ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 少年と天狐の妖物語
- 日時: 2010/02/28 11:20
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
〆御挨拶
どうもこんにちは、あるいはこんばんは。 付喪(つくも)という者です。
タイトルの英語は「ザ・ファンタジー・トゥ・イグジスト」つまり「実在する幻想」という意味です。禁忌現実は幻想という意味合いのつもりだったり。
今作は妖怪をメインとし、魔術や死神などが出てきます。
暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。
〆目次-Index-
第一篇/天狐少女の陰謀
序章/開巻劈頭-かいかんへきとう- >>1
第一章/起居挙動-ききょきょどう- >>2 >>3 >>9
〆訪問者様
一虎様 瀬多 哉様
- Re: 少年と天狐の妖怪物語 ( No.1 )
- 日時: 2010/02/20 15:09
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
序章/開巻劈頭-かいかんへきとう-
「琴坂秋叉(ことざか あきさ)。宜しく」
その少女は、とある高校の一年二組の転入生として現れた。
高校生には見えない小柄な体格、太股の中間まである亜麻色の流れるような髪、赤い琥珀色の瞳、肌は純白と言っていい程つややか。人を寄せ付けないどこか不思議な雰囲気を持つ少女は、まさに『美少女』という言葉が相応しかった。
人形の様な整いすぎた顔立ちの少女にクラスメイト達が釘付けになっている中、少年は一人だけ興味無さそうに少女を見る。
少年の名を泉井刀哉(いずみい とうや)。
「転入生……か」
窓際の一番後ろの席から、刀哉はつまらなさそうに呟く。退屈な授業で教師の説明が子守唄に聞こえるように、窓の隙間から差し込む暖かな太陽の光が刀哉の眠気を誘う。
刀哉は別に転入生に興味が無いわけではない。只、美少女が身近にいたところで刀哉の手の届く存在ではない。手の届かない美少女に焦がれたところで虚しいだけなので、刀哉は最初からスルーしておく事にしているのだ。
こっくり、こっくりと後少しで刀哉が寝てしまいそうな事で、転入生の少女がこちらに近づいてくる。おそらく「皆仲良くやれよ」とか「お前の席はあそこだ」とかいうお決まりの台詞を教師が言い終えたのだろう。そういえば刀哉の後ろは空席なのだ。
転入生が、しかも美少女が自分の後ろの席になるなど予想外の出来事だったが、刀哉は特に驚きもしなかった。
退屈そうに溜め息をこぼす刀哉に、前の席の男子が刀哉の机を叩く。刀哉の事を呼んでるらしい。
「なあなあ泉井、美少女転入生が近くの席だなんてラッキーじゃね? これってフラグか? 俺にフラグを踏めと言っているのか!?」
「てめーはラノベの読みすぎだ桑原(くわはら)! 妄想と現実の区別をつけろ、此処は現実世界だ目を覚ませ桑原」
「よし、琴坂を何としても俺の手に……!」
「駄目だこいつ……」
何だか少し怪しい話をひそひそと怪しく話す前後の男子は、周りから見たらちょっと怪しかったりした。周りからの少し引いた視線に気づくと、未だに妄想を続ける桑原を放って置き前に向き直る。
刀哉はまた一つ溜め息をこぼす。
「……ん?」
誰かの視線を感じ、刀哉は後ろを振り返った。
琴坂秋叉が、こちらを不思議そうに見ていたのだ。
(……おい、もしかして俺引かれてるのか? ああくそ、桑原の奴……)
引かれたくなければ前の男子の危ない話をスルーすればいいいだけの話なのだが、それに気づかない刀哉は哀れである。
キーンコーンカーンコーンと、朝学活終了のチャイムが鳴り響き、担任は他クラスの授業をしに教室を出る。
そして、泉井刀哉の日常は始まるのだ。いつも通りの、何の変哲も無い日常が。
たった一人の少女に、その日常が壊されるとも知らずに——。
- Re: 少年と天狐の妖怪物語 ( No.2 )
- 日時: 2010/02/21 19:30
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
第一章/起居挙動-ききょきょどう-
第一巻〆
泉井刀哉はこの時間が好きだ。糞退屈な授業も無い、大人しく本でも読んでいられるこの昼休みが。
(いやあ……。桑原の馬鹿につきあわされず、つまんねえ授業を受けなくてもすむ、何とも無い幸福な昼休みが俺は大好きだ……!)
刀哉はそんなある意味変人染みた事を考えつつ、延々と文字が綴られているたまに挿絵ありの文庫本(またの名をライトノベル略してラノベ)を読む。
あと何分だろうと、刀哉は顔を上げる。残り時間はあと10分、まだ教室に戻らなくても大丈夫だ。ほっとして刀哉が本のページに顔を下ろそうとすると、ふと見覚えのある顔が見えた。
「琴……坂?」
本棚から本を取り出している、人形のような顔立ちを整った少女は紛れも無く琴坂秋叉だ。転入初日から図書室で読書とは、琴坂は余程の読書好きなのだろうか?
