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とおりゃんせ〜人柱の姫君〜
日時: 2010/05/04 22:44
名前: 純* (ID: GpNW5AXi)

時は戦国時代が末期になり終わった直後の年である

桜が綺麗で国名にも君臨する姫君の名前と同じだった

この国はたった今では隣国の捕虜国になったのだった

どうやら、長年の戦に疲れた所に侵略されたらしい。


  その国に君臨するは齢15歳の姫君だった


また、皮肉にも隣国の君主も同い年齢だったという

姫君はその敵国に嫁がなければならなかったのだ

決して結ばれぬ階級違いの家臣は既に殺されてしまい

爺や以外はほとんどが皆殺しに残虐されてしまった


そんな部屋に引きこもり、泣き崩れる姫君

宮中に仕える召使いも姫君と一緒に泣き崩れる


そんな部屋の雰囲気を壊すように

中に入ってきたのは、敵国の兵士だった

何事かとばかりに女房*達は姫君を隠し通す——。


兵士は呆れた顔で言い放った




「桜ノ京姫君は明日には十六夜の君さまの嫁入りだ
 良かったな、これでこの国は復活できるからな!」

「・・・分かりましたとお伝えください」

「どういう事なの? ねえ、どういう事なの!」

「知らないですかい、それじゃあ、教えておけよ」



兵士はそう呟いた後に部屋を出て行った。

姫君は女房達の頬を一人ずつ強く叩いたのだ




「桜の君さまの代から伝わる伝統の縁ある、この国を
 私達は守り通したいのでございます故にありまする
 ですから、桜ノ京さまが十六夜の君さまに嫁がれば
 父君の形見である、この国は永遠に守られます故、
 姫さまには黙っておりました、すいません・・・」

「それどころじゃないでしょう!
 私は絶対にあの国に嫁ぎたくないわァ!」

「姫さま! 父君様のこの国を潰す気ですか!?」

「・・・・お父様ぁああ!!」





嫁ぎたくないと叫ばんばかりに暴れだしたのだった

そんな姫君を慰めようとする女房達は怯えるばかりだ

やがて、敵国の兵士達が部屋に入り姫君と殴った。




その時に気絶した姫君の周りの

召使いや家臣達に女房達の悲しげな表情を見せた





「・・・何というお可哀想な姫君なんでしょう」






そう、呟いた女房の言葉は静かに消え去った





   end *



*女房とは宮中に仕えている女の人の事だよ♪

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Re: とおりゃんせ〜人柱の姫君〜 ( No.1 )
日時: 2010/05/08 22:08
名前: 純* (ID: GpNW5AXi)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?430606

