ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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A dense fog 〜深い霧〜
日時: 2010/02/21 22:43
名前: 紅葉 ◆U7Z6hyBlbU (ID: kS1s3PtF)

 初めまして皆様。
 紅葉と申す者です。

 文章力も去る事ながら、発想力、根気も、人並み以下にしかないと自負しております。
 そんな私の小説ですが、チラ見なんぞして頂ければ幸いです。

 この物語はシリアス風味のファンタジーです(目を当てられるシリアス作品になるかどうかは、微妙なところですが……)
 平凡な高校生活と降り懸かる災悪。明るいシーンが多めになる予定ですが、ご了承下さいm(_ _)m
※PSP投稿なので文字数に限度があります。一杯一杯書いてはいるのですが……申し訳ありません。結構少ないです。



 【目次】
 一話 闇を照らす銀
>>1>>2>>3

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Re: A dense fog ( No.1 )
日時: 2010/02/19 20:14
名前: 紅葉 ◆U7Z6hyBlbU (ID: kS1s3PtF)


 見渡せば金網、コンクリート、質素な扉。人の気配はまばらだった。
 また、見上げれば青空、太陽、存在感の薄い月。漂う雲は死んでいた。正確には、‘死んだ’様に見えた。
 ふっと、小さく嘆息して、屋上の隅に仰向けに倒れる。頭を付けると、無機質な冷たさと硬さが、俺の後頭部に流れてくる。
 いつからだろう。ただ過ごすだけの毎日に嫌気が射し込んだのは……。刻々と流れる時間。時の流れに不満を感じなくなったのは……。
 小学生なんてまだガキの頃、友達と遊んでいる間は、ただただ時間がゆっくり流れてと、そんな無茶な事を心の隅で祈っていた。
 だけど、やっぱり同じ時間の中に居る限り、時の制御なんて出来なくて、中学に入る頃には祈る事すらしなくなった。
 結局、限られた時間を過ごしながら、どれだけ社会に貢献したかによって、人の価値は決まる。最近では、常々思っている。そんなマセた事をーー。
 俺は無意識に唇を噛んでいた。拳を握りながら。舌でひと嘗めすると、鉄のような香りが口内に広がる。
 正直気持ち悪い、血の味のどこが良いんだ? と、全国の吸血鬼共に問いたい。トマトジュースの方がまだ旨いだろうと……。

 再び空を仰ぎ見る。

Re: A dense fog ( No.2 )
日時: 2010/02/19 21:04
名前: 紅葉 ◆U7Z6hyBlbU (ID: kS1s3PtF)


 そこには何も変わらない、清々しい青の世界が佇んでいるだけ。それと同様に‘死んだ’雲も揺れていた。どこか寂しそうに、名残を残して……流れて行く。
 仰向けになったのは失敗だった。と、自分を叱咤し横になる。今の俺の精神環境には、この景色は辛い。例えるなら、暗い気分の時に、明るい人間と接している状態と似ている。
 明るさに中和されて、暗さが無くなれば儲けものだが、時に、光は闇の存在感を増す事もある。街灯と街灯の境目のように……。青空に蹴落とされたあの月が、良い例だ。
 ーーーーと、誤解を招く前に言って置く。別にここ最近、俺に辛い出来事が起こった訳じゃない。借りたCDを無くしたとか、友達と絶交したとか、小さい事から大きな事も交えて、不憫な経験を、最近してはいない。むしろ好調な位だ。……だが。
 必ずしも、良い出来事が心の明るさに比例するなんて、目処はない。あくまで、パーセント的数値で、比例する、が多いだけだ。今までの話は、一個人の考えという事で、脳の欠片にでも仕舞っておいてもらうと嬉しい。
 灰色の金網を視界に捉えながら、俺は軽く体を丸めて、目を瞑る。鬱々考え込む趣味とは御免だ。そこまで暗くなるつもりはない。

Re: A dense fog ( No.3 )
日時: 2010/02/21 22:42
名前: 紅葉 ◆U7Z6hyBlbU (ID: kS1s3PtF)


 まどろむ意識。景色の断片と化した太陽も、今では、俺の睡眠欲求を補佐する存在へと代わっていた。冷たいアスファルトも……もう馴染んだ。
 屋上の扉が開いた音を、不愉快な鉄同士の擦れる音を子守歌に、俺の意識は蚊帳の外へーーーー



 見渡せば、そこは生い茂る樹林の山。乾きを知らない野草に雄々しい大木。動物たちの鳴き声。
 夢? 擬認と同時に景色が変わった。
 灰色に彩られた広場。理不尽と虚勢の感覚に、取り付くられた世界。夢ということは、すぐにわかる。
 だが闇雲なぐらい安心出来た。というより仲間意識を感じた。この世界に……。
 いつの間にか安堵感を覚えていた俺は、傍にあった灰色のベンチに横たわる。
 夢の中でまで眠る程、俺の睡眠欲は傲慢ではないが、この世界は屋上よりも良いアクセントになりそうだ。
 そう思いながら、頭をベンチに頭を付ける一歩手前、今まで経験した事のない柔らかさに包まれた。
 同時に揺れる銀色の糸。黒い布地。それは、この場に、自分以外の存在を確認していなかった俺に、呆然の二文字を与えるには確実過ぎた。
 「招待面の方の膝に寝ころぶのは関心しませんよ?」
 「ぇ?」


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