ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Do you want to die?
- 日時: 2010/01/08 14:52
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
どうも。
前回書いていた小説が、ミスにより全部消えてしまいました。
だから、新しく書きなおそうと思います。
へたくそですが、どうぞよろしくお願いします。
あと、作風ですが、私の話ではなかなか主人公の名前が出てきません。ご了承ください。
- Re: Do you want to die? ( No.2 )
- 日時: 2010/01/08 21:58
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
第一話
「何でおれたち、生まれてくるなんて道を選んだんだろな」
買ったばかりの駄菓子にかみつきながら、隣のやつは聞いてきた。ちょっと昔ならうつ病とも判断される可能性すらある言葉。でも今は、ほとんどのやつがこのセリフを吐く。毎日、何度も何度も。
自殺する人も増えた。集団自殺も増えた。もはや警察は自殺サイトを取り締まらなくなった。それどころかどうだ。警察や公務員の自殺サイトの利用は増え続けている。だから、自殺サイトも順調に増加中だ。小中学生の自殺もニュースに出なくなった。だってそれが普通のことだから。子供が死んだ親は全員自殺した。
友達が自殺したやつも自殺した。
カチャ
携帯を開く。メタリックのボディに夕日が当たり、オレンジに染まる。手が赤く見える。画面に出ているニュース版に、本日の自殺人数が出された。14598人。昨日のほうが多かった。今日は少ないほうだ。最近、日本の人口がとんでもないスピードで減っている。人口ピラミッドの真ん中が無くなってきた。女性だったらきれいな体型と言えるかもしれない。だんだん、上のほうもいなくなってきている。子供を産める年齢の人間が減っていくんだから、そのうち俺ら子供の世代の部分も減っていくのだろう。
- Re: Do you want to die? ( No.3 )
- 日時: 2010/01/08 14:55
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
公園。まだ五時なのに、子供の影はほとんどない。なぜって? 人口が少ないからだ。昔はここも地方中枢都市と呼ばれていて、たくさんの人と店、夜も明るいアーケード街の下にはたくさんの声があって、活気にあふれていた。
カチャ
隣のやつも携帯を開いて、時間ではなく自殺者数をみてため息をついた。
「いいなぁ。あっちの世界はここよりずっと楽しいんだろ? おれも勇気さえあれば、こいつらみたいに逝けるのにな」
ガタン。
俺は強く立ち上がった。当然、隣のやつは驚く。
「何なんだよ、いきなり」
「もう飽きた。じゃあな」
そう言って俺は立ち去ろうとした。でも、あいつが止めた。
「おれ何かしたか? なぁ、お前以外に、普通に話せるやついないんだよ!」
知ってるよ、そんなこと。口に出そうとしたが、やめた。こいつは友達が俺以外いないんじゃない。ほかのやつらがいなくなっただけだ。または、話すための言葉を失っただけだ。ついでに、俺はこいつの友達なんかじゃない。
「いやなんだよ、俺は。死にたいとか、逝きたいとかいう奴。ついてけねーし」
そいつが口を開いた。「あ」の形に開いて、驚きを表している。
「お前珍しいな。今時自殺否定派か、じゃ、自傷行為もしたことねーのか? 手首見せろよ」
無理やり腕をつかまれ、引っ張られる。痛い。日焼けも傷もなく、真っ白な左手首が現れる。その手をつかんだ手は、赤い傷がたくさんついていた。
- Re: Do you want to die? ( No.4 )
- 日時: 2010/01/08 14:56
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
「……すっげー、最近になってリスカしてねーやつ初めて見た」
急いで手を取り払う。ふざけんじゃねーよ。俺をお前らと一緒にするな。
「俺は今を生きてるんだ。お前らみたいに生きることをあきらめてない、それに……」
声が詰まった。目の奥が痛くなる。でも、言わなければならない。
「自殺を、『勇気』なんていうな」
「おい、待て。何でそんなこと言うんだよ。おれが死んだらどーすんだよ!」
もう、こいつの顔を見たくない。返事もしたくない。食べていた駄菓子も放って、走り出した。町がぐちゃぐちゃに見える。時々すれ違う人たちは、みんな生気に欠けている。人形のほうがまだ感情がある。生きているという感じがする。
- Re: Do you want to die? ( No.5 )
- 日時: 2010/01/08 14:56
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
……どれぐらい前になるだろうか。不景気のせいですでに暗く、自殺者が多くなっていた日本に、一つの変な宗教団体ができた。いつできたのか、正確に知っているやつは誰もいない。ある日、いきなりパソコン、テレビ、ラジオ、すべてのマスコミに、一つのキーワードが流れ始めた。「こんなつらい世界からのがれて、幸せな世界に行きませんか?」
どの番組のコマーシャルにも、どのホームページにも、それがあった。やはり気になる人が多かったらしい。今思うと、そのコマーシャルとホームページのリンク先のページには暗示効果があったように思える。それを見た人は、全員口をそろえてこういう風になった。「この世界は狂っている。辛くて苦しいだけで、いいことなんて一つもない。でも死後の世界は明るくて、楽しくて、悩みなんてないんだ」今の時代、子供だって携帯を持ってる。子供はその好奇心で、同じようにそのページを見た。俺はその頃、まだ携帯を持っていなかった。
- Re: Do you want to die? ( No.6 )
- 日時: 2010/01/08 14:58
- 名前: 黒羽 (ID: PNtUB9fS)
それから何日後だっただろうか、学校にいつも通り登校した俺は、愕然とした。クラスの半分以上のやつが学校に来ていない。残りのほとんどのやつは、気味が悪いことに話さずに、じっと机に座っている。嘘だろ……。俺はその場に立ちすくむことしかできずにいた。
「あんたは無事だったの? 顔色もよさそうじゃない」
正気に戻った。誰かが話しかけてきた。うちのクラスの委員長だ。女子で、名前は……よく覚えていない。それより、正気なやつがいた。それがすごく嬉しい。
「お前は無事だったんだな、委員長!」
クス、と委員長は笑った。
「本当にそう見えるの? 私の目をよく見てよ」
彼女の眼鏡を通して、目を見る。奥のほうにかすかながらに狂気が視えた。寒気がした。彼女の体を、変な意味ではなく見た。もう、彼女が人間ではないように見えた。
「お前……大丈夫なのか?」
「そんなわけないじゃない。これも見て」
そういうと、薬を取り出して見せた。処方箋もある。書いてある言葉の意味はわからない。でも、何となく分かった。
「今はこれが効いているから、まだ落ち着いて話せる。でも、切れると……」
彼女は、座っている人たちのほうを見た。話の続きは聞かなくても分かる。あんたもか。
「そうだ。私、あんたに伝えなきゃいけないことがありそう。ほかの人は気にすることはないだろうし、私の声も届かないと思うから。担任の先生、死んだわよ」
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