ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- イロ ノ ハジマリ ソシテ オワリ
- 日時: 2010/04/05 16:42
- 名前: 夜姫 (ID: UcmONG3e)
「学生ポータルサイト キャスフィ」に投稿してます。
良かったら感想下さい。
あ、ついでに小説家希望です・・・。
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- Re:白夜叉と黒夜叉 ( No.1 )
- 日時: 2010/04/05 17:36
- 名前: 夜姫 (ID: UcmONG3e)
序章「しろ と くろ」
これは、まだ世界に色がなかったときのお話です。
「黒」の能力を持つ、東の白夜叉。
始まりの朝と森を統べる者。
世界のすべては白夜叉からはじまり、
生まれた生命は白夜叉によって護られる。
朝は、白夜叉の領域でした。
「白」の能力を持つ、西の黒夜叉。
終わりの夜と海を統べる者。
世界の終焉は黒夜叉でおわり、
消えていく生命は黒夜叉によって見送られる。
夜は、黒夜叉の領域でした。
昔々、「白」と「黒」がまだ絶対秩序だったころのこと。
ほんの少し、ほんの一カケラ分の時間だけ、
世界は白夜叉と黒夜叉で成り立っていました。
秩序が成り立ってからもう数え切れない程の刻がたったころ、
ある日、朝と夜、森と海の間で、白夜叉と黒夜叉は出会いました。
———…その瞬間から長く続いた秩序が崩れるのだということを二人は同時に察しました。
白夜叉は、自分と反対の能力をもつ黒夜叉が嫌いでした。
しかし白夜叉はもうすぐ新しい「世界」が始まることを知っていたため、
その「世界」が始まる前のほんのわずかな時間だけ
黒夜叉と一緒にいることにしました。
黒夜叉は、自分と反対の能力をもつ白夜叉に惹かれていました。
しかし黒夜叉はもうすぐこの「世界」が終わることを知っていたため、
この「世界」が終わるその日まで
白夜叉に一緒にいないか、と話を持ちかけました。
秩序が成り立っていた刻とは比べ物にならないほどわずかな時間でした。
白夜叉は初めて自分以外の誰かを好きになりました。
できればこの気持ちをずっと忘れないでいたいと思いました。
黒夜叉は到底叶うことのない夢を見ました。
できればこのままずっと一緒にいたいと思いました。
そんな「世界の終わり」が近づくなか、二人はお互いに秘密であるものを創っていました。
白夜叉は、黒夜叉を忘れないために「黒い本」を。
黒夜叉は、白夜叉ともう一度出会うために「白い鍵」を。
———————…それからほどなくして、世界は終わりました。
二人をずっと遠くから見守っていた神様は二人の死を深く悲しみました。そして、何にもできなかった自分を深く責めました。
そして、二人の供養に「白」と「黒」という色を作りました。
それでもまだ足りなかったので、「赤」「青」「黄」という鮮やかな色を作りました。
あの日 朝と夜、森と海の間で二人が出会わなければ
まだ「白」と「黒」の秩序は続いていたのかもしれません。
そしてまた、ふたりが知らないところで世界がはじまりました。
それは白夜叉の「黒い本」と黒夜叉の「白い鍵」が織り成す
異種族と世界の幻想おとぎ物語。
この物語が忘れ去られるその日まで。
白夜叉と黒夜叉の物語ははじまりとおわりを廻る —————
- 黄色がなくなった ( No.2 )
- 日時: 2010/04/05 17:37
- 名前: 夜姫 (ID: UcmONG3e)
第一話
大きな世界樹が立っている。風がそよそよと吹き、小鳥が世界樹から飛び立った。
今、その世界樹の根元で世界が変わろうとしている。
二人の男が立っている。1人は黄色に身を包み、もう1人は黒に身を包んでいる。
