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Noril.(イラスト募集しております)
日時: 2010/06/13 15:36
名前: 夜桜 (ID: UcmONG3e)

更新は亀並みの速度だと思います。
いつ消えるかもわかりませぬ←
そんなこんなでぐだんぐだんな作品ですが、
お気に召していただく事が出来たなら幸いです。

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序章 ( No.1 )
日時: 2010/06/13 15:25
名前: 夜桜 (ID: UcmONG3e)

昔々ある所に黒の王と呼ばれる王様がいました。
彼の人は絶対的な権力を持ち、しかし驕る事無く国を治めていました。


国は黒の王を称え、黒の国と呼ばれました。
とても裕福な国で城下は活気に満ち溢れ、周りのどの国よりも草花が生き生きとしていました。
壮大な自然や美しい町並みは隣国が羨み、旅行者がいつも耐えませんでした。
とても素晴らしい国。


以前からそう素晴らしかったのではありません。
町は人数も疎らで空気も薄暗く、我が物顔で蔓延る自然は驚異になりました。
新しく就任した若き王は町を回り、何年もかけて自らの手で再興を行いました。
町の人々は外に出て、自分たちに出来ることを小さな事から始めていきました。
あんなにもバラバラだった部下たちも一人、また一人と王に本当の忠義を誓っていきました。


国民も王家も皆、黒の王の下“黒の国”の住人であることを誇りに思っていました。


しかし、ある日突然王は病に倒れてしまいます。
国一番の医者が診ました、国一番の薬を使いました、沢山の手を使い尽くしました。
だけれど、王は病に勝つことが出来ずに、悲しむ妻や信頼できる部下を置いて彼は逝ってしまったのです。


————突然の王の若すぎる死————


悲しみに震える女王、戸惑う部下や国民たち。
あまりの衝撃に、国が滅んでしまうのかと思われました。

「「私たちが付いております。ルージュ様。ご安心を」」


電気も付けず、薄暗い部屋、くすんだ部屋に篭ってしまった女王の耳に声が響きます。
同じ顔を持つ女王直属の部下が声を揃えて言いました。

次期国主となるのは、王の妻である赤の女王をおいて他には居ないのです。

「だけど、あの人無しじゃ私は・・・」

「王が逝ってしまわれたのは悲しい事です。 貴女様の全てだという事は私たちも分っております。
 しかし、王が残していった物は沢山あるのですよ。」

「何が、・・・何が残っていると言うのだ!
 あの人はもう居ない、帰ってこない、あの人は私を置いて逝ってしまった・・・」


悲しみに染まる瞳に涙は無い。
それが、逆に彼女の悲しみの深さを表しているようでした。
生まれる前から王との結婚が決まっていた彼女は、誰よりも王を愛しており、生きる意味であり、彼女の世界の全てだったのです。
それを失ってしまい、彼女は受け入れられないで居るのです。


「この国が、この城が、国民たちが、そして私たちが おります。
 王はこの国を愛しておられた。」

「そして、守って来られた。それが今失われようとと しているのです。
 王の望みが、王の願いが、王の意思が。」

「貴女様が、王の意思を継がないでどうするのです  か。
 愛しいあの方の思いを他の方に任せても良いのです か?」


「・・・・・・」



「「ルージュ様、どうかご決断を。」」




悲しみの色が愛しい色に変っていく・・・
立ち上がった女王に人知れず笑う影がそこにはあった。

「私が継ぎます。あの人は誰にも渡さない・・・」

暗い部屋に、女王の低い声が悲しく響いた。

一話 ( No.2 )
日時: 2010/06/13 15:35
名前: 夜桜 (ID: UcmONG3e)

・・・それは、女王が国主になってから幾日も経っていない頃の事です。

彼女は、黒の王からの遺書を発見してしまいます。

古びた洋皮紙には、間違いなくあの愛しき黒の王の
りりしい字でこう記されていました。

——— 遠い昔に生き別れた愛しき妹、ブランにどうかこの国を ———

それを見た彼女は悲しみました。
こんなにも女王は王一筋で一途なのに。王は他にも愛しい者が居るのです。

彼女にとって王は世界の全てなのに、王にとっての彼女は一体どれくらいになるのでしょう。

血の繋がりとはそれほどまでに強いのでしょうか。
死して尚、ブランは愛されるのでしょうか。

女王には、もう愛してくれる人も血の繋がりのある家族も居ないのに・・・


『そんな物・・・燃やしてしまいなさい。』
耳元で悪魔が囁きます。
いえ、それは悪魔ではありませんでした。
彼女の憎しみ、嫉妬から生まれた、もう1人の彼女です。


『この事は貴女しか知らないのですよ?消してしまえば全て元通りになるのです。』
「そう、そうだ。これは私しか知らない。この手紙さえ無ければ・・・」

女王は手紙を荒々しく切り裂くと、赤々と燃える暖炉に放り込みました。
遺書は燃える、女王の色を宿して。

『そうです。コレで“黒の王の国”は貴女の物。』
「っ!」

遺書を燃やした所で、この手に戻ってくるのは・・・

・・・違う

「違う・・・違う、違う、違う!!!
 私が、私が欲しいのは“国”じゃない、あの人が、あの人からの想いが欲しいのよっ!」

遺書は燃えました。少しの灰も残さず消えました。

だけど、だけど・・・
存在を消しても事実だけは消えてはくれません。

あぁ、なんてこと
盗まれる、奪われる、ココロが壊される・・・


彼女はココロの奥から音が聞こえた気がしました。
そして、温かくドロリとした何かに包まれていくような気がしました。
女王が感じたのは深い絶望か、はたまた深い歓喜か・・・


黒の王から想いを寄せられるブランが、彼女から王を取ろうとするブランが許せません。
苦しいのに、悲しいのに、怒りがあふれ出てくるのに笑いが止まりません。
彼女は何故だか、酷く楽しくて仕方がありませんでした。


『ならば・・・

「ならば消しましょう“ブラン”を。そうすれば、全てが私の物・・・」




彼女の中で新たな憎しみという感情が湧き上がり、
暖炉の炎のように赤々と燃え広がった。


もう“綺麗”な私で居られない
ならばいっそ、この手で殺してあげましょう?

「溢れる気持ちが止まらない・・・止められないの」


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