ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ホシクズハーツ ‐ The Stardust Hearts
- 日時: 2010/07/01 21:49
- 名前: 葉七 ◆l/IRP0btKM (ID: cRxReSbI)
『ホシクズハーツ ‐ The StardustHearts』
あらすじ
「夢でさ、寝たら急にどっかのコンビニの前にいるの。それでな、変な化け物に襲われるんだ。で、そいつを倒すとレベルが上がりましたみたいな声が聞えて、それで——」
学校、ニュース、インターネット掲示板では、そんな噂が途方もなく流れていた。
脳の専門家がいうに何かの集団心理らしいが、それを決定付ける証拠もなく、ただただ「そうなんだろう」と皆納得していった。
そんな中、ある日、ある時、ある場所で——
——子供達は、満天の星空が輝く下、自らがために駆けていた。
子供達の思いは一つ。
そして、その思いは誰の胸にも——。
————睡眠時間を勝ち取れ。
馬鹿な変態少年たちが巻き起こす、シニカルでクレイジーな夢と睡魔と冗談の『寝物語』なファンタジー。
Page:1
- Re: ホシクズハーツ ‐ The Stardust Hearts ( No.1 )
- 日時: 2010/07/02 20:12
- 名前: 葉七 ◆l/IRP0btKM (ID: cRxReSbI)
『プロローグ』
少女、龍宮寺玉(りゅうぐうじひかる)は切り替えの早い人間である。
「ふわぁ……」
玉は両手をあげて関節をパキパキと鳴らす。
「さぁて、何をしましょうか、っと」
飛び跳ねるように椅子から立つ。
時刻は午後十一時、夜中といえば夜中といえるそんな時間帯である。
玉は考えた。
「宿題は終わったし〜、お風呂はもう入ったし〜、ゲームはもう厭きたし〜…………! そうだ!!」
真夜中の閃き。一瞬、頭の上に電球が現れたのではないかと錯覚するくらい玉にとってはすごい思いつきだった。
——夜だし、寝ればいいんだ!
……他人が聞けばバカバカしいの一言で済むようなことだが。
まあ、何はともあれ玉は寝た。ベッドに上に大の字になって、子供のような安らかな顔で——
——そして、それは起きた——
『プレイヤーネームを入力してください』
はぁ? ぷれいや〜ね〜む?
目を閉じてるので、自分がどんな表情をしているかわからないが、少なくとも笑ってはいないだろう。
適当に「リュール」と呟いた。即座にクラスメイトの物知りが現れて「サモンナイト4の竜の子を言いたいなら『リューム』だよ」とわけのわからないことを言ってきた。うるさい引っ込んでろ。
心を落ち着け、呼吸を整えた。
そして妙なことに気づく。横たわっているはずが背中に何かあるという感覚はなかった。気のせいか今自分は立っているような感覚である。
目が覚めると——否、目を開くとそこは眩い……、
「コンビニ?」
だった。
とりあえず頬をひっぱった。何も起きない。
辺りを見渡し、そこが見知らぬ場所だと理解する。ビルやマンションに囲まれた様子からして、自分は都会にいるんだと玉は察した。
夜の寒気が徐々に身体を冷やしていったが、そこで玉は自分が見覚えのない服に身を包んでいることに気づいた。
ローブ、というやつなんだろうか。ワンピース仕立てになった裾の長いゆるやかなものを着ていた。手を伸ばすと背中には丸いヒップバッグが固定されていて、そのバッグの中には虫の死骸がびっしりと。
「なんじゃこりゃああああぁッ!!?」
叫び声を上げた。どういうわけか響かなかったかそんなことはどうでもいい。彼女が気になっているのはこれは夢か現実なのかということだ。
寒い。わずかだが痛みもさっき感じた。立ってる感覚もある、自らの重量を感じているということだ。
つまり、玉は明らかに現実を目の当たりにしている。
「…………ぁぁああああぁぁ…………!!」
刹那、玉の真横を風と悲鳴が通り過ぎていった——
「ひっひっひっひ……」
次に聞こえてきたのは下劣な笑い声。
「……?」
誰に向けてかわからないが、ここから逃げた方がいいのは間違いない。
玉は回れ右して全力ダッシュ。足裏が地面を蹴る速度がいつも以上に速い気がする。
振り返ると、眼鏡でエロい顔つきのそれが追ってきた。
「ぎゃあああああッ!? ストーカーッ!?」
叫び、よくわからないこの状況に混乱しそうになる。
——何、何で、どうして、誰か説明して、わけわかんない、何、何なの、何で!?
頭の中でさまざまなものが混ざり合い——“それ”にぶつかった。
「でぅほっ」
壁、である。見えない越えられない壁。つまりはそれであった。
「ぎゃあああああッ!?」
振り返れば眼鏡が迫る、その刹那——
——玉はいつの間にか握っていた重いものを、その眼鏡に向かって振り下ろした。
鮮血が飛び散り、辺り一面真っ赤に——なるわけでもなく、その眼鏡と重いものは消滅した。
「何……なの?」
『リュールはレベル2になった。ゲーム終了です。退場してください』
頭に響くようなその声、アナウンスの如くこちらの状況を直接見ていないような、そんな声だった。
「何、これ!? なんなの!?」
暗がりの星空に向けて、玉は叫ぶ。
答えは返ってこなかった。
「はぁ……」
気がつくと、ベッドの上でため息を吐いていた。不思議と眠気はなく、清々しい寝覚めが心地いい。
玉はベッドから飛び起きて、肩を回しながら洋服箪笥を開けた。
「さぁて、何をしましょうか、っと」
少女、龍宮寺玉は切り替えの早い人間である。
それは多分、何にも興味がなく、それが沸くようなものを探すこと事態に興味があるのだと玉は自覚しているからだ。
目的を探す、見つかる、すぐに厭きる。その繰り返し。
玉の知り合いは皆こう語る。
「ある意味、世界で一番人間らしい人間なんだよ、あいつはな」
Page:1
この掲示板は過去ログ化されています。