ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Crime〔クライム〕名:罪
日時: 2010/01/22 18:55
名前: 黒神 恢羅 (ID: eXx5XrYY)

ども。黒神 恢羅と名乗る者です。
こんな名前だけど一応生物学上は女ッス。

しゃべり言葉とか男っぽいからって間違えんなよー(汗

んー……作者の自己紹介聞いてても面白くないよなー。


 ってことでさっさと始めますかっ!!

   Crime〔クライム〕名:罪
       お楽しみくださいませ。


■Crime〔クライム〕名:罪■

始マリノ罪

第一ノ罪
第二ノ罪
第三ノ罪
第四ノ罪
第五ノ罪

Page:1



Re: Crime〔クライム〕名:罪 ( No.1 )
日時: 2010/01/22 19:08
名前: 黒神 恢羅 (ID: PdKBVByY)

始マリノ罪...

Crime〔クライム〕
その意味は“罪”

自分がここに来てからもう何年が経つだろう。
少年は白い自分の手を隙間から入る太陽の光に当てた。
見た目は十五・六歳といったところだ。
肩下まで伸びた長い髪。
太陽の光に当たり、綺麗な黒髪が浮かび上がる。
顔つきもよく整っている。
世に言う美形というものに当てはまるだろう。
こんな少年が道を歩いていたら女性は思わず振り返り頬を染めるだろう。
しかし少年が街中を歩くことはない。
きっとこれから先もずっと。
普通の少年なら街中を歩いたことが無いなどありえない。
だが、少年にとっては街中を歩くことは夢にも等しいこと。
いや、少年は街中がどういう物なのかさえ分からない。
何故?
それは少年の目の前に広がる頑丈に作られた牢がものを言っている。
牢の前には常に警備員らしき男が立っている。
少年の手首には重い手錠とそれをつなぐ鎖が壁に繋がっていた。

「……ここから出たい……」

少年の口から漏れた小さな願い。
その願いはその場にいる誰も知らない少年の心の叫び。

もう自分の名前さえ忘れてしまった少年の小さな小さな心の叫び——

Re: Crime〔クライム〕名:罪 ( No.2 )
日時: 2010/01/23 10:10
名前: 黒神 恢羅 (ID: QYouEiDG)

第一ノ罪 「名前」

今日も変わらず空に昇る太陽は明るかった。
白い光が小さな窓から差し込む。
「朝、か……」
綺麗な黒髪の少年が固く冷たいベッドから起き上がった。
長く伸びきった髪を一つに結い、少年は窓に目を向けた。
鉄柵の張られた小さな窓に。
太陽の光に手を伸ばせば、少年の手首から壁へと繋がる鎖がジャラジャラと音をたてた。
この状況から少年が普通の家庭にいないことは分かるだろう。
「2610、朝食の時間だ」
その声に少年は目を窓から鉄格子へと移した。
そこには監視官の男が朝食を片手に立っていた。
少年は何も言わずその手から朝食を受け取りベッドに腰を下ろした。

ここは重罪を犯した者の入る、第一刑務所。
連続殺人者、テロリスト、麻薬取引人など重罪を犯したさまざまな者達がここにはいた。
2610と呼ばれた少年もその一人だった。
しかし彼は他とは違った。
刑務所に入る者は誰でも持っている罪、を少年は持っていなかった。
なのにこうして拘束されているのは何故なのか、そんな疑問が出てきたのはつい最近のことだった。
そして少年には名前も家族も何もない。
いや、あるのかもしれないが覚えていない。
彼は物心付いたときには既にここにいた。
だからこの環境が、普通とは違うこの環境が少年にとっては“普通”だった。
「……俺は、何もしていない。罪が無い……なのになんで俺はこんな場所にいなきゃならねぇんだよ」
少年はベッドに倒れこみ天井を見上げた。
冷たいコンクリートの灰色の天井。
「もう軽く十年、この部屋で過ごしてきた。これが普通なんだと思っていた。でも、違う」
そう気づかせたのは、数日前窓から迷い込んだ小鳥だった。
小さな翼で空高く飛ぶその姿に、少年の心は動いた。
もう十年も凍りついたままだった少年の心が蘇った。
俺は罪の無い人間。
ここにいる理由はない、拘束される理由もない!!
少年の瞳はその日から変わった。
今までの死んだモノのような瞳は日に日に人らしい生気のある瞳へと。
その様子に気づいた監視官は彼の牢の警備を強め、警戒していた。

