ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 妖狐、嘲笑。
- 日時: 2010/07/19 15:31
- 名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)
初めまして、耀(あかる)と申す者です。
更新の頻度はけして多くありませんが、地道に頑張ります。
皆様からのコメント、アドバイスお待ちしております。
・目次・
プロローグ >>1
第一話 >>2
第二話 >>3
Page:1
- プロローグ ( No.1 )
- 日時: 2010/07/18 21:09
- 名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)
江戸時代初期から存在すると語り継がれる置物———。
骨のように白い瀬戸物の狐。
美しい柔らかな光沢、まるで実物の狐のように繊細に作られた毛並み。
作者は現在に至っても不明だが、その置物を手に入れようと必死になるマニアは減らない。
しかし———。手に入れた者は必ずそれを手放すことになるのだ。
死と言う形で————。
- 第一話 ( No.2 )
- 日時: 2010/07/18 22:05
- 名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)
「三左崎(みさざき)骨董」は寂れた商店街の一角にあった。
数年前までは肉屋だとか魚屋だとか色々な店が朝早くから店を開いていたが、今では朝でも昼でも一切そのシャッターが開くことはない。
それには理由があった。近隣に大型デパートが建てられた為だ。
次々に店仕舞いをしていった仲間達はその骨董屋を見て「どうせ此処も…」と囁くのだった。
三左崎骨董は明治初期に創立された、今と変わらぬ小さい店だった。
しかし小さいながらも細々と経営を続け、現代の店主、三左崎尚希(みさざきなおき)で5代目になる。
尚希は弱冠二十ながらもきちんと店を切り盛りしていた。
何故尚希のような青年が店主かと言えば、彼が13歳の時、両親が事故で他界。それからは店主の座を尚希の父に譲ったはずの祖父が店を切り盛りしていた。
その祖父も昨年の初夏に他界した。両親には兄弟がいなかった為、尚希は一人で店を営んでいかなくてはならなくなったのだ。
「うん、これで全部磨けたかな」
元々骨董品が好きだった尚希は嫌がることもなく店を継ぎ、骨董品に囲まれながら毎日を送っていた。
これからの迫り来る未来を全く予期せずに——。
- 第二話 ( No.3 )
- 日時: 2010/07/19 15:29
- 名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)
「うん、これで全部磨けたかな」
尚希は誰に話すでもなく独り言で呟くと、手に抱えていたそこそこの価格の壷を、ガラスのショーケースにしっかりと仕舞った。
AM9時45分——間も無く開店の時間になろうとしている。
尚希は少し開店には早いなと思いながらも店のシャッターをあげ、外の空気を店内に入れようと考えた。
(あれ…雨降ってたんだ…)
それじゃあ今日の客足は少ないだろうな、と溜息混じりに心の底で嘆いた。
しばらくボーっとしていると雨なのに、傘も差さずこちらに走ってくる人影が見えた。
尚希は時計に目をやると、まだ先ほどから5分しか経っていないということに気が付つくのだった。
普段ならこの時間帯に店に来る人はそうそう見ないし、その人の必死な顔を見たら余計怪訝に思ってしまう。
その人物が近づいてくるにつれて、その人は女性、しかも年配の方であること、手に風呂敷で包んだ箱らしきものを抱えてることに気付く。
尚希が分けが分からないという顔をしていると、雨にぬれたその女性は尚希の目の前に来ていた。
「あ…あの…なんでしょう…?」
緊張のあまり、思わず声が上擦ってしまう。
女性はといえば、息苦しそうに呼吸をするばかりで口を開こうとしない。
「開店までにはまだ少しありますので、店内で少々お待ちいただけますか?」
苦笑いを浮かべて自分はドアの端に寄り、「どうぞ」とその女性が通りやすいように道を空けた。
その時——。
「お願い!お願いだからこれを引き取って!!」
いきなり腹に手に抱えていた箱を押し付けられ、尚希はよろめく。
その彼女の顔は泣きそうな程にしわくちゃになっていた。
「えぇと…じゃあ鑑定と代金を…」
突然のことで気が動転しながらも、尚希はその女性に言った。
「いらない!お願いだから引き取って頂戴!」
「そういわれましても…」
困ったなあと内心思い口ごもる尚希。
「あ!!待って下さい!」
その女性は泣きながら走って逃げてしまった。
「どうしよう…」
尚希は抱えている包みに視線を送る。
しょうがないなあと思い、それを店の中に運ぶ。
この頼まれたら断れない自分の性格が自分でも嫌いだと思っている尚希だが直したくても直せないのだ。
「?…今箱が動いたような…」
- Re: 妖狐、嘲笑。 ( No.4 )
- 日時: 2010/07/20 23:09
- 名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)
「?…今箱が動いたような…」
両手で抱えている30立方センチ位の包みが動いた気がするのだ。
しかし尚希はそんな不可解なことがおきるはずは無いとその気持ちを飲み込んだ。
レジのカウンターに包みを置く。
まるで開けてはならぬ、とばかりに硬く結ばれた結び目にそっと触れた瞬間、全身に悪寒が流れた。
「…?」
違和感を感じながらも結び目を解くことに集中する。
(これはかなり硬いなあ…)
何でこんなに硬く結んだのかと考えつつ、ヒリヒリする手に顔をしかめながら結び目と格闘すること5分。
「やっと解けた…っ」
汗の滲んだ頬は達成感からか笑顔が浮かんでいた。
中には紐で結ばれた桐の箱が入っていた。
意識していないのに鼓動が早くなる。先ほどの女性の必死な顔を見てしまったからだろうか。
中に何が入っているのか気になるが、手が震えて上手く蓋を開けられない。
やっとのことで蓋を掴むと、ゆっくりと上に持ち上げる。木が擦れる音が、尚希の心臓の音をさらに早くさせた。
蓋を取り除くと上から箱の中を覗き込む。
「こ…これは…」
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