ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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『指切り』
日時: 2010/06/27 10:06
名前: 知更鳥 (ID: QJRKs5xw)

____アノ日ノ約束、憶エテイマスカ?____
____エ? 憶エテ無イノ?____

ダカラ、言ッタデセウ、 「必ヅ憶エテイテネ」ト。

愚カナノハ、貴方ノ方。 
決シテ、アタシデハ無イノ。

ミルクニチョコレエトヲカキ混ゼテ、
少シ気取ッテ 砂糖菓子ヲ2ツ。 フフ、太ルカシラ?


・・・アノ日ノ甘イ闇ノ約束ヲ、必ヅ 守ッテネ?




****
皆さん、はじめまして。
知更鳥(コマドリ)と申します。
雑談掲示板では、夜深(ヨルミ)と名乗っています。

旧仮名遣いとダーク系が好きな中二病(?)です←

この小説は、レトロなものにしようかなと思っています。。

よろしくお願いします★

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Re: 『指切り』*登場人物* ( No.1 )
日時: 2010/06/27 12:40
名前: 知更鳥 (ID: QJRKs5xw)

淀(Yodo)

日本人形のように綺麗に撫で付けられた長い黒髪を一つに括っている。色白な少女。
鮮やかな白いびわの花柄の着物を着ている。
明治時代の「和魂洋才」を嫌い、着物をこよなく愛している。

風呂敷は赤と青と黄の三色を所有。
金箔を散りばめた下駄を履いており、金色のこはぜ(足袋の足首部分で留める金具)に筆で「淀」と書いてある。

「和魂洋才」を嫌うとはいうものの、麻布のハンチング帽を大切にしている。


鈴(Suzu)

淀の妹。幼いながらに何かを悟っている。好きな食べ物はアイスクリイムとウエハス。
髪は栗色の巻き毛。黄色いフリルの付いた、赤いリボンでたくさん飾ってあるエプロンドレスを着ている。

鈴は姉の淀とは違い、和魂洋才に気を許しているようである。 母につくってもらった、赤い目の兎の縫ぐるみが大のお気に入り。

Re: 『指切り』 *零* ( No.2 )
日時: 2010/06/27 12:38
名前: 知更鳥 (ID: QJRKs5xw)

◆ 夏の遠い日 ◆

私は、夏が嫌いだ。



ミーンミーンミーン・・・



蝉たちがせわしなく鳴いている。
今の気温は、29.9度。
暑さが部屋の中にこもって、今にもむわっとした空気が目に見えそうだ。

「暑いよぉ。アイスクリイム食べようよー」
そう言って妹が勢いよく私めがけて飛んでくる。

「暑いのは夏だから当然でせう。 私の財布にはそんなのを買うお金無いわ」

「おとさんに頼もうーっ」
腰に手を当て誇らしげに叫ぶ妹。舌足らずな妹はお父さんのことを「おとさん」と呼ぶ。
何よ、偉そうに。

このキンキンした声が「鈴」というこの子の名前にぴったりはまっていると思うのは私だけかしら。

「父さんはいつも、仕事で忙しいんだから滅多に遊びに連れて行ってなんかくれないわ。たまには我慢しなさい」

口を三角に尖らせる妹。余程不満なのだろう。

私も、こういう暑い日にはかき氷が食べたいと思う。けれど、それは無理なこと。

四年前の夏に母・知世子は他界した。

母は重い結核だったのだけれど、仕事や哺乳瓶が必要だった鈴の育児が大変で、職場で多量の血を吐いて倒れるまで病院に行かなかった。

全く自分の健康に気を使わない母だったので、滅多に病院に行かず、病気の早期発見に繋がらなかったのだ。
______今から思えば、母は病院が嫌いだったのかも知れない。


「・・・優しいおかさんさえいればいいのに」
鈴がふと呟いた。 
見ると少しだけ目が潤んでいる。

「鈴、その話は駄目。やめませう」
慰め程度に私は妹の髪を撫でた。
栗色の巻き毛の髪。この髪色は母に似たのだ。

「優しいおかさんさえいれば、鈴も淀も、アイスクリイムいっぱい食べられるのに。ファミリイレストランも二週間に一回は行けるのに」

「贅沢なこと言わないの。母さんは、私と鈴のために一生懸命頑張ったから神様が百点満点をくれたのよ」

「・・・ごめんなさい」
しゅんとして、体育座りをする鈴。顔をうずめている。

鈴は643gの未熟児で生まれてしまったため、母にはとても苦労をかけた。
それを鈴自らの頭が理解している。鈴は自分が母に迷惑をかけたため母はいなくなった、と思い込んでいる。 

妹にこんな思いをさせたくない。母に死んで欲しいなんて絶対に思っていなかったのに、母はいなくなった。
私と妹には、ただただ絶望感が残り、父には育児と仕事をの両立こなさなければという焦燥感が残った。

遠い夏の日、お葬式に来ていた人たちの涙が溶けたアイスクリイムのように流れて、
遠いお星様になって消えた。

そういうわけで私は夏が嫌いだ。
夏の、このうだるような暑さも、
妹の時折みせる悲しげな表情も、生ぬるく吹く風も、
夜に小さく光る星星も、全部全部嫌いだ。


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