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Way to alive
日時: 2010/07/23 16:54
名前: 流威(ルイ) (ID: zTJIAtHn)

こんにちは。
流威といいます。
文才ないですが、読んでいただけたら幸いです。


登場人物

イアン・アッシュマン
21歳、男。楽天的でヘラヘラしているように見える。決して辛そうな顔を見せない。

アレックス・ペンバー
21歳、女。イアンの幼馴染み。男勝りで気が強い。

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Re: Way to alive ( No.1 )
日時: 2010/06/26 17:00
名前: 流威(ルイ) (ID: dfpk6DJ/)

プロローグ

俺は何故ここのいるのだろうか。


目に映ったのは、真っ白な天井だった。

ここは何処だろう。

重い身体を起こしてみても見えるのは白一色。

それは空虚で輪郭のない風景だった。


分からない。
何も、分からない。

俺は何故ここにいるのか、俺は誰なのか…。



−ただ、これだけは覚えている。

幾度も死を覚悟し、それでもなんとか生き残ってきたこと。




そして、幾多の血が流れたことも…。

Re: Way to alive ( No.2 )
日時: 2010/06/26 17:43
名前: 流威(ルイ) (ID: dfpk6DJ/)

第一章

晴れ渡った空に飛行機が直線を描く。
それは、旅客機ではなく、軍事用の輸送機だった。

「こんなこと、いつまで続くと想う?」

「さあな。ま、いつまでも続くことはないだろう。」

二人がその空を眺めていた。

一人は茶色の髪に緑の目の、左手にリストバンドをした男。
もう一人は黒髪のショートカットにグレーの目の精悍な顔つきをした女だった。

「イアン、あんたは相変わらず脳天気ね。」

女は呆れたと言わんばかりにイアンに冷ややかな視線を送る。

そんなことは気にもせずイアンはフッと笑ってみせ
た。

「俺が、脳天気…。そんなふうに見えるか?アレックス。」

「………。」

アレックスと呼ばれた女は表情を曇らせた。

「あんたは明日発つんだったね…。」

「ああ。お前も近いうちにあの島へ行くんだろ?」

「この腐れ縁はどこまで続くんだか。」

輸送機が向かった先はバート島。
北半球のどこかにあるという無人島だ。

「所詮、俺達は変異種さ。」

空を見上げたイアンの目に悲しげな色が映っていた。

−変異種。

近年、オゾン層が破壊され、その役目はほとんど果たしていない。
結果、紫外線の影響を受け、突然変異を起こした動物、ミュータントが発生している。

人間も例外では無く、稀に遺伝子に異常が見られる者がいる。
それが、変異種だ。

「輸送機で運ばれるなんて、物同前の扱いだな。」

イアンがボソリと呟いた。

彼等には微弱ながら超能力のような力が宿っていたり、通常を上回る身体能力を有する。

そのために彼らは恐れられ、差別されてきたのだ。

「でも、あの島に行けば少なくともすくわれるんじゃない?」

今度は重い空気を吹き飛ばすかのように、アレックスが笑った。

「どうだか。表向きは保護施設だが、やってることが隔離だからな。」

笑いながら、しかし目は笑わせずに言うと、イアンはリストバンドに目をやった。

Re: Way to alive ( No.3 )
日時: 2010/06/27 02:27
名前: 流威(ルイ) (ID: dfpk6DJ/)

第二章

出発の朝。

イアンは昨日見た空を思い出していた。

晴れ渡り、雲一つない空を。

今日はそれが嘘だったかのように、
灰色の雲が連なっている。

今にも雨が降り出しそうだ。

そんなどんよりとした雰囲気など気にもせず、
イアンは笑顔で玄関のドアをくぐった。

「そのうち、何とかなるだろ。」

昨日は青い空を見て憂鬱な気分になった。

今日もそうなるはずだった。

「アレックス……楽天的だと、切り替えが早くてくよくよ考えずに済むんだぜ。」

再び会えることを願い、ここにはいないアレックスに言葉を送った。



*第二章 中段*

Re: Way to alive ( No.4 )
日時: 2010/07/22 14:37
名前: 流威(ルイ) (ID: zTJIAtHn)

