ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 暗闇Breaker
- 日時: 2010/05/21 23:38
- 名前: 彩凪 (ID: WKZwKa5Q)
【BLACK SYNDROME(別名:暗闇症候群】、近年ある科学者によって発見されたまだ未知の病気である。
症状は一般的な『うつ病』と似ており、その症状は見かけでは判断が出来ない。又、あらゆる検査をしても見つけにくい難しい病気である。
だがこの病気は、ある一定の日数を経つと次のような症状があらわれてくる。
・急に体全体の色が白くなる。
・微かに(自分の目から見て)自分の体から黒い小さな粒子、及びオーラのようなものが見えてくる。(一般的にいう幻覚)
・一時的な記憶障害が出てくる。
上記のような症状が出てくると、その人間はその病気に侵されている危険性がある。又もしも患者が完全に【暗闇症候群】に侵されてしまったら——。
* * * *
「…や、…やめ……ぇうっ……げぇっっぁあっっ!!…」
—暗闇の中、不気味に輝く白い満月。ビチャビチャッとマンホールの上に赤黒い塊と液体が滴り落ちた。そののち、大きな塊が地面にずるりと落ちた。その塊は満月の光で反射しており、ぎりっとその塊は白いスニーカーの靴によって踏み潰された。
ぐちゃぐちゃ……「…きったねぇ音……」
するとスニーカーの踵部分から黒い液体のようなものがにじみ出てきて、地面を這いずりやがて地面に落ちた大きな塊や小さな塊も飲み込んだ。そしてその黒い液体は形を変え、シュルシュルと蔓のように細いものになった。
「…今日の食事は……ここまで……」
そう告げると黒い蔓はすっとその人物の足もとへと戻り、やがて雲に隠れていた満月が顔を出したと同時にその人間の影に溶け込んだ。すぅぅっと風が流れ込み、満月の光はさっきまで『惨劇』と化していた場所を照らしていた。
——だが、そこには誰もいなかった……。
<目次>
プロローグ >>0
ACT1
Page:1
- ACT1:少女と現実 ( No.1 )
- 日時: 2010/05/22 00:16
- 名前: 彩凪 (ID: WKZwKa5Q)
5月1日(晴れ)
『今日も学校へ行けなかった。今日もダメだった。
もう駄目かもしれない。もうあそこへは行けない。
どうしたらいいの。どうしたらいいの。どうしたらいいの。
もうわからない。
……。
……。
死ぬ、しかないの…かな どうしよう』
—今日も朝がやってきた。特に月曜の朝というのは憂鬱だ。頭がガンガンする。吐き気もする。だるい、重い。気が乗らない、……。
『死にたい』
* * * *
—何で朝なんて来るんだろう、何でこの世に『時間』なんて存在するのだろう。やはりこの世界に『時間』が存在するのは、この世界にも『神様』という見えない存在がいるからだろうか。否、だがその前に『時間』が生まれる前から『神様』は存在していたのだろうか。ならば『時間』はどうして作り出されたのだろうか。
時間を計測し、人々の知識をより多くするため?
当時盛んだった米の豊作を願ったため?
……。
…。
「…なんて、馬鹿なこと考える暇あったら学校行けって話だよね…。」
目の前のクマのぬいぐるみに語りかけるように微笑みかける一人の少女。淡い茶色がカーテンの隙間からこぼれている太陽の光に照らされて、赤色に見える。ぎゅむっと少女はクマのぬいぐるみを抱きしめ、枕もとにあった携帯電話を疎ましく見る。
『メール受信 10件』
「……」
その文字を見て、少女はすぐに携帯電話の電源を素早くオフにした。そしてすぐにベッドから降りて、パジャマ姿のまま机の上にあった真新しいカッターナイフを手に取った。
「……っ」
そしてそのまますっとナイフの刃をナイフを持つ逆の方の手の甲へと添わせ、ぐっと力を入れた。何かをこすった後のような熱さと痛みが同時に怒り、ギリギリとのこぎりで板を切るように少女はナイフで手の甲に薄い傷をつける。
(痛い、痛い…、痛い痛い痛い痛い……でも)
「…気持ちいい」
そう言うとぱっと彼女はカッターナイフを机の上に置いた。幸い、傷は薄く赤い線の跡は残っているが血は出ていない。彼女はその傷を見、逆の手で傷がついた方の手を包みこむ。
「………何やってんの………馬鹿」
ポツリ、
ポツリ、
「……あたしが死んだって……意味なんか、あるわけないのに…」
ポツリ、ポツリ、彼女のシーツに彼女の悲しみが付着していた——。
- つづき ( No.2 )
- 日時: 2010/05/23 00:40
- 名前: 彩凪 (ID: WKZwKa5Q)
* * * *
—ポツンポツン……ポツンポツン……。