今日はいつもと何処か様子が可笑しいわ。姫君は言う

民や家臣達に女房達が隠れながら涙を零しているのは

姫君は当に知っていたからこそ、不信を思い浮かべる


「・・・・桜ノ京さま、お時間でございまする」

「嗚呼、嫌ですわ。あんな野蛮な国に行きたくないわ
 如何すれば、嫁入りをしなくても済むのかしら?」

「姫様、我々の為にございます故に我慢してください
 どうか、この無礼をお赦しください、姫様・・・」


姫君は城を出て用意された馬車に乗り込んだ。

家臣達もここで別れなのだが、ただ一人の女房だけが

姫君と共に隣国の月ノ京に共に仕える事が出来たのだ

名残惜しみが一気に胸の中を掻き分けて湧いてきた。

まるで、庭で蹴鞠をしている兄の所から飛んできた砂

それを一身に受けてしまい、砂まみれで口の中では、

ジャリッとした感覚みたいに胸を掻き分けて来た——


「・・・・さようなら、桜ノ京さま」

「・・・・お前達とは、また会える?」

「それは分かりませぬ故ですから、ですぞ」

「・・・そうか、私を忘れないでちょうだい!」

「分かっておりますとも、我々は姫様を忘れません
 さあ、隣国の月ノ京にお行きなさい、ご幸運を祈り
 我々は欠かさずに姫様の安全を祈っております故」

「・・・・さようなら、爺や・・・・」




急に牛が引く馬車は緩やかに動き出した。

姫君は名残惜しむ家臣達に涙ながらに手を振る

家臣達も負けじと大きく手を振り、別れを告げた。


そのまま、家臣達もかつて育った京も姿を消した


姫君は悲しげに和歌を詠み、

たった一人の女房と共に涙を流した




その頃の京では、涙どころか笑顔の家臣達が居た





「これで我々は命拾いをしましたな、爺や様」

「そうじゃろ? 十六夜ノ君ならば、姫を気に入る筈
 だが、それも。一瞬の極楽になるはずに違いない




    あの儀式の生贄の年じゃからな、姫君は」





ニヤリっとした顔で笑う爺やの顔を女房達は見た。

すぐさま、民達に知らせようと思ったのもつかぬま、

結局は自分達が犠牲になるかも知れないという一言に

女房達は得意の知らぬ振りを余儀なくされたのだった



   end *



Re: とおりゃんせ〜人柱の姫君〜 ( No.2 )
日時: 2010/05/07 23:27
名前: 純* (ID: GpNW5AXi)

京を離れて、1ヵ月後に月ノ京に馬車は着いた。

街や都は何故か嫁入りをした姫君が通ったというのに

民や子供に老人も誰も一人として、笑顔が消えていた


「・・・・何故、こんなに街は暗いの?」

「それは神々の舞う姫の儀式の為ですから」


ツンッとした隣国のもう一人の使者が言い放った


「・・・それは何かしら?」

「神々の舞う姫儀式とは、様に言えば人柱ですね」

「・・・・何なのかしら?」

「簡単に言えば、15年に一度に月ノ京の名所の橋にて
 ——15歳の美しい高貴な家柄の姫君が生贄として
 その橋の人柱になる儀式の事でございますよ・・」

「・・・・嫌な儀式なのね」




姫さまも同じ年でござますね。女房は語りかけた

美しい顔がすぐに真っ青になったのは言うまでも無い

嗚呼、如何しても嫁入りをしなければいけないのね、と

姫君は悲しみに暮れる様に何度も女房に話しかけた。





「嗚呼、十六夜ノ君さまは暴君ですから、怖いです」

「きっと、大丈夫ですわ。姫さま」

「何を証拠にそんな事が言えるのよ・・・・」

「・・・・姫さま・・・・」




ふと、外の方を見れば、もう既に夜が明けたらしく

朝の暁が外に明るく照らしているのが、確認できた。

結局は一睡も出来なかったわ。姫君はそう言うなり、

安からに女房の横で静かに眠りに落ちたのだった。




   end *

Re: とおりゃんせ〜人柱の姫君〜 ( No.3 )
日時: 2010/05/09 22:56
名前: 純* (ID: GpNW5AXi)

