ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Witch the abyss
日時: 2010/04/28 10:49
名前: Hitomi (ID: HQaTRwOr)

金色の瞳から流れた冷たい雫。
けれどその存在に気付く者は、誰も居ない。
それはあまりにも小さな存在だから。
誰からも必要とされなかったから。
哀しみと、恨みが渦巻く深淵の底に、
雫は音も無く沈んでいった。
消える間際に聞こえたのは、小さな声。
     セカイヲミタクハナイカ・・・?
その声に、僅かの希望を賭けて手を伸ばす。
手を伸ばしたその先には・・・・・・・・。
絶望と希望の、どちらが待っているのだろうか。

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Re: Witch the abyss ( No.1 )
日時: 2010/04/28 13:21
名前: Hitomi (ID: HQaTRwOr)

Story 1 深淵の魔女


ある街に、奇妙な噂があった。
人には叶えられないどんな願いでも、
叶えてくれる少女が居るらしい。
しかし、少女は残虐極まりない性格の持ち主で、
願いの対価に願い人の一番大切なものを奪うのだ。
その名も、<深淵の魔女>

「ぇえ〜?!何それ、怖っ!!!」
「なんでもその街はここら辺にあるらしいよ〜?!」
女子高生たちがきゃっきゃと話している噂。
その噂を耳にする者は、少なくない。
特に若者の間では人気のある話だ。
そんな噂を近くで聞いていた一人の女性。
『・・・・願いを、叶えてくれる魔女・・・・』
暗い闇を宿らせた瞳で宙を仰ぐ。
『私の願いも叶えてくれないかしら・・・』
そう思って、視線を前へと向ける。
すると。
「・・・・貴方、誰?」
先程までは居なかった少女が立っていた。
「貴方の願い、叶えてあげましょうか?」
そう言って笑った少女の瞳は月の様な輝きで。
囁いた言葉は優しくも残酷な響きを持っていた。

「募り積もったその願い。さあ。今こそ解き放って」
そして、願いは深淵へと旅立ったのだった。

Re: Witch the abyss ( No.2 )
日時: 2010/05/08 19:31
名前: 紺 (ID: CRzWJbwd)

Story 2 願いの対価


「・・・貴方が、<深淵の魔女>なの?」
女性はオズオズと少女に問いかける。
「ええ。そう呼ばれるのはあまり好ましくは無いのですが・・・・。
 巷ではそう呼ばれているようですね」
出されたもてなしの紅茶を上品に飲む魔女。
「それで、深淵の魔女・・・さん」
「私のことは香恋かれんとお呼びください。魔女と呼ぶのも、気を遣うでしょう?」
にこり。と微笑む香恋に、女性は肩の力を抜く。
「申し訳ありませんが、貴方のお名前を教えていただけますか?」
「え?ぇえ・・・。私は早川 明子(はやかわ あきこ)です」
明子が自己紹介して、少しだけ頭を下げる。
「明子さん・・・ですね。それで明子さん、貴方の願いとは何ですか?」
香恋がカップを置き、明子を視線で射抜く。
「私は・・・夫を殺したいんです」
明子の言葉に、香恋は反応する。
その言葉の後に、奥の部屋から幼い子供が歩いてきた。
至る所に痣や傷があり、少し痛々しい容姿をしている。
「・・・その子は?」
「私の一人息子の、大地だいちです。・・・・夫は、子供が大嫌いでいつも暴力を振るうんです。
 ・・・・・こんなの、我慢できない!大地が可哀そうです!!」
涙ながらに訴え、大地を抱きしめる明子。
その様子をじっと見ていた香恋が口を開いた。
「大地ちゃんが、余程大切なんですね」
「勿論です・・・・私の、唯一の宝です」
その優しい笑顔に、香恋もまた笑った。
「了承しました。その願い、叶えましょう。対価は願いの叶った後でお願いしますね。
 いらっしゃい、乃愛のあ
呼ぶと黒猫がやってきて、口にくわえていた何かを香恋に渡した。
香恋が何かを呟き始めて、スッと目蓋を閉じた。
呪文のような何かだ。
そしてそれを呟き終えた後、一本の電話が入った。
「もしもし早川です。・・・・ぇえ?!夫が死んだ?!」
その電話を切り、明子は笑顔で香恋に向き直った。
「ありがとう!!貴方のおかげよ!!」
その笑顔に、香恋は笑顔で答える。
「ええ。良かったですね。では、対価を頂きますね」
「ええ!!いくら払えば・・・・・・・・」
明子の後ろで、ドサッと何かが崩れる音がした。
その音の発生源は・・・・・。
「!!!!!大地!!どうしたの?!大地!!!!」
大地は地に伏していた。明子が口元に手を翳してみるが、息をしていない。
「・・・対価は、大地ちゃんをいただきますね」
「!!!どうして・・・・どうしてそんなことを・・・・ぅ・・・うああああああああああ!!」
号泣する明子を他所に、香恋は笑顔でその場を離れて行った。


「どうしてあの子供を対価にもらったの?」
黒猫の乃愛が、言葉を紡ぐ。
「・・・・明子さんが一番に思っていたのは大地ちゃんよ。
 だからよ。・・・・大事なものを失った時の悲痛な表情は、たまらないでしょう?」
香恋の笑顔は、曇りなく澄んでいた。
「・・・・・・それを、貴方が言うのね」
乃愛はそう言うと、香恋の足元にすり寄った。
人の温もりを、求めるかのように・・・・・・・・。


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