ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 旅人達の世界
- 日時: 2010/05/20 19:17
- 名前: ガゼル (ID: 5kx3QSMp)
初めての小説です。放置しないように頑張ります。
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- Re: 旅人達の世界 ( No.1 )
- 日時: 2010/05/20 19:34
- 名前: ガゼル (ID: 5kx3QSMp)
あなたは世界に絶望していますか?
どれだけ努力しても覆らない結果。
どれだけ頑張っても覆らない現実。
あなたは、そんな世界に絶望していませんか?
絶望しているというのなら、また絶望してもいいというのなら、賭けてみませんか?
たった一度の人生を。
賭けるというのならこの世界はあなたを歓迎します。
この、もう一つの世界は・・・。
- Re: 旅人達の世界 ( No.2 )
- 日時: 2010/05/20 20:51
- 名前: ガゼル (ID: 5kx3QSMp)
・・・一番初めに思い出す光景は、いつもどおりの真っ赤な空だった。
遠くのほうでは無数の鉄と鉄のぶつかる音が聞こえる。
遠くのほうでは無数の断末魔が聞こえる。
それでも俺は行かなくちゃ、それが俺が今ここにいる理由だから。
俺達は今、戦場にいる。
もちろんこれはリアルだ。よくあるゲームの中、とかじゃない。これはれっきとした本物の戦争だ。
俺はその本物の戦場を仲間と三人で疾走していた。
「ガゼル!上だ!!!」
「わかってる!!!」
俺は返事をすると同時に跳躍する、敵が剣を突き刺してくる、手で払いのける、全力の蹴りを相手に叩き込む、そして着地と同時にまた走り出す。
(・・・28)
その一連の動作を数瞬でやり終える。
隣を見ると刀で敵の首を切り飛ばしている、大柄の男がいる。
こいつがさっき俺に余計なことを言いやがった奴だ。
大柄の男も俺の視線に気付いたのだろう、目も合わせずに俺に言ってくる。
「なんだよ?忠告してやった事なら礼はいらないぜ」
「黙ってろ、今度余計なことしやがったら叩き潰すぞ、シシカバ」
「へぃへぃ」
この大柄な男の名はシシカバ。俺とは、まぁ腐れ縁だ。
そんなやり取りをしてる間に俺達の前には三人の敵が武器を振り上げている。
「・・・二人とも飛んで」
俺達の真後ろから三人目の眼鏡をかけた女が俺達に言い放つ。
俺達二人は言われるままに宙にとび、眼鏡の女は敵に向かって手を突き出す。
するとちょうど俺達の真下にいた敵が、
グシャ!!!
という音とともに大量の血を撒き散らす。
「ひゅ〜、相変わらずすごいねぇ、ベルの重力魔法は」
「・・・ありがとう」
この眼鏡の女の名前はベル、さっきのシシカバの台詞からわかるとおり魔女だ。
かなりの無口キャラだが、こいつの重力魔法はかなり信頼できる。
「ああああぁっぁあ!!!」
俺達の前にはまた新しい敵、そいつは今にも手に持っている剣を振り下ろしそうだが、
「遅いよ」
俺はそう敵に言いながら懐に入り込み蹴り上げる、それと同時に
ドゴン!!!
と大音量と一緒にあたりに火薬のにおいが充満する。
「ごはっっっ!!!」
敵は口から大量の血を撒き散らしながらも俺に切りかかろうとしていた、だが
「残念、そこまでだ」
そのシシカバの声と剣で動きを封じられそして、首が跳ねた。
(・・・32)
俺ことガゼルはそうしてまた自分の殺した数を数えていく。
自分の殺した相手の顔を忘れないために、このクソッタレな真っ赤な空を忘れないために。
これが俺達の、旅人達の世界だから。
- Re: 旅人達の世界 ( No.3 )
- 日時: 2010/05/21 20:35
- 名前: ガゼル (ID: 5kx3QSMp)
「にしてもまさか徒歩で移動とはなぁ」
俺の隣ではシシカバが愚痴を言っている。正直うるさい。
けれどシシカバの言い分にも一理あるとも思う。
俺達はあの戦闘を終えた後、徒歩で作戦司令部まで移動しているからだ。
「ったく、誰のおかげで勝てたと思ってんだ。蔑ろにしてんじゃねぇよ」
「しょうがないだろ、俺達は所詮傭兵だ」
「そりゃそうだけど」
俺よりもでかいくせにいつまでも駄々こねんなよ、ガキじゃないんだから。ちなみに俺の身長は178センチ、シシカバは185センチぐらいだったか。まぁべつに気にしてないけど。
「・・・私の身長は163センチだよ?」
「・・・・・・勝手に人の心を読むな」
読書してたんじゃねぇのかよ。
っとそうだ、ベルに聞いておきたいことがあったんだ。本格的に読書に没頭したら周りの声が聞こえんからなコイツ。
「ベル、そういやここはどんな世界なんだ?まだ聞いてなかったんだが」
「・・・この世界は『落日の日』という小説の世界だよ。なんだったら貸すけど?」
「そうだな、落ち着いてときに借りに行くよ」
「・・・わかった」
ベルはそう言ってまた読書に戻った。
そう、今俺達がいる場所は『落日の日』という名の小説の中の世界だ。