馬車は急に止まったので姫君は女房と共に起された。

何事なのよ。姫君は寝不足の所為か苛立ちながら、

外を見た。外の世界は余りに残酷な光景が広がってた


「・・・・な、何なの。この光景は・・・っ!!」


地面は既に紅色に染まり人々は山の如く積み上げられ

武士達は悲しみの顔ながらも、人々の山を作り上げる

その内、一人の武士が民と思わしき人々に火を放った

あっという間に燃え上がるは人々の死骸と烏だけ——



「あれは一揆を起した愚か者達が処刑をされており
 今はその処理をしている処でございますよ、姫君」

「・・・何という惨い事を・・・・」

「暴君とも何ともお呼びなされれば良いでしょう。
 しかし、アナタ様の命は保障しきれませんからね」

「・・・・・」


これ以上は何も召使いに語らず外の視界をはずした。

馬車は何事も無かったように緩やかに動き出した

途中でまだ息がある人々の苦痛の悲鳴や叫びが聞こえ

女房を震え上がらせた。が、それでも馬車は動き出す

本当に悪趣味な国で暴君が居る最悪な国なのだとと、


———姫君は分かりきった事を再度、呟いた





「着きましたよ。桜ノ京、姫君さま・・・・・」

「姫さま、どうぞ足元にご注意してください」

「ええ、ありがとう」



馬車を降りる、目の前には祖国の城よりも大きい城。

今日から此処に住むのは本当なのだわ。姫君は呟く、

女房は何か言いずらそうな顔で姫君の言葉に反応した



「如何したの? 何かあったの?」

「・・・実は私はこれで別れなければいけません。
 元々城の前までお見送りするのが使命でしたので
 それでは、姫さまの幸せをお祈りしております。
 今まで長い旅を共にさせて貰えた事に感謝します」



女房は言うなり、武士達と共に馬車に乗り込んだ。

何という呆気ない裏切りなの。姫君は怒りを表した。

けれども、家臣達は城の中へ姫君を案内したのだった



長い廊下を歩き、疲れた足を引きずりながら歩く

一向に着かぬ暴君の部屋に怒りがまた心の中に積る




「嗚呼、一体いつになったら、着くのです!?」

「もう少しで着きます」





召使いは心無い声で姫君に言い放つが限界だった

この長い廊下を好き好んで歩いている訳でも無いのだ

元々と言えば嫁入りを提案した姫君側が憎たらしい。

暗殺防止とは言え果てしない長い廊下を歩かなければ

部屋に着く事も食事や身の回りを世話を出来ないので

本当に面倒な事では無いだろうか。

その事を知らずに姫君は疲れた足を鞭を打ちながら、

長い長い果てしない廊下を歩き出すが、一向に着かず

苛立ちは更に静かで雪の如く積っていたのだった。



「さあ、着きましたよ、姫君様」

「・・・随分長い廊下じゃない?」

「暗殺防止の為ですから」

「・・・暗殺、防止ねぇ」




家臣は大声を出し部屋の中の暴君に姫君が来た事を

そして、部屋に入っても良いという許可を言い放った

暴君は許可を出し。・・・・暴君との初対面の時間だ




隣国であり暴君として全国に知れ渡っている有名な国

その頂点に君臨している姫君と同い年であり暴君は、

この世とは思えぬ素晴しい容貌を持っていたのだった




「・・・あぁ・・・何という美しき方なのかしら」

「当たり前の事を言うのでは無い。桜ノ京、姫君よ」





暴君は自己愛に満ちている性格だと、すぐに悟った。

何という事なのだろうか。容貌はいくら素晴しくても

性格も政権も何もかも暴君ならば、もう意味が無い。

十六夜ノ君は必ず一揆の所為で短い命になるだろうと

姫君は一瞬で感じ取った。




「俺のこの容貌に敵う奴は神々だけだ。分かったな?
 お前を見た時には今までの美女よりかは美しいが、
 俺に比べたらお前はそこらに居る浮浪者に見えるぞ
 だから、コレからは豪華で華やかな着物を着るよう
 化粧も流行も何もかも二番目に輝くが良いのだな」

「・・・・・分かりましたわ」





嗚呼、本当に暴君の鏡になりそうな暴君である事ね。

姫君は分かりきった事をまたもや悟ってしまった

暴君で美しき容貌の十六夜ノ君が近づいてきた———




「ソナタ。今宵、俺の寝室に来るが良い」

「・・・・えぇ」

「和歌や竹取物語などを見ようではないか」

「・・・分かりました」



すぐさま部屋に退室されてしまった姫君の怒りは、

またもや、雪が舞うがの如く静かな憤怒が積った。



女房には裏切られた挙句の果てに

この扱いに召使いの冷たい態度なのだ

誰も耐えられるはずも無いし例え耐えられたとしても

暴君にはずる賢い人は巧妙に騙し。頭が弱い人では、

必ず永遠の眠りが余儀なくされる嫁入りとなったのだ




姫君は不安よりも怒りの方が激しい

召使いに愚痴るように言い放ったのだった






   end *

Re: とおりゃんせ〜人柱の姫君〜 ( No.4 )
日時: 2010/05/10 22:38
名前: 純* (ID: GpNW5AXi)