“彼は脱走を図るかもしれない”と。

監視官のその勘は当たることとなる。
小鳥と出会ったあの日から一週間後、少年は完全警備の中をすり抜け脱走を図ったのだった。


第二ノ罪へ 続

Re: Crime〔クライム〕名:罪 ( No.3 )
日時: 2010/01/24 19:49
名前: 黒神 恢羅 (ID: lThj527p)

第二ノ罪 「自由への道」

今日の月はいつもより明るく空を照らしていた。
「今日こそ、俺はここを出てみせる」
少年はそう小さな声で呟き汗の滲む手を握り締めた。
ふと牢の外に目を向ければいつもならいるはずの監視官の姿が見えないことに気がついた。
バタバタと走る足音、無数の声、警報。
何かがあったことに違いは無いだろう。
少年は鉄柵に近づき、周りを見渡した。
「何が、起きてるんだ?」
最初は自分と同じように脱走を考えた罪人の騒ぎかと思ったがそれも違うらしい。
侵入者、が入り込んだようだった。
「ん?」
少年は天井から聞こえる僅かな物音に耳を傾けた。
すると大きな爆発音と共に天井は崩れ、砂埃が辺りに舞う。
「な、何事だよ!!」
少年は咳き込みながら崩れ落ちた天井の残骸の奥を見つめた。
「少々火薬が多かったか……」
奥から聞こえる男の声。
少年は警戒しながら奥へと足を進めた。
「誰、だ」
そう問いかけるとまだ影しか見えないその姿がピクリと動いた。
「ん? やべ、爆薬仕掛ける場所間違えたな……。ここ監視室じゃねぇじゃん」
砂埃が晴れると共にその姿が現れてくる。
金髪の髪に紅の瞳、一言で言えば派手な男が少年の目の前にいた。
「……子供じゃん。ここって第一刑務所だよな。お前何やらかしたらここ入る事になんの。 しかも女? いや、男か?」
金髪の男は少年にそう話しかけた。
「……男だよ。俺は何もやらかしてねぇよ」
少年のその言葉に金髪男はピクリと反応した。
「お前、それってもしかして冤罪ってやつ? それとも何か訳あり?」
今の爆発音に気がついた警備員達の足音が近づく。
「やっべ。……お前、俺と一緒に来るか?」
男のその言葉に少年は目を丸くした。
「お前、なんか訳ありっぽいじゃん? ちょっと興味あるし、連れ出してやってもいいぜ」
「でも、鎖あるし。多分これ、そう簡単には取れないと思う」
少年は自分の腕と足に絡む鎖に目を落とした。
すると金髪男は「馬鹿?」とそう一言呟き、腰元から拳銃を取り出した。
バンッという音と共に少年の身体から鎖が引き離された。
「あんた、危ねぇよ」
少年は無茶苦茶な男の行動にため息をつきながらも小さく笑みを浮かべた。
「……笑えんじゃん。お前」
そう言って男は少年を軽々と持ち上げ走り出した。
「うわっ!!」
男の後ろには武装した警備官が大勢集まっていた。
「あんた、これ大丈夫なわけ?」
男は楽勝楽勝と笑顔を見せ、走り続けた。
「俺は潮、伊坂 潮(イサカ ウシオ)だ。お前は?」
その質問に少年は答えることが出来なかった。
彼はもう自分の名前すら忘れていたから。
沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは潮だった。

「名前、ねぇなら俺がくれれやる。そうだなー……お前の牢からめっちゃ綺麗に月、見えてただろ? だから、お前は今日から夜月(ヤツキ)、夜を照らす月だ」

「あんた、ネーミングセンスなさすぎ……」
そんなことを呟きながらも夜月は潮に笑顔を向けた。
「このクソガキ……子供の笑顔は卑怯だぞ。……この上に仲間が待ってる。一気に飛ぶぞ!!」
そう言うと潮は普通の人間ならありえないジャンプ力を見せた。
「潮、あんた何者ですか?」
そう額に汗を浮かべながら問う夜月の耳に聞いたことのない声が通った。

「ありゃ? 潮、何拾ってきてんの?」
目の前には赤い短髪の男が立っていたのだった。


第三ノ罪へ 続


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。