ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- サイレントタウン
- 日時: 2010/03/22 19:16
- 名前: 常闇猫 ◆i9Nf8biD3. (ID: plHoLMhK)
こんにちわ。
気楽にまったり更新していきます。
佐川 翔(さがわ しょう)20歳
職業:小説家
佐川 香枝(さがわ かえ)21歳
職業:プロゴルファー
大川 大樹(おおかわ だいき)16歳
職業:高校生(自称探偵)
それでは、どうぞ。
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- Re: サイレントタウン ( No.1 )
- 日時: 2010/03/22 20:09
- 名前: 常闇猫 ◆i9Nf8biD3. (ID: plHoLMhK)
二年前。
原子力発電所爆発という忌々しい事故が起こったこの『黒田町』に足を運ぶことになったのは大川大樹という私の妻である香枝の従兄弟である少年から連絡を受けてのことである。
「お父さんとお母さんが、急にいなくなってしまった。」
妻がその電話を受けたのは、休日の日曜日だった。
私が自室で新作の小説を書いていたところ、妻の香枝が血相を変えて部屋に飛び込んできた。
私が事情を聞くと、香枝は一度深呼吸し、説明しだした。
姉夫婦が子供をつれて旅館へ宿泊しに行くとき、道に迷ってしまった。
そして、息子を車内に乗せ誰かいないか探しに出たところ帰ってこないという。
そのとき私はどうすればいいのかを訊ねた。
「実際に来てほしい。」
妻の頼みを受け、愛車のライトエ−スに飛び乗った。
助手席に妻、後部座席にはゴルフクラブが多数。
そしてダッシュボ−ドには日本の物からそうでないものまでの無数の地図。
何を隠そう私は(いや私達は)旅が大好きなのだ。
妻が売れっ子プロゴルファー、私が人気小説家と言うことで、費用には困らないというわけだ。
と、彼から連絡を受けた数分後には家を出ていた。
途中コンビニにより、懐中電灯を購入した。
妻はサンドイッチやペットボトルのお茶とまるでこれからピクニックにいくかのように購入していた。
話しがそれてしまったが、そこから数分後。
ポツポツと雨が降ってきた。
車のライトをつけ、さらに数十分後。
やっと目的地の標識が見えてきた。
「結構遠かったな。」
私が呟くように言う。
「これじゃまるでゴ−ストタウンだわ…。」
妻が言い終わると同時に頭上で雷が鳴った。
そして妻の携帯電話が鳴った。
「大樹君からだわ。ちょっと低くして。」
妻はオ−ディオの音量を低くしながら電話に出た。
「もしもし? 大樹? 今どこにいるの? 」
うん、うんと妻がうなづく。
「わかった。病院の近くね。今黒田町に入ったところだからすぐいけると思う。」
私はそれを聞き、病院を探す。
そこで異変に気づく。
「ここは、原子力発電所の事故で、たしか残っていた建物は数少ないはずだが…?」
もし、外観だけ残っていたとしても、それを病院と認識できるのだろうか?
と、考えても始まらないと自分に言い聞かせ、車を進める。
今だ雨は強く、見通しが非常に悪い。
妻が電話を切り、どこかに電話し始めた。
「誰に電話をしているんだ?」
「お姉ちゃん。もしかしたらケイタイが鳴ってるのに気づいていないのかも。」
それだったら笑い話ですむ。
しかし、残念ながらその浅はかな考えは即否定された。
「電源が…入ってない…?」
私は妙な胸騒ぎがするのをこらえ、目に付く建物を見る。
思ったとおりほとんどの建物が黒こげになっており、面影はほとんどない。
「どうして病院だとわかったんだろうな。」
私は妻に訊ねる。
彼女はしばし腕を組んだ後、呟いた。
「昔ここに来たことがあるとか?」
確かに。
それならば説明はつく。
しかし、それなら道に迷うことがあるのだろうか?
いや、そういうこともある。
強引に自分を納得させ、ゆっくりと車を進める。
と、突然妙なものが視界に移りこんだ。
人影!?
ブレーキを踏み込む。
そんなにスピードは出ていなかったのですぐに止まることができた。
「お姉ちゃん?」
妻が声を上げる。
その人影は確かに妻の姉だった。
「香枝? どうしてこんなところに?」
私は、
「とりあえず乗ってもらったら?」
と言い、車のロックを解いた。
彼女が車に乗り込むと同時に車を進める。
「今ね、大樹から電話があったんだよ。おねえちゃん達を見つけてほしいって。」
妻が事情を説明する。
しかし、彼女の姉は首を傾げる。
「おかしいな。私達は大樹を探してこの町を探索していたんだけど…。」
私の中で、湿り気のある不安が広がって行く。
「大樹は病院の近くで待ってるって言ってたけど?」
妻が言う。それを聞いた姉は驚いたような表情を浮かべる。
「あんたさ。さっきからどうやって連絡してたの?」
「えっ? そりゃあケイタイだけど。」
「へぇ〜。あたしのケイタイ電波入らなくてさ。」
その言葉を聞き、今度は妻がケイタイを調べる。
「あ、ほんとだ。県外だ…。」
妻の声を聞き、背筋で何かが走った。
「それでさ。その病院なんだけど。」
妻の姉が続ける。
「たしか、墓地だったような…」
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