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Cherry blossoms
日時: 2010/05/10 16:25
名前: 泡沫 ゆあ (ID: CRzWJbwd)

暖かな風に包まれる日。
空には桃色の花びら達が舞い踊る。
うららかな日和の下で、
人々は、新たな生活に向かって進んでいく。
・・・ただ一人を除いて・・・・・・。


これは、一人の少女に恋をした少年と、時間の止まった少女の、<死>の物語・・・。

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Re: Cherry blossoms ( No.1 )
日時: 2010/05/11 20:31
名前: 泡沫 ゆあ (ID: CRzWJbwd)

第一話<桃色に染まった空の下で>


「あぁ〜・・・・ダリィ」
一人の少年が学校の屋上で横になっていた。
時計の長針と短針は真上を指している。
どう考えても、授業中なのだが、少年は大きなあくびをしながら一息つく。
「・・・・・何が進路だよ、つまんねぇ・・・」
少年の呟きが、風に攫われたかと思ったら、後ろから声をかけられた。
「駄目じゃないですか。今は御勉強の時間でしょう?」
鈴のような可愛らしい声に驚き、少年は後ろを振り向く。
同い年くらいの、桃色の髪をした少女が微笑みながら近づいてきていた。
「・・・・誰だよ、お前」
少年は不機嫌そうに上半身を起こす。
「私は<さくら>といいます。この建物の傍に沢山咲いている花と同じ名前の、ね」
そう言われて下を見れば、確かに桜が咲いていた。
大木が、風に揺られて花弁が散っていく。
「貴方は?名前、何て言うの?」
さくらは少年の横にそっと座り込む。
品があって、まさに大和撫子のようだ。
「・・・・おう、だ」
「おう?」
さくらは聞き返した。
聞きなれない名前だからか、もう一度、と催促する。
「榊 さかきおうだよ」
それを聞き、さくらはにこりと笑った。
「おそろいですね、私達。素敵な名前だと思いますよ、桜」
さくらの笑みに、桜の鼓動は高鳴る。
「・・・・3年生なんですね。進学するんですか?」
さくらは尋ねる。
「別に。まだ考えてねぇよ」
そう答えると、さくらは少し悲しそうな顔をした。
「・・・・・時間は有限なものだから、大事にしないといけないですよ。
 いつ終りが来るか分からないから・・・・・私みたいに」
さくらの言葉に、桜は反応する。
「どういう意味だよ・・・・・それ」
桜の問いに、さくらは困ったように笑う。
「私ね・・・・死んでしまったの」
その言葉は、透き通った空に、桜の花弁と共に舞いあがった。

Re: Cherry blossoms ( No.2 )
日時: 2010/05/15 21:34
名前: 泡沫 ゆあ (ID: CRzWJbwd)

第二話<異なる時を生きる人>


「・・・・死んでる?」
桜の質問にさくらは寂しそうに微笑む。
「ええ。もう随分昔に・・・・」
吹いた風で乱れた髪を、さくらはそっと整える。
「・・・冗談だろ?」
「なら、触れてみますか?私に」
さくらはそっと桜に触れようとする。
だが、するりと桜の体を通り抜けてしまった。
「・・・・・何で・・・・・・・」
「・・・・私の知っていることは、死んでいること。名前がさくらだということ。
 この学校から出られないこと。それだけなんです」
俯きながらそういうさくら。
「どうすれば、その・・・・さくらは成仏・・・・出来るんだ?」
桜が聞くと、さくらは笑う。
「・・・・・・私の体を見つけられれば、私は成仏出来るの。
 でも、無理な話ですよ。この学校は広いから」
さくらはすくりと立ち上がり、桜にまた笑いかける。
「ほら、教室に戻らないと・・・・」
さくらが言い終わる前に、桜は言葉を紡ぐ。
「じゃあ、俺が見つける」
「え?」
さくらは目を見開く。
「俺が、さくらの体を見つけて成仏させてやるよ」
桜の誓いは、さくらの胸に響いた。


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