ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 腐った彼は、笑わない。【05うp】
- 日時: 2010/01/08 23:37
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: QBvEkUjp)
- 参照: 自重しろ。
く.そっ……!消えた……だとっ……!?
+++
あれだ、グロテスクな表現含んじゃうと思います。
後、お願いだからマナーとルールと常識は大切に。
……あれ、小説関係なくね(・ω・`)?
@腐った彼は、笑わない。
・目次・
story−00 【プロローグ代わり】>>1
story−01 【腐った平社員は働かない】>>2
story−02 【腐った社長は笑わない】>>3
story−03 【腐った正義は許さない】>>4
story−04 【腐ったリーダーは救われない】>>7
story−05 【腐った闇医者は間違えない】>>8
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- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.1 )
- 日時: 2010/01/06 15:51
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: tk7FG1Mp)
- 参照: 自重しろ。
story−00 【プロローグ代わり】
僕が精神的にもろくなってしまったのは、明らかに両親のせいだった。
子供の頃…とはいっても、今からたった7年前。僕の母親と父親は突然失踪したらしい。らしい、というのは、僕は2人が失踪した、8月16日の午後2時————神社の境内で遊んでいたからだ。
何故失踪するはめになったのか……理由は知らない。
ただ分かっていること。
それは、2人の捜索願が出された時点で、2人がもうとっくに死.んでいるということだけ。……いや、殺.されたと比喩した方が、正しいのだろうか?
———8月16日、午後6時。
彼らは、近くの山奥で惨.殺された姿を、発見された。
ちなみに、発見者は僕の祖父。山の中で愛犬を放して、孫と遊んでいたところ、木に四肢を括り付けられて息絶えた母を見つけたと言う。
そしてその時一緒に居た孫とは……僕の実妹、依澄(いずむ)。依澄は、その時まだ3歳だった。
なのに———彼女は不運なことに、祖父の制止もきかず真正面から母と向き合ってしまい———……。
……あの事件によって、彼女は、壊れた。いや、壊されてしまった。
あの無垢な笑顔と、純粋な心を、奪われた。
そして、僕もあの事件からずっと何処か狂ったままなのだ。ずっと、変わらずに、生きている。
この話も一種の呪縛、だったりして。
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.2 )
- 日時: 2010/01/07 19:21
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: WkUUvDWJ)
- 参照: 自重しろ。
story−01 【腐った平社員は働かない】
「篠紫野、お前の心の引き出しには上司へのマナーというものを仕舞っているのか?」
「すみません、クリーニングに出してます。多分1週間で戻ってくると思うんですけど」
「早く電話かけて今戻ってくるようにしてもらえ」
「いや、一週間後には僕、そのマナーに醤油ぶっかけて汚す予定なんで」
「……その前にお前を血で汚すぞ」
そう言うと病葉 迷(わくらば まよい)は、神経質そうに眉間に皺を寄せた。綺麗な顔が台無しだといつも言っているのに、この上司は。
そう思いつつ視線を迷に送ると、迷はぎっと目を三角にしたまま、怒りの鉄拳を僕の頬に叩き込んだ。その勢いのまま、首はごきりとなって180度回った。
「ちょ、痛……」
「なあ篠紫野、扉を見てみろ」
迷の言葉に素直に従いながら、みちみちとなる首のまま、自分の背中越しにある扉に、視線を這わした。
広い書斎の扉には、白い半紙に荒々しく筆で「社長への心得」と書かれたものが、セロハンテープで貼られてある。
そしてそれに関するもの数十枚が壁にまで進出しているので、無理矢理貼ったことがわかる。
顎に右手をあて、何か思考しているようなポーズを作り、「ふむ」と口を開いた。
「……つまり、迷は大雑把だという」
「成程、首が曲がるのが好きらしいな、篠紫野は」
ごきごきっ
……人間の首は270度までは曲げることが可能だということがよく分かった。
迷は僕のリアクションがないことがつまらなかったのか、首を曲げるのをやめて、ふんぞり返って自分の椅子に寄り掛かってしまった。
ふむ、しかし本当に首が痛い。
迷はリアクションがなかったから面白くない、と捉えているようだけど、実は悲鳴が出そうな程痛かったのだ。いててて……。
優しく自分の首を撫でていると、迷はそれを満足気に眺めながら、口も開いた。
「まあ良いだろう、今回のは許してやるさ。だからと言って、お前が許されたわけではないけどな。……ということで、ホットケーキとコーヒー。作れ平社員」
「はあ?」
命令口調の迷の視線を辿ると、壁に立てかけてある古く細長い時計があった。時刻は———丁度午後3時。一般的にはおやつ時、だろう。
「分からないか? ホットケーキ、コーヒー。早くしろ。俺は無能は嫌いだ」
「……はいはい。イコールお子ちゃまってことだ」
「ぐだぐだゆーな、三下平社員。またの名をただの部下。言っただろ、無能は——」