「オノ・・レ・・・ウ・ラギッタナ・・」
「スベテハコノセカイノタメ・・・アキラメロ・・・キイロ・・」
「オレノソンザイヲ・・ケス・・・コトデ・・・セカイニ・・・ドンナ・・エイキョウガデルカ・・・オマエハシッテ・・・イルノカ・・・?」
「アアシッテイルトモ・・・。ダカラヤルンダ・・・コノセカイモ・・・ シロノカギモ・・・クロノホン・・モ・・・オレガ・・・ヤラナクテハ・・・ナラナイ・・・」
ドッと鈍い音がした。ゆっくりと、悲しげに、黄色い人が倒れた。腹から出血が絶えない。
「アト・・4ニ・・ン」
そう、静かにつぶやいて、黒い人は去って行った。
「・・・夢?」
朝だ。
いつものように僕の顔に日差しが降り注いでいる。
が、決定的にいつもと違うところがあった。
暖かくないのだ。その・・・日差しが。
僕は不思議に思ってそっと目を開けた。
いつもはまぶしいはずの日差しが、今日は何も感じない。
「今日はおかしい」
僕の頭に、今日はじめて刻まれた感情だった。
おかしな夢を見た。日差しが暖かくない。
おかしい。今日は実に、おかしい。
もっと驚いたのは、ベッドから起きてからの事だ。
今日も公演の準備で外が騒がしかったり、
朝食のベーコンのいいにおいがするのはいつもとは変わらなかったが、
おかしいのは・・・
僕の部屋から黄色という黄色が・・・消えているのだ。
「・・・なんで?」
部屋に飾ってあったしなびたひまわりのくすんだ黄色も、青いテーブルにかかっているはずの淡い黄色いテーブルクロスも、 すべてがすべて、感情のない灰色へと変わっているのだ。そう、冷たい、みていると悲しくなってくる・・・そんな灰色へ。
僕は混乱で頭がくらくらしてきてしまった。
しかも、考えるたびに、「黄色なんてこの世に存在しない」
「黄色って何?」みたいな、はじめから黄色という色が存在しないという
考えが、僕の頭を支配してくるのだ。
僕は急いで部屋を出た。このままだと「黄色」という色の存在を忘れてしまいそうだったからだ。
思ったとおり、僕の部屋のドアにかかっている黄色い「Midnight Sun forked」という札も、灰色へと変わっている。
僕は頭が?だらけで泣きそうになった。
涙は出てきたが、必死でこらえた。
何でこんなときに泣くんだ、と自分に問い詰めた。
わからない、と返事が返ってきた。
自分がなんだか情けなく思えてきた、と返ってきた。
僕は涙を拭いて、大広間へと向かっていった。走っていった。
団長にこのことを報告しなくては、と思った。
団長ならこの謎もなんとか解決してくれる、とも思った。
あたりから「黄色」が消えていることに、他の人は気がついてないみたいだった。
「黄色」なんて色はやはりはじめから存在しない、とみんな言っていた。
「何言っているの、ミッドナイト。ついに頭がおかしくなっちゃったんじゃない?」
とあの勉強しかしない秀才女のハーティも言っている。
本当に、この世界はどうしちゃったんだ—————…
- 団長の「絶対的な」命令 ( No.3 )
- 日時: 2010/04/05 17:38
- 名前: 夜姫 (ID: UcmONG3e)
第二話
「夢を・・・見ましたか?ミッドナイト君」
僕の話を一通り聞いた後、コーヒーのカップを置いて、団長は僕に尋ねた。
ガラス細工のように綺麗な目でこっちをみすえてくる。
「夢なんかじゃないです!僕が見たのは、現実です!」
僕はカチンときて団長に詰め寄った。俗にいう「逆切れ」というやつだ。
団長は目を丸くした。しかし、落ち着いた口調で続けた。
「黄色がなくなったのは事実です。ミッドナイト君は今朝、 不思議な・・・そう、夢を見ませんでしたか?」
そういわれてびっくりした。この人は何でもわかってしまうのはわかっているが、 夢を見たことまでわかってしまうんだ・・・
「・・・みました。」僕はむすっとしていった。
