っていたことと
違うところに食いついた。

「…人間か!
 どこにいた!!?」

いきなり肩を掴まれたかと思うと
壁に向かって思いっきり押された。

「ド…ドコって…。」

そんなの聞かれたって分かるわけない、
だってこんな焼け野原なんだもの、と
言いたかった。…言えなかった。

陽子ちゃんの目が
あまりにも怖かったから。———

「ッもう!役立たず!!
 そいつ人間ね、直ちに報告しなきゃ!」

なんだかよくわからないけど
私は女の子に悪いことをしたようだ。

陽子ちゃんは、自分の腕を指で2・3回たたいた。
すると眼の前にたくさんの板型モニターが出てきた。
ひたすらキーボードを打つ陽子ちゃんの顔を
そっと覗いてみる。

「何。」

邪魔するな、陽子ちゃんの眼がそう言っている。
ついつい私は自分の首を振った。



——だって、怖かったから。


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