ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- アゲハチョウ。
- 日時: 2010/05/25 00:07
- 名前: 絢釣堂瑠 (ID: PLnfHFFW)
- 参照: 読み:アヤツリドウル
START。
2004年8月23日(土)
太陽はギラギラと僕らを照らして
弟は麦わら帽子を深く被りながら
揚羽蝶を追いかけていた。
追いかけ続けた後に弟の生息が途絶えた。
田舎で育った
夏になればとうもろこし向日葵や麦が見えて
汗水かいて広い広い畑を耕す爺ちゃんとそれを手伝う近所のおじさん達が服を汚して機械を動かす。
汚れたエプロンやほつれたTシャツを直す婆ちゃんは正座をして目を細めながら糸を通す。
僕はそれがすきだった。
古ぼけた大きな家には
頑固な爺ちゃんと優しい婆ちゃんと僕と僕の弟がいた。
僕の名前は弘瀬大志。
弟の名前は弘瀬瞬太。
お父ちゃんは肺ガンで死んだってお母ちゃんが言った。
お母ちゃんは仕事で忙しいって僕らをここにあずけた。
家が貧乏だから東京で三人暮らしはできないんだ。きっと。
夏休みと冬休みには必ず逢いにきてくれる。
弟は今年で小学2年生 僕は小学5年生だ。
昔から「兄ちゃん、兄ちゃん」ってうるさい弟で将来の夢はお医者さんだって言ってた。
夏になると毎日のように麦藁帽子を深く被って昨日も一昨日も着ていた白シャツ一枚とブカブカの半ズボンで虫を捕まえていた。
東京に居た時、僕のおこづかいは毎月10円だった。
テストの点数がいい時は15円になって穴あきの丸を貰った。
弟はもらえなかった。
と言っても、その頃はお金も知らない。
ので欲しいとも言わなかった。
田舎に来て初めての夏。
婆ちゃんが初めておこづかいをくれた。
100円だった。
「婆ちゃん、いいの?!」
ゆっくりうなずいた婆ちゃん。
「右に曲がると店があるから、行きんさい
何に使うと?」
婆ちゃんの質問に答えないまま、走って外を出た。
庭で犬とにらめっこしてる弟は僕を見てから
「どこ行くの? 兄ちゃん」
半分泣きべそな弟が僕を追いかけてきた。
すぐに僕に追いついた弟は
「家出するの? 僕も出て行くよ。つれてって」
「違う。 おこづかい貰ったんだよ。100円!!」
「なーんだ。おこづかいか。」
店が見えると僕はもっと走った。
駄菓子もおもちゃもある。
けど、ゲーム機が無かった。田舎ってこうなのか。
「・・・」
弟はまだ悲しんでいた。
あの家 この町が嫌いなんだって。
しょうがない。お母ちゃんは忙しいんだもの。
毛糸の財布の中身にはさっきもらった100円とお母ちゃんに貰ったお金が残っていた。
全部で200円しかなかった。
「瞬太、何が欲しい?」
弟に聞くと、店を見渡して指を刺した。
少し大きい麦わら帽子だった。
「・・・300円足りない。」
僕がそう言うと弟はもっと泣きそうになった。
お店のおばさんは笑顔で僕に話しかけてきた
「弘瀬さんのお孫さんだって話はきいとったよ。
吉彦さんがとっても喜んでらっしゃったのよ。
弘瀬さん家にはお世話になってるから麦藁帽子、もっていき。」
「ありがとうございます!!」
吉彦とは多分、爺ちゃんの事だ。
あの爺ちゃんがよろこぶなんて考えられない。
お店のおばさんは麦藁帽子のタグを切って、渡してくれた。
僕は手持ちの200円をお店のおばさんに渡して走ってかえった。
弟は嬉しそうに麦藁帽子を深く被った。
家に帰ってもご機嫌だった。
僕も嬉しかった。
100円もらえた事、おばさんに200円まけてもらった事、僕達がこの家に来て実は喜んでいた事、弟が元気になった事。
どれもみんな良い事でたくさんだった。
家に帰ったら婆ちゃんがエプロンを着てトントンとまな板にリズムを刻んでいた。
「ただいまー!!」
弟はご機嫌に婆ちゃんに言う。
「ただいまー。」
僕も言った。
弟が嬉しそうに麦藁帽子を被っている姿と
クシャッと財布を握っている僕の手を見て
婆ちゃんも嬉しそうだった。というより笑った。
弟は麦藁帽子を気に入っていた。
きっと、弟も嬉しい事がたくさんだったから。
僕はその時はじめて気付いたけど
弟は自分の嬉しさを人に移す事が出来るのではないか。
それって弟にしか出来ないすごい事なんだって。
その弟の笑顔を見ると僕も嬉しくなったから。
婆ちゃんもそうだったんだ きっと。
アゲハチョウ——
この時は 弟も。。。。
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- Re: アゲハチョウ。 ( No.2 )
- 日時: 2010/05/25 23:45
- 名前: 絢釣堂瑠 (ID: F1WKsNfT)
- 参照: 読み:アヤツリドウル
2話
僕の好きな弟はだんだんとこの家に慣れて行った。
田舎の小学校にも通っていた。
僕はは人気者だった。
東京から来た事が珍しくかっこよかったみたいだ。
親友が出来た。
平山恵吾 恵吾は名前の順が前後だったから一番最初に話した子。
近所には 宮倉葉月 っていう女の子が住んでいて
同じクラスでマドンナ的存在。
とても可愛くて綺麗で優しい子で
学校でも人気があった。
僕の初恋の人だ。
宿題や勉強を教えてもらっていた。
葉月の両親も僕の事を気に入ってくれていた。
弟は葉月の事がだいすきで、いつも僕に嫉妬していた。
僕らはライバルだった。
初めてここに来て1年過ぎた春、
葉月との思い出の場所がある。
僕の大事な自転車の後ろに白くて可愛いワンピース姿の葉月を乗せて、
「そこ、右。ちょっと細い道に入って・・・・・——」
道を指図されるまま、僕は自転車を漕ぎ進む。
林を抜け、静かな川原についた。
「ここ、私のすきな場所なの。秘密だよ」
「秘密・・・??」
「私も少し前に引っ越してきたんだけど
この町は田舎でしょ?
前に住んでいた場所も素敵なところだったけど
この町の人がすき。音がすき。香りがすき。空がすき。学校がすき。この町、すき。」
そう言っている葉月は川原の芝生に座り、
その言葉にうなずきながら隣に僕がすわった。
「大志、」
「なに?」
「なんでもない」
太陽に照らされた白い肌の葉月の横顔を見て
不思議と胸がいっぱいになった。
可愛かった。とても。可愛かった。
「葉月、」
「なに?」
「す・・・す・・・・す・・・・///」
伝えられなかった。
あきらめてため息をついて寝転がった。
- Re: アゲハチョウ。 ( No.3 )
- 日時: 2010/05/26 16:05
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
こんにちは、海鼠デス(´`*)
学校モノですねw
私こういうの大好きなんですww
期待しているので頑張ってください!w
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