「おや。では、その内容を・・・詳しく教えていただけませんか?」
「・・・・はい。」
僕は団長に夢の内容を話した。あたりは沈黙に包まれていて、大広間に響くのは僕の焦りと不安が混ざったしたったらずの説明と、団長の相槌だけだった。
僕は、僕の話をまじめに聞いてくれる人がいて、少しだけ、安心した。
話を聞き終えると団長は、コーヒーをすべて飲み干して、静かに言った。ものすごく、落ち着いた声だった。
「なるほど。つまりミッドナイト君は、予知夢をみた のですね。」
「予知夢?」
「はい・・・。実は今朝、世界樹の下で、黄色が・・殺されているのが見つかりました。」
嘘だろっ!と言いたかった。・・・が、声が出なかった。嘘だと思いたかった。僕は魔力がないので、予知夢がみれるはずがないのだ。その事実が覆されたので、とても驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください。僕は魔力がな「予知夢がみれるということは、ある、ということになりますよね?」
「う・・・」
団長は微笑を浮かべて得意げにこっちを見ている。
何でもわかってしまうこの団長の目が、僕は改めて嫌いになった。
「あります!ありますよ!?それがなにか?」
僕はもう一度逆切れした。ひらきなおった、とでも言うべきだろうか。すると、団長はにやり、と笑っていった。
「認めてくれてよかった。魔力があるのなら、これからはもう大丈夫でしょう。その黒い人を倒す旅に出ても。」
「・・・・・は?」
僕は一瞬あっけにとられた。
「もう一度言います。ミッドナイト・サン・フォーキッド。その黒き者を倒す旅にでなさい。・・・命令ですよ?」
団長が鋭い口調で言った。
僕はその場に倒れそうになった。
おかしいだろ、と思った。ふざけんな、とも思った。
——————…ここから、僕の奇想天外でおかしな、そして不思議な旅は始まったのだ…——————
- 赤をつれて ( No.4 )
- 日時: 2010/04/06 13:23
- 名前: 夜姫 (ID: UcmONG3e)
第3話
「ってな訳で、僕は都合よくトゥレイダー・サーカスを追い出されたんだ。」
荷物をしょいなおし、僕は言った。
隣では、赤がクスクスと笑っている。
「・・・何がそんなにおかしいんだよ」
僕はむすっとして言った。
「えっ!だって、団長さんが超面白いんだもん。うまくまるめこまれたね、ミッドナイト。」
「だっ、だってしょうがないだろ、あの人に逆らうと怖いんだから!」
「ふ〜ん」ニヤニヤして、こっちをみてくる赤が、なんだか憎たらしく思えた。
「そういえばさ、」赤が思いついたように言った。僕にはただ話を途切れさせたくなかったように思えた。「ミッドナイトって面白いよね」
「何が?」
「いや、ミッドナイトって真夜中って意味なのよ。だけどミッドナイトってさ、髪の毛白、洋服白。おもしれーなーって。」
「・・・ああ、昔っから白が好きでさ、白い服しか着ないんだよね〜、僕。」
そんなくだらない話をしているうちに、風はやみ、あたりに霧が立ち込めてきた。
ゴクリ、とつばを飲み込む。前はもう何も見えない。
赤と手をつないでいないと、もう永遠に赤と会えなくなるような気がしてならなかった。赤もそう思っているようだった。つないだ手を、強く握り返してくる。
それがなんだか心強かった。
「・・・この先だよね。霧の町。」
赤が震える声でつぶやく。僕に聞いてきているような感じではなかった。ただ、この先の恐怖と、試練におびえている。
「・・・そうだな」
僕ははっきりと、声に出した。
声は震えていた。決意は震えていなかった。
————外は霧。風力は0—————・・・
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