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*****白銀鬼伝説******
日時: 2010/07/10 11:45
名前: 澄彩 (ID: qHfVjGdk)

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紅に染めし 夜の月よ 白銀の風を 煽る時

眠れる獅子は目覚めんとす

さすればこの世は 赤々と__________



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*** あらすじ *********************************


20XX年、夏。

小学五年生の『可美村アヤセ』は、夏休みを利用して
田舎のおじの家へ遊びに行った。

生活はなかなか楽しいもので、アヤセにはすぐ友達が
できた。

同い年の『カケル』と『トモヤ』、2こ下の『ミカ』

仲のよい四人は毎日のように遊び、そして、アヤセは
衝撃的な話を耳にしてしまう_______


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Re: *****白銀鬼伝説****** ( No.1 )
日時: 2010/07/10 12:23
名前: 澄彩 (ID: qHfVjGdk)


第一話『ハジマリノショウドウ』









昔。

この土地には人に優しい鬼がいると噂されていた。
時に体を悪くすれば、薬草を取ってきてくれたり、食
べ物に困っていると、ありったけの食料を授けてくれ
るといわれていた。


そんな噂を耳にしたとある若者は、本当かどうかを確
かめるべく、自ら体を壊し、その鬼が来るのを待って
いた。

しかし、

その鬼は現れることはなかった。
死にかけてひどい目にあった、という若者は、その鬼
が祭られている祭壇を壊してしまった。


『ナァニ、コンナモノ、メイシンダ。』


すると、若者は翌日死んでしまった。
その若者を取り囲む血縁者もぽっきりと死んでしまっ
た。


これは、鬼様の呪いだ。

きっとお怒りに触れている。


いつか自分たちも殺されるのではないかと心配した
人々は、その鬼を祭ってあった祭壇を、人の手には届
かない場所へと移し、それ以来、人は死ぬことなく平

和に暮らしました______









「と、言うのがこの土地の伝説だよ」


その話を聞いて、放心状態にくれる僕を起こすように
しておじさんは言った。

いつの間にか汗はひき、逆に、扇風機が寒い。
そんなに怖い話だったのだろうか、と自分では思う。

確かに一族が、原因不明で全員死ぬなんて、怖かった
けれども。


「はっはっは、なんだアヤセ、怖かったのか?」


血の気のない僕の顔を見て、心中を察したのか、おじ
さんは明るい声で僕の腕をたたいた。

日焼けをしていたので、軽くたたいても痛かった。


「お前ももう五年生なんだろ?こんなことで怖がって
 ちゃ、カノジョができても守れないぞ?」

「うるさいなぁ・・・」







僕、____可美村アヤセが、ここに来てから二週間
がたとうとしている。

学校は今、ちょうど夏休みで、それを利用しておじさ
んの家へやってきた。
最初、ここの緑の多さにあっけにとられて、灰色のコ
ンクリートの少なさにあっけにとられて。

ゲームセンターもなければ、広い大きな公園もない。
田舎。
小さな小さな、町。

ここにきたことを失敗に思えた、けど。
今は来て大正解だと思っている。


友達ができた。


いつも川や雑木林の中で遊んでいる、仲間。
同い年のカケルとトモヤ、ちっちゃくて可愛いミカ。
この三人が僕の友達。

都会がどんな場所かもわからない彼らは、はじめ、僕
を見た瞬間、もやしのようだ、といった。

確かに、彼らにくれべて僕は、白くて細い。
だからもやしって言われても案外気にしなかった。


リーダーシップのあるカケルは、お前を鍛えてやると
いって、いろんな場所に連れて行ってくれる。

トモヤはカケルの幼馴染で、少し大人しく優しい子。

ミカはいつの間にか僕の服をぎゅうっと握っている妹
のような存在になっていた。


毎日毎日、知らない世界を冒険することがこんなに楽
しいとは思っても見なかった。

朝、目が覚めて、寝るまでがとても楽しい。
都会の生活からは考えられっこない。


もちろん、宿題もやっている。
毎日が楽しいせいか、すごくはかどっている。
もう少しで終わりそうだ。


このまま、ここに暮らしたい。
なんて、何百回も思ったことか。


夏のにおいを乗せた風が、僕の顔をかすめる。
また今日も、新たな発見が見つかるのだ。



十分もたたないうちに、おじさんの話の内容は気にし
なくなっていた。

でも

その話は、僕の心の中で、まだ鮮明に残されていた。







Re: *****白銀鬼伝説****** ( No.2 )
日時: 2010/07/10 12:49
名前: 澄彩 (ID: qHfVjGdk)




第二話『ハクギンノオニ』







「今日は、どこに行くの?」


サンダルを履きながら、カケルにきく。
カケルは僕の前で仁王立ちしながら、ふんっと鼻を鳴
らす。すると、色のいい唇から、元気な言葉がかえっ
てきた。


「よしよし、今日は川にいこう。滝修行だ」

「滝?そんなものがここにあるの?」

「ない!!!!!!!!!」


いや、そんな自信満々に言われても。
そしたら滝修行じゃないから。

サンダルを履き終えて立ち上がると、カケルはすぐに
僕の手をつかんで走り出した。

陰になっている玄関から、日向に出ると温度差が一気
にわかる。


帽子をかぶっていてもまぶしいくらいの夏場の太陽。
日焼け止めは一応塗ってあるけど、肌がじりじりと焼
けるのがわかる。

カケルの目はらんらんと輝いている。
確かに僕がここに来たときから、とても嬉しそうにし
ていた。

まぁ、悪くはない。
きっと都会に帰ったら、お母さんやお父さんにびっく
りされるだろう。
真っ黒に焼けて、少したくましくなった僕を見て。



「っおーーーい!!!!!トモヤァ、ミカーーーー!!」


少し急な坂を上りきると、カケルはぱっと手を離し、
腕が千切れるくらい大きく振った。

少し遅れて僕も上がると、遠くからトモヤとミカがい
た。カケルの手の振りぶりに苦笑いしつつ、トモヤも
手を振る。

ミカはそんなトモヤの隣で、麦藁帽子のゴムを伸ばし
て遊んでいた。

しかし、たちまち目が合うと、僕の元へと駆け寄って
きた。追いかけるようにトモヤも来る。


「はぁ、カケルは今日も元気な奴だな」

「アヤセ」


小さな挨拶をすると、ミカはお約束どおり僕の服をつ
かむ。
するとカケルが、僕の肩に腕を置いて、耳元でささや
いた。


「なんだ?お前、『妹萌え〜』ってやつか?」

「なんでそんな特殊な言葉知ってるんだよお前は。違
 うよ、ただ小さい子が好きなだけ。」

「妹萌えと一緒なんじゃ・・・?」


一緒じゃない。
僕は、そんな危ないオタクじゃない。
そう言い聞かせるようにして、話を変える。


「川ってどこ?」

「あ、今日は川に行くの?だったら・・・」


トモヤは僕を指差した、のではなく、僕の後ろを指差
した。


「あっちかな」

「え!?そうなの?じゃあこっちに来た意味ないじゃ
 ん!」


カケルに向かって言う。
しかしカケルは微動だにせず、さらりと言った。


「体力付けだ、体力」

「体力消耗しただけだよ!!!!!!」


炎天下での突っ込みは疲れる。 by アヤセ
・・・っと。


「ははは、まあいいじゃん。」

「アヤセ、行くよ」


先を行く二人を追いかける。
坂を下っていく。



・・・・・まぁ、いいか。





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