ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ざくろの恋
日時: 2010/01/07 16:42
名前: 夏実 (ID: UpMhl4tZ)

「ねえ」


薄く真っ赤な唇が開いて、
静かな部屋に響いた。

「キスしながら死にたい?それとも・・」

そういって、彼女はいたずらっぽく笑いながら、
指で拳銃を真似て頭に突きつけ、

そして、撃った

・・・真似をした。



「・・・・」

彼は答えることなどできなかった。
彼は答えることなどできなかった。


彼は、どこにいるのだろう
生きているのか
死んでいるのかさえわからない。


しかし彼女にとって、そんなことはどうでもよかった。

彼女はただ、彼と一緒に、この部屋にいたいだけ。


たとえどんな方法でも、
そこで時間は止まるから。

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Re: 出会い ( No.1 )
日時: 2010/01/07 16:54
名前: 夏実 (ID: UpMhl4tZ)

あれはまだ、あたしが中学生の頃だった。


あたしは普通に育ち、普通に学校へ通っていた。
テレビから流れる恐ろしいニュースだって、
あの頃のあたしにとっては、ただのお知らせでしか
なかった。

だからあの日に出会った人が、非日常的なことを
平気でする、そんな人には見えなかった。

あたしは疑う術も持っていなかったんだ。


その人は、中学校では有名な、かっこいい先生だった。
最初はあたしだって、友達と一緒にキャアキャア
言っていたけど、すぐに飽きて、どんどんわからなくなっていく勉強に必死になっていった。
そんなある日。

図書室で本を探していたあたしに、先生は声をかけてきた。

「ちょっと、いいかな。紫本さん。」
「えっ、はい」

あたしは一瞬とまどったけど、先生の用事を断る理由があるほど忙しいわけでもなかったから、
素直についていった。

Re: 出会い ( No.2 )
日時: 2010/01/07 17:10
名前: 夏実 (ID: UpMhl4tZ)

先生が扉をあけて入ったのは、空き教室だった。

「話が、あるんだけどね。」

椅子に座って少し間が空いた時、先生は切り出した。


話、といわれても。
先生とは顔見知り程度だし、あたしは美人でもない。
かといってものすごい不細工、でもない。
特徴がないから、そんなに覚えられてるわけでもない。
悪いことも・・・してないと思う。

じゃあ何?


そんな心が顔にあらわれていたのか、
先生はあせって、話し出した。


「いや、たいしたことじゃなくてね。君、垣内涼子さんって、知ってる?」

「はい、知ってます。小さい頃、父の友人だとかで、
よく家にいらっしゃいました。」

これは本当。女の人で、ものすごく美人だった。

「ふーん。・・・あの、今度、時間あるかな?」


「え?」

「いや、無理ならいいんだけど。・・どう?」

「いいですよ!お話しましょう。」

「このことは、秘密にしておいてくれよ。」

「・・はい。」


教室を出てからも、あたしはどきどきどきどき、
胸をならしていた。

これってもしや恋なのかなって。
そして先生は誘ってるのかもって。


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