まあ自分には関係無いと、刀哉は再び本へと視線を落とす。
——が、そういうわけでもなかった。
「それ、何」
まるで鈴を振った時の音のような、そんな声が聞こえた。刀哉よりの頭より少し上からだ。ページから目を離し、顔を上げる。
目線の先には琴坂秋叉がいた。
刀哉は驚愕のあまり後ろにぶっ倒れそうになった。だが第一印象はドジ野郎などという事は避けておきたかった。なので何事も無かったかのように、余裕綽々の面で琴坂を見上げる。
「えっと?」
「それ、何」
「えーと……?」
「それは何かって聞いてる」
表情は平然を装っているが、内心はビクビクである。何せ転入初日の美少女が友達作りとか学校探検とかそういう事の前に、只前の席だというだけの男子にわざわざ話しかけてきているのだ。
一体どう反応すればいいか分からないが、ここで無視、という第一印象最悪野郎も避けておきたかったので、とりあえず質問に答えるとする。
「んーと、ラノベ」
「ラノベって何」
「えーと……ライトノベルの略。てかライトノベルって何か知ってるか?」
「知らない」
「……」
泉井刀哉は言葉に詰まる。ここで会話が途切れてはいさようなら、以後気まずい空気というのも避けたい。最近避けたいものばっかりだと刀哉は心の中で溜め息をつく。
何とか会話を繋げなければ、と頑張って言葉を紡ぎだす刀哉。
「よ、読んでみるか……?」
「……」
一瞬沈黙。そして、
「興味無い」
撃沈。
琴坂秋叉は自分で話しかけたにも関わらず、すたすたとその場を去っていった。
刀哉は彼女の傍若無人振りに少しムッともした。だがスルーすると決めた筈なのに、悪い印象を与えたり会話と途切れさせたりする事を避けようとするなど、我ながら矛盾してる。刀哉は小さく溜め息をついた。
- Re: 少年と天狐の妖怪物語 ( No.3 )
- 日時: 2010/02/21 19:30
- 名前: 付喪 ◆29ayQzCLFo (ID: YpJH/4Jm)
第二巻〆
「じゃーな泉井、また明日」
桑原は何か用事があるらしく、ホームルーム終了後刀哉は一人で帰宅となった。
一人で黙々と下校する刀哉。だが脳裏には一人の少女が浮かんでいた。
転入生、琴坂秋叉。
亜麻色という不思議な色合いの髪に、赤い琥珀色の瞳という不思議な容姿が印象に残っているのもある。だが、それ以外にもう一つ。
(何で琴坂は夏休み直前なんかに転入してきたんだ……?)
そう、今日は七月十九日。明後日から夏休みなわけである。何故そんな長い休みギリギリの時期に転入してきたのだろう? 夏休み終了後に転入してきた方が、色々とキリがいいのでは……。
(まあ琴坂には琴坂の事情があるんだろうな)
***
泉井刀哉の通う高校より少し離れた距離に、気品漂う和風系の屋敷がある事は結構有名である。
その屋敷の約三メートルほどある門から、一人の小柄な少女が入っていく。少女の格好は赤茶色のブレザーに灰色のプリーツスカートと、ごく普通の学生の制服。それに亜麻色の髪に赤い琥珀色の目を持つ、人形の様に整いすぎた顔立ち。——琴坂秋叉だ。
当たり前に屋敷に入っていくところから、琴坂秋叉はこの家の人間なのだろう。琴坂秋叉は広い玄関に入り、ローファーを脱ごうとする。が、ローファーを履き慣れていないのか、思うようにローファーを脱げない。
悪戦苦闘している秋叉の元に、秋叉より少し背の高いくらいの一人の少女がやってくる。腰まである銀色の髪に金色の目、雪を思わせる純白の着物と、此方も秋叉と同じ少々変わった容姿の少女だ。
「秋叉様、大丈夫ですか? ……むっ、やはり扱いにくいですね……。この『ローファー』とやらは」
「悪いの、更紗(さらさ)。それにしてもこの靴は妾には合わん、履きづらい事この上ないぞ」
同じく悪戦苦闘する銀髪少女——更紗に対し、秋叉はローファーをむすっと睨みながら礼を言う。
秋叉が別人なわけでもない。声も、顔立ちも、全てが今日転入してきた“琴坂秋叉”だ。
だが、違った。口調が別人のようにまったく違うのだ。まるで外の世界、つまり“表”では“裏”の自分がバレないよう、別の自分を繕っているように。
ようやくvsローファー戦が終わると、秋叉は銀髪少女更紗を連れ廊下を移動する。そしてやけに広い茶の間につく。——まるで家族以外にも、まだ誰か、しかも沢山の誰かがこの家に住んでいるかのような広さ。
秋叉はがらりと扉を横に引く。
「——皆の者、待たせたな」
秋叉は何十人以上の自分の“部下”に対し、そう告げた。
- Re: 少年と天狐の妖怪物語 ( No.4 )
- 日時: 2010/02/20 21:49
- 名前: 一虎 ◆NmvfWy.uJ2 (ID: 6vRIMW/o)
面白いですね!!
俺、こういう物語大好きです!!!
更新頑張って下さいね!!応援してます!!