この世界は俺達にとっては本当の世界じゃない。もっと言えば、俺達はこの世界に存在するはずのない人間だ。
この世界にいるはずのない人間、普遍的な日常から抜け出し漫画や小説、アニメといった非日常の世界を旅する人々。
そんな人々をこの[もう一つの世界]では[旅人]と呼んでいる。
俺やシシカバはこの[もう一つの世界]に一ヶ月ほど前にやって来たルーキーだ。
俺がそんなことを考えていると、本から顔を上げたベルが、
「・・・そういえばあなた達はどうしてここに来たの?」
と聞いてきた。
ここってのは多分この[もう一つの世界]の事だろう。どうしてっていうのは俺とシシカバがここに来た理由って事か。
「別に皆と一緒だよ。俺達は元いた世界に絶望した。お前もそうだろ、ベル?」
「・・・そうだね」
それきりベルは黙り込んでしまった。
別に話してもよかったんだが、何故だかそれは言う気にならなかった。
そういえばさっきからシシカバが口を開いていない。さっきまでずっと愚痴を言い続けていたのに、
「どうしたシシカバ?お前が黙ってるなんて珍しいな」
「別に黙ってたわけじゃねぇよ。くだらない会話だったから乗り気じゃなかっただけだ」
「なんだ、さっきの会話が気に食わなかったのか?」
「ああ、気に食わなかったね。『旅人として、自分がこの世界にいる意味を見つけろ』お前も見ただろガゼル。俺達、・・・旅人に過去は関係ない」
「確かに、もう俺達に過去は関係ないな」
『旅人として、この世界にいる意味を見つけろ』俺達がこの世界で一番最初にいた場所。その場所で一番最初に目にしたのが、20メートルにとどくかどうかの大岩に書かれたこの文字だった。
誰がいつ、何のために書いたのかは誰も知らない。ベルが始めてこの世界を訪れたときからそれはそこの存在していたと聞いたが。
俺達はそれを、振り返るな前に進め、という意味だと解釈している。
多分さっきベルに昔のことを話す気にならなかったのはこの解釈のせいだろう。
「ガゼル、ベル。どうやらもうすぐのようだぜ」
シシカバの声で考え事を中断し前を見ると、そこには城砦のような建物、作戦司令部が見えていた。
- Re: 旅人達の世界 ( No.4 )
- 日時: 2010/05/23 22:35
- 名前: ガゼル (ID: 5kx3QSMp)
作戦司令部に入ってからこの戦線を任されているお偉いさんに報告をしてから数時間後、俺達そして作戦司令部の中にいた全員が中庭に集められていた。
この城砦のような作戦司令部は五角形のような形をしていて、中庭はその作戦司令部の真ん中にまた五角形の形で存在していた。
俺達は半ば強制的に連れてこられたため、これからここで何があるのかは知らない。俺がその旨を近くにいた兵士に伝えると、
「あんたら傭兵か、なら知らないのは無理ないな。実はこれから処刑が始まるんだ」
その兵士は嬉々とした表情でそう言った。
確かにこの集団の目線はある一転に集中していた。
その先には、
「・・・断頭台?」
そう実物を見るのは初めてだが間違ってはないはずだ。だがそこには処刑される対象がいない。ただ首を切るための刃があるだけだ。
俺がそのことを誰かに聞こうとすると、突然中庭が地響きに見舞われた。
はじめはそれが本当に地震だと思った、だが実際にはそこにいた全員の足踏みそして歓喜、怒声だった。
「「「っっっっ!!!」」」
俺達三人は突然の轟音に耳をふさぎながらもその音の中心部が断頭台に向かっているのを感じた。
断頭台を上がっていく者、すぐにそれは全員が見ることができた。
そして俺は、息を呑んだ。
触れれば壊れてしまいそうな体、腰まで伸びた白銀の髪、絶望に覆われうつむいたあどけない顔、それは12〜13歳の少女だった。
俺はその少女を見たとき、彼女はこの世のものではないものだと思ってしまった。
「諸君!!!我々はついにこの吸血鬼を捉えることに成功した!!!」
その言葉で俺は我に返ってきた。どうやらこれから処刑前の演説が始まるらしい。
吸血鬼、文字の通り血を吸う鬼。それが彼女だというのか?
「こいつはこの世にいてはいけない存在だ!!!よってここに処刑を決行する!!!」
その言葉に中庭がまた轟音に支配される。
だが今回はその轟音は俺の耳に入らなかった。
彼女が本当に吸血鬼なのか、という疑問も頭の中から吹き飛んでいた。
さっきの演説、この世にいてはいけない存在、それは俺とシシカバにとっては最悪の言葉だった。
「「・・・悪い、ベル。騒ぎを起こすぞ」」
「・・・っえ!?」
ベルの驚きの声が聞こえてくる。
やっぱりシシカバも同じことを考えていたんだな。
さっきの言葉、それは俺とシシカバがいた世界で大人達から散々言われてきた言葉だ。
そして俺達はその言葉が大嫌いだった。
その言葉をためらいもなく言う人間、その言葉を聴いても何もおかしいと思わない人間、それが俺はその言葉以上に嫌いで、殺したいほど憎んでいる。
だから、俺とシシカバは目配せをすると同時に一言、
「「あの娘を、助けるぞ!!!」」
そう言い放ち、断頭台に疾走して行った。
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