ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 墓場掘り
- 日時: 2010/07/01 17:20
- 名前: 夢喰@ (ID: PA3b2Hh4)
どもっす。
ダークファンタジーとゴシックロリータを
こよなく愛する、夢喰@っす。
よろしくです。
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- Re: 墓場掘り ( No.1 )
- 日時: 2010/07/01 17:21
- 名前: 夢喰@ (ID: PA3b2Hh4)
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ユーリ
20代の男。 墓場に死体を埋める仕事をしている。
愛情を感じた事がない。
ロラ・レイシル
14歳で喜怒哀楽が激しい。 魔法の名門・レイシル家の令嬢。
ユーリに愛を教えようとする。
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- Re: 墓場掘り ( No.2 )
- 日時: 2010/07/01 17:33
- 名前: 夢喰@ (ID: PA3b2Hh4)
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第1話
──墓場にて──
ザッザッザッと土を掘る音がする。
灰色の空。 カラスの鳴き声が響き、不気味だ。
「………多いな」
大量の十字架の中、一人の男が土を掘る。
決して大柄ではなく、黒い服を着て、表情を変えず土を掘る。
その傍らには、棺が一つ。
男は、高さ2メートルものの穴を掘った後、棺を中に入れ、再び土をかけ始めた。
魔力という不思議な力が宿る国、イートルダム王国。
その国の東の地、テイトラルには、広大な敷地を持つ墓場がある。
テイトラルで死んだ者は、全てその墓場に魂を捧げる。
その死体を埋めるのは、孤児や仕事が無い貧しい人々。
先ほど死体を埋め終わった男、ユーリは、どすっと十字架の傍に座った。
灰色の空を見上げ、ポツリと。
「死ぬの、早すぎるだろ」
埋めた人間は、まだ幼い子供だった。
顔や体に痣があったところを見ると、事故か、虐待か。
どちらにせよ、まだ命を落とすのには早い。
「次は……レイシル家の葬式か」
配られた、今日処理する死体を書いた紙をじっと見る。
「レイシルって……、魔力の使い手の名門じゃねぇか。 そこの当主夫婦が事故であっけなく死ぬとはねぇ」
どんな強い魔法でも、死者を生き還らせる魔法なんて、ありはしない。
人の命は、一つだけ。
「家は、レイシルの令嬢のガキが継ぐんだな」
独り言を呟いて。
ユーリは立ち上がる。
視力の良いユーリには、遠くから来る神父と、レイシル家の人間たちが見えていた。
「………やるか」
- Re: 墓場掘り ( No.3 )
- 日時: 2010/07/01 17:54
- 名前: 夢喰@ (ID: PA3b2Hh4)
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死体は、男女が二人。
喪服を着て化粧をして、丁寧に手を胸元で組んでいる。
レイシル家はテイトラルで一番と噂されるほどの魔力の名門家で、イートルダム王国で護衛を任せられるほどだった。
その歴代なるレイシル家の当主と、夫人が事故で死んでしまった。
事前に掘っていた穴に、死体を入れる。
その時、すすり泣いていた遺族たちは、口ぐちに死体の名前を呼ぶ。
「……………」
その中で。
泣きもせず、名前を呼びもせず。
ただただ、無能面でその様子を見ている少女がいた。
灰色の髪に、灰色の喪服。
目は淡い藍色で、愛らしい顔をしている。
少女はじっと、穴を埋めているユーリを見ていた。
「……………???」
気づいているからこそ、ユーリは戸惑っていた。
遺族の一人だろうが、何故さっきから自分を見ているのか分からない。
死体を埋め終わって、あとは遺族たちが花を添えれば葬式は終わる。
ユーリは溜息をつきながら、花を添える遺族たちを見ていた。
すると。
「随分シラけた顔をしてるのね」
「……………」
先ほどの少女が声をかけてきた。
別に驚く事はなかった。 視界の端で、こちらに来る彼女が見えていたのだから。
「ねえねえ、キレイなお顔をしているのね」
「こら、何をしているの。 ロラッ」
婦人に首根っこを掴まれ、ロラが嫌そうな顔をする。
「離して。 アタシに触らないで」
「またそんな事言って……。 お葬式なのよ? あなたの両親が死んだのッ」
これを聞いて、ユーリはこの少女こそがレイシル家の令嬢なのだと気づく。
「そんな事、もうどっちでもいいわ。 アタシ、彼が欲しいの」
言って、彼女はユーリに抱き付いた。
「汚いッ、ロラ離れなさいッ」
ユーリが居るのに、本人の目の前で彼を罵倒し、婦人がロラを引き剥がす。
ユーリは特に何も思わない。
貧富の差が激しいテイトラルでは、弱い者は罵しられる事も多い。
ユーリもまた、例外ではなかった。
ロラは大きめの目で婦人を睨み、
「表でしか人間を見ないなんて、邪道だわ。 あなたみたいな表も裏もからっぽの人間なんて、アタシは嫌いだ」
「………………ッ」
ロラの言葉に、顔を赤くして婦人が震える。
自分の両親の葬式だというのに、ロラは何とも思わない様子で、ユーリに微笑みかける。
「ねえ、お話しない? アタシと、あなたで」
「葬式はいいのか?」
「哀しくはないわ。 人はいつか死ぬものでしょう? 遅かれ速かれ、それは仕方ないわ」
肩を竦め、ロラは振り切ったような表情になる。
「そんな事より、あなたを気に行ったわ」
「俺を?」
「ええ。 あっちに行きましょうよ」
ロラに手をひかれ、ユーリはついて行く。
後ろからロラを呼ぶ声がしたが、彼女は振り返りもしなかった。
- Re: 墓場掘り ( No.4 )
- 日時: 2010/07/02 17:46
- 名前: 夢喰@ (ID: PA3b2Hh4)
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木陰に座りこんで、ロラはユーリの手を離した。
どこまでも灰色のこの墓場で、彼女はあまりにも色合いが美しかった。
「あなた、いつからここにいるの?」
「もうずっと昔だ。 いつここに居たのか分からないほど」
「なら、ここから世界を見た事はないの?」
ロラの質問に、ゆっくりと頷く。
「アタシは随分手厚くもてなされているのだけど、そんなの嘘っぱち。 アタシのママとパパが偉いから、みーんなアタシをお姫様みたいにもてなすの。 だけど、二人が死んだからアタシはどうでもいいのよ」
いるのはお金よ、とロラが付け足す。
今まで、名門家の令嬢とだけあって、まともに自由を許されていなかったのだろう。
「お前、俺を気にいったと言ってたな」
「ええ。 あなたの目が気にいったわ」
「…………目?」
こんなみすぼらしい自分のどこが良いのだろうと思っていたユーリは、その指摘に首を傾げる。
「あなたの、そのどこか世界を憎んでいるような……そういう目が気にいったの」
黒く、大きな双眸。
その奥に浮かぶ、ポッカリとした、闇。
「それは、誉めてるのか?」
「そのつもりよ」
けたけたと笑う彼女。
ユーリは何かを考え、目を細めて。
「なら、俺に教えて欲しい事がある」
「なに? アタシの方が勉強しているから、物知りなはずよ」
自信満々にロラは笑う。
ユーリは小さな少女にこう切り出した。
「俺に、愛ってモンを教えてくれねーか」
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