*第二章続き*

この馴染んだ風景は
もう見ることが出来ないかもしれない。

アレックスと向こうで会える保証もない。

「ま、向こうの生活もそんなに悪いもんじゃないだろう。」

イアンはいつもの表情に戻って歩き出した。

もちろん、島は常に監視下にあり自由は無いだろう。

変異種には人権が保障されていないのだ。

それでも、イアンは無理やりでも笑おうとした。

こうでもしなければ心が折れてしまうと思ったのだろう。

しばらく歩くとスラム街に出た。

ビルは朽ち、割れた窓ガラスがあちこちに
散乱している。

歩けば粉々になるガラス片。

スラム街といえばただでさえ危険な
イメージがあるが、ここには変異種にとって
最も危険とされている場所なのだ。

しかし、ここを通らなければ飛行機に間に合わない。

「おい。てめぇ、変異種だな?」

長身の男が声をかけてきた。
右手にはメリケンサックが装着されている。

後から二、三人男が集まってきた。
一人は鉄パイプ、あとの二人はナイフを持っている。

「残念ながら、俺はノーマルだ。」

イアンはでまかせを言ったが、

「嘘付け。向こうからこっちに来るのは空港に用がある奴だけだ。」

リーダー格らしき男がメリケンサックで殴りかかって来た。

イアンは身をひるがえして避ける。

「あんたらは、俺に何の用だ。」

ヘラヘラと笑いながらイアンは問う。

「ここを通るわりにゃ、無知すぎたな。俺たちは変異種狩り。てめぇらから金目のものを奪い、殺すことが
仕事だ。」

子分が不敵な笑顔で答える。

「へぇ、そうかい。でも人を殺すと罪になることぐらい知ってんだろ?」

それを聞いた変異種狩りたちは大笑いした。

「てめぇが人?そんなわけねーだろ!!」

鉄パイプがイアンに迫る。

間一髪でかわしたが、
そこにはナイフを持った二人が待ち構えていた。

「っ!!」

片方は素手で受け止め、もう片方は蹴り落とした。

身を引き、激痛に顔を歪めながら彼らを睨む。

「それになぁ、てめぇらは法律の外に置かれてるんだ。殺しても何の罪にもなりゃしねぇんだよ!」

再びリーダー格が殴りかかってくる。

「クソッ!」

激痛で動けず今度はまともに食らってしまった。

数メートル先に体は吹っ飛んだ。

衝撃が体に走る。

地に伏したイアンは起き上がろうとしたが、
頭を踏まれた。

「さぁて、金目のモンは…何だ、しけてんな。」

イアンは金品を何一つもってなかった。

「親分、このリストバンドって…。」

イアンの右手のリストバンド—。
『PAIN』とプリントされていた。

「なんだ、少しは金目のもの持ってんじゃねぇか。
変異種がこんなスポーツブランドなんかつけてよォ。」

リーダー格の男がリストバンドを抜き取ろうとした。

「…か…えせ…。」

か細い声が聞こえた。

「あァ?変異種のクセして生意気言うな!」

踏みつけに力が加わる。

「ぐあっ!」

「じゃ、コレは頂いていくぜ。」

リストバンドが抜かれた。

その瞬間、イアンは目を見開いた。

その目には感情いうものが無かった。

イアンは起き上がりざまにリーダー格に
蹴りを入れた。

「がっ!」

男は吐血し、倒れた。

「親分、親分!…なんてこった、死んでる!!」

「カエセ!」

イアンは手から大量に出血しているとは思えないほど
の速度で二人に近づき、両手で二人の首を絞めた。

「ぐっ…ああぁぁぁ…。」

二人とも恐怖に引きつった顔で昇天していった。

「カエセ。」

イアンはリストバンドを拾い上げると右手につけた。

その瞬間、正気を取り戻した。

口から血を吐いた死体、恐怖に顔が引きつった死体、
そして首に血の手形が付き、同じ顔をした死体。

「うあぁぁぁぁあああ!!」

その光景に絶叫した。




曇っていた空が涙を流す。

その滴はイアンの体に降り注ぎ、
次第にシミが大きくなっていく。

体は冷え切り、血は大量に流れ、意識が遠のいていった。


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