いつものように降ってくる、天井の隙間から地面へと降り注ぐ滴。ポチャンポチャン、一定のリズムを刻みながら滴は大地へと溶け込んでゆく。
コツンコツン…。
また、いつものように足音が近づいてくる。独特なリズムと滴の落ちる音が混ざって、はっきり気持ち悪い。だが『彼』は近づいてくる。私の気持ちなど、気分など関係なしに。
コンコンッ
『開け放たれていた扉、その扉にもたれかかるように彼は立っていた』——。
「時間だ、『実験』を始めよう」「……はい、‘センセイ’」
* * * * *
「ふぅ……」
—時刻は夕暮れ、少女は母親の手伝いで近くのスーパーへ来ていた。なんでも、今日は新しい料理をするらしく新しい調味料が必要らしい。毎度のことながら、趣味をコロコロと変える母親に少女はあきらめかかっていた。
(…しょうがないよね、お母さんとお父さんのおかげで私学校もいけてるし…お母さん好きなことできてるし)
—ぽっかりと、穴があいたような感覚。
まさに少女の心境そのものだった。この言葉が一番今の少女に合っているだろう。少女は調味料やら今日の献立の野菜やらが入った袋を手に、ずっと歩いていた。
—そして数歩歩き、横断歩道に差し掛かった。チカチカと青色が点滅し、信号は赤に変わった。別に急ぎの用事でもないので少女は規則に則って立ち止った。車が彼女の前を行き交い、彼女はぼんやりとポケットから携帯電話を取り出しメールチェックやらネットやら信号が青に変わるのを待っていた。
その時、ポチャンっと小さな滴が彼女のディスプレイに付着した。彼女はすぐにそれを拭こうとしたが、すぐにもう一つもう一つと滴が彼女のディスプレイに付着する。
やがて青かった空は灰色と化し、ザァッァッと雨が降ってきた。突然の雨に彼女だけでなく彼女の周りにいた人々もあわてて自分のカバンや偶々持っていた折り畳み傘を使って雨をしのぎ、走っていく。
「や、やばっ……早く帰らないと…」
そして少女は横断歩道を通らず、右への歩道へと入った。それは近道をするためだ。右の歩道へ入ると、途中で薄暗い不気味なトンネルが見えてくる。いつも彼女はそれが怖くて遠回りをしていたのだが、急に雨が降ってきたのでしょうがなく近道をすることにしたのだ。
* * * * *
—さぁ、実験を始めよう。大丈夫、君はすぐに治る。だから少しだけ僕の実験に手を貸してはくれないか?
—君は唯一、僕が発見した新しい病気を治す薬を体内に保持している。この実験が成功すれば、僕が発見したまだ未知の病気の抗ウイルス剤を作ることができる。
—協力してくれ、この世界の命運がかかっているんだ。頼む、…… 。
「嘘つき」
—ビシュンッ
黒い蔓が人間を締め上げる、首、腕、足、腹、すべての部位を締め付ける。締め上げられた人間は口から泡を出し、やがて数分で白目をむいた。手足は地面へと向けられ、首は完全に空を向いている。
そしてポツンポツンと『少年』の頭に滴が降り注いだ。やがて滴は雨と化し、少年の髪も服も濡らしていく。少年はそれを疎ましく思いながら、白目をむいて死んだ相手に向けてこう言い放った。
「…悪いな、これも実験の為なんだ、世界の為なんだ、あいつの為なんだ。…ホントにわりぃ」
そう彼が言うと、黒い蔓は死体を包み込むようにうねりやがて黒い蔓は死体を完全に包み込んだ。シュゥゥゥと何かが焼けるような音と黒い粒子が蔓から発せられ、やがてすっとその蔓は消えた。
—それと同時に、死体も消えた。—
「……」
死体が完全になくなったことを見届け、少年はふっと瞼を閉じた。かすかだが彼の手が震えている、とすぐにぎゅっと拳を作りドンッと自分の足を叩いた。
「……何やってんだ、俺は」
そういうと彼はすぐにばっと後ろを向いて歩きだそうとした時、すっと影から人影が出てきた。相手も彼に気付かずに歩調を遅くせず歩く、彼もまた歩く。
「—ぇ」「ぅっ!!」
まるでスローモーションのように彼の眼から感じられた。相手は自分の肩にドンッとぶつかり、足が絡まって地面へと手をついた。少し褪せた茶髪が印象的で、だが服装は至って普通な格好。地面には先ほど相手が持っていたスーパーの袋、およびその中に入っていた食材の数々。トントンと落ちていき、やがて相手も地面へと落ち、手をつく。
「…い…ったぁ…」「…」
相手の声で彼は目が覚めた。相手は痛みで手のひらをさすりながら落ちた野菜やら果物やらを拾っている。少年もすかさず落ちてしまった野菜や果物を拾い始める。
そして最後の一つ、赤いリンゴを手に取った。それを手に取ったのは、まぎれもなく彼だった。
「…ぁ、ありがとうございます」
相手は彼が拾ってくれたリンゴを手に取り、袋の中に入れた。そしてお辞儀をし、さっと細い通路へと駆けて行った——。
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