満月の夜になり暴君ならぬ十六夜ノ君の寝室へ——。

不安も静かに積っていき、今にも張り裂けそうだった

また。あの長い廊下を疲れた足に更なる負担を与え、

十六夜ノ君の寝室へと召使いと共に向かっていった。



「十六夜ノ君さま、桜ノ京姫が参りました」

「通せば良い」

「ははっ」



召使いは闇のある奥へと下がっていった。

不安が積りに積って今にも十六夜ノ君を殴りそうだ。

そんな不吉な冗談を抱きながら、傍へと寄った。



「竹取物語は幻想的で美しいだろ」

「それもそうですね」

「・・・・俺はこの世界が現実になれば良いと思う」

「何故でございましょうか?」

「それは決まっている。面白いからだ」



面白いから。本当に十六夜ノ君は遊びしか見てない。

この世界も政権も嫁入りも処刑者の処刑も———。

民も何もかも思いやりが無い花婿はお断りしたくなる

だけど、民の命が関っているのだから我慢せねば・・




「嗚呼、本当に人の心をお知りになりなさいまし」

「それを知ったとしても、無駄な価値。だろ?」

「人それぞれでございますでしょうね」

「では、もう疲れたから。今日は寝るが良い」

「お休みなさいまし」

「お休み」



隣同士の布団で姫君と十六夜ノ君は早々と眠った。

その時に廊下から、おぞましい限りの叫びが聞こえた

十六夜ノ君は素早く起き、姫君も同じく飛び起きた。


よく聞けば、家臣達の声ではなかった。

そう。姫君が一番に嫌っていた事態が起きたのだ。



———農民や民達の一揆だわ!!





「・・・くっ・・・・この俺に逆らおうとは無礼な」

「元々と言えば、十六夜ノ君さまの所為ですわッ!
 何故。ちゃんと民の思いを知ろうとしないのです?
 あんな残虐なばかりを行えば誰だって嫌ですよ!!」

「・・・後で思い知らせてやるぞ、桜ノ姫君よ」

「結構ですわ。夜ノ君さま」




バリィィィィと障子が破れる音が聞こえた。

後ろを振り向けば、怒り狂う農民や民達の姿に——





「・・・家臣も裏切りやがったぞ」

「その様子だと。そうらしいですわね」





すぐさま、農民達の手により姫君達は城の外へ——。

城の前の庭では数え切れない数の民や農民達が居る

夜ノ君は青ざめる処か至って涼しげな表情だった



「おい、俺等の苦しみを知れぇ!!」




石が投げられたが誰かの一人が叫んだ。





「あ・・・あのお嬢ちゃんにはヤメた方が良い
 あの方は隣国で有名な桜ノ京姫に違いないぞ」

「あんれま、綺麗な女子じゃのー」

「それにしても可哀想に。無理やり嫁入りされたんだ
 何という馬鹿な殿君じゃ! ワシ等の苦しみなぞは
 理解もせずに、日々重い税と飢饉だけが取り得だ」



皮肉タップリな言葉にも耳を貸さなかった夜ノ君。

人を労わる心を知れさえすれば良い話だと悟ったが、

夜ノ君は知るのに知らぬ振りをし続けているのだ。

呆れて物も何も言えない





「さあ、悪いが。お姫さまも牢屋に居てくれないか?
 花嫁が居るならば、バカな殿さまは大丈夫だろう」





そういうなり、無理やり牢屋に連れて行かれた。

これから如何なるのだろうか

姫君はこれからの将来や未来に不安を覚えたのだった





   end *


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