迷が最後の言葉を紡ぎ終える前に、書斎の扉を後手に閉めた。扉の向こうから僕についての罵倒が聞こえるけど……。
それよりさっさとホットケーキを作ろう。
後コーヒーだったっけ? 迷は甘党だから、砂糖多めで……。
と、そんなどうでもいいことを思案していると、視界の端に、小さな写真立てが映った。古びていて、プラスチックの花で彩られている。
セピア色の、中に飾ってある写真には、幼き僕と————……
「———分かってるさ」
自嘲気味に、そう呟く。
分かっているからこそ、思った。
「無能は、いらない。だろ?」
迷の皮肉じみた言葉が、聞こえたような気がした。
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/06 15:51
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: tk7FG1Mp)
- 参照: 自重しろ。
story−02 【腐った社長は笑わない】
さて、ここで僕について説明しよう。
僕の名前は篠紫野(ささしの)。勿論、これは苗字のほうだ。下は…………自分では言いにくい、というかあんまり好きじゃないので自粛。
こういう話し方でよく勘違いされるけど、まだ高校2年生だったりする。……巷では精神年齢だけがやけに高いガキだと評価されているんだぞ。と、迷がこの前笑っていた。
「なあ、篠紫野」
げしっ。
迷の足の裏が、資料整理をしている僕の背中を押す。
背中から匂う、ほのかに甘い香り。そしてもふもふという擬音から、迷がフォーク片手に名前を呼んでいることが何となく察することが出来た。
「おいってば」
と、背後から迷に話しかけられること2度目。
さすがに偉そうにし過ぎに思えたので、それを無視したまま、手元の資料をナンバーごとに整理する。
えーと、これがこれでそれは……と。
すると、つんつんとまたつま先で背中を突かれた。振り返ると、突然口の中に何かを押し込まれる。熱く、甘い香りが口の中に散布された。
突然の口内強襲に対して、僕は目を白黒させる。
喉元を過ぎれば熱さ以下略。
ごくりと熱いそれ——ホットケーキを飲み込むと、ほっとようやく一息つく。
涙目のまま振り返ると、ソファーで優雅な雰囲気を醸し出している、にやにや笑いの上司が視界に飛び込んだ。
「……ホットケーキ、くれるんなら一言欲しかったんだけどね」
「平社員は黙って上司が与えるものを貰ってろ、それとも何だ、ん? お前は俺に行動の制限をするほどの権力を持っているとでも言うのか?」
いつものような傲慢な態度をとりつつ、迷は僕の作ったホットケーキを頬に詰め込んだ。
もふもふと咀嚼され、ごくりと飲み込まれたホットケーキ。そのホットケーキの行方はどうでも良いとでも言うかのように、迷はフォークと口だけをフル活動させていた。
口がハムスターのようになっている迷を横見しつつ、僕は大きなため息をついて、その様子を眺め始める。
僕の視線を感じ取ったのか、迷はフォークの端を唇で挟んだまま、
「ん? 何だ、欲しいのか。平社員」
と言い、一口大に丁寧に切られたホットケーキを僕の目の前に翳した。
そんな何処か子供っぽい動作を目で追いながら、この上司について考える。
病葉 迷。
僕を「拾った」張本人。
勘違いされてる人のためにも、ここで一応言っておくけど、迷はまごうとない女の子である。
茶色に染めた、背骨辺りまで伸びたツインテール。主に深紅で構成されてあるブレザーと、膝上の深緑のチェックのミニスカートと黒のニーソックス。
その女子成分プラス、この上司は美少女ときてるので、この性格の悪さは余計タチが悪い……。
美少女という数少ない長所も、自分のことを俺と言ったり男らしく行動したりと、様々な原因のせいで台無しになっているけどね……。
そして彼女は今現在13歳である。本来ならば中学校で勉学に励んでいる年齢なんだけど、迷の事情は特別で————まあ、その辺の説明はまた今度。
「おいってば、平社員」
「ぐへひゅっ」
額にフォークを突き立てられたと理解するまでに、悶絶と床を転がる時間を合わせてたっぷり2分はかかった。
幸い血は出てないみたいだけど、しっかり痕がついている。
ソファーでくつろいでいる迷に向き直り、自身の額を人差し指で思い切り指差しながら、詰め寄る……!
「フォークで殺.す気か!」
「気持ち悪い顔で俺を見てたお前はどうなんだ!」
僕の言葉に怒る迷と一緒に、2人して、睨み合う。
そんな耐久戦が1分程続き、やがて迷の方が根負けして呆れた表情をしてしまった。
「……はあ、馬.鹿らしい。食い終わったから、その皿片しておけよ……」
こめかみに手をあてたまま、迷は自分の書斎へ戻る。少し満足度があるのは気のせいだろうか。
「はいはい。おやすみ」
「寝ねーし。仕事があんだよ、平社員。お前もさっさと与えられたノルマはやっとけ。やっとかねーと……」
ガシャン。
いつのまに目の前に接近していたのだろう、僕の目の前に上下二連銃身の小型拳銃———デリンジャーの銃口が、僕のフォーク痕の残る額に押し付けられていた。
体中の血が止まったように、顔から血の気がひいていく音。
「……ヤ、るから。そこんとこ———」
よろしく、と大あくびをして迷は言った。
僕がその言葉に大きく頷くと、にやりと笑って背を向ける。
「じゃあな、平社員」
ばたん。
小さな背中が扉の向こうに消えた。
呆けた僕の前には、ほんの少し蜂蜜がついた皿に、「砂糖が足りない」と書かれたコップが残されていたのだった。
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