ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 幽界人
- 日時: 2010/07/22 11:21
- 名前: 黒木さん。。 (ID: fMPELWLk)
幽界世界って御存知ですか?
地上界に最も近い霊的世界です。
それは今までの生活と何一つ変わらない世界。
しかし、居心地が良すぎて、『まだ生きている』と勘違いしてしまう霊がいます。
そして、地縛霊になってしまうのです。
その霊達を安心して天国へ招くのが私の役目です。
沢山の未練を持った霊達を今日も天国へ導きます。
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- Re: 幽界人 ( No.1 )
- 日時: 2010/07/22 11:20
- 名前: 黒木さん。。 (ID: fMPELWLk)
第一話 愛しき貴方に捧げる讃美歌(1/3)
『プルルル・・・。プルルル・・・。』
現在、午前二時。
丑三つ時か・・・。
この時間帯多いんだよな、仕事。
少し眠りながらも携帯電話を取る。
「はい。どちら様でしょうか?」
『私、地上界の者何ですが、宜しいですか?』
声からして依頼主は女性だな。
「はい。それでご用件は?」
『先日亡くなった夫の事なんですが・・・。』
「先日・・・。」
メモ帳を机の引き出しから取り出すと、他界者リストを開いた。
「先日とは何時でしょうか?」
『今月の13日です。』
7月13日・・・。
あった、名前は『野丘三尾』だな。
「野丘三尾さんの事でしょうか?」
『ええ。そうです。』
「それで何があったのですか?」
此処からが本題だ。
『私の娘、9歳なんですけど最近様子がおかしいんです。』
「と、言うと?」
『夜、それは正に今の時刻、突然歌を歌いだすんです。』
「歌・・・?」
『はい、歌です。最初は寝言だと思っていましたが、毎夜の様に続いて・・・。』
こういうケースは少ない。
「生前の三尾さんは歌などが好きでしたか?」
『ええ。よく私に歌ってくれましたもの。』
「成るほど・・・。では、何か分かったら連絡致します。」
『はい。分かりました。此方もまた異変に気づき次第連絡を取らせて頂きます。』
そう言って電話を切った。
まずはその三尾さんの居場所を見つけなければならない。
コートを着ると夜の幽界世界へ歩き出した。
- Re: 幽界人 ( No.2 )
- 日時: 2010/07/22 11:50
- 名前: 黒木さん。。 (ID: fMPELWLk)
第二話 愛しき貴方に捧げる讃美歌(2/3)
「いらっしゃい。」
声の低い店長にお辞儀をすると、椅子に座った。
「また仕事関係かい?」
「あぁ。店長、野丘三尾って人の居場所知らないか?」
「野丘三尾ねぇ・・・。」
腕を組み考える。
この店は仕事で度々寄る情報屋。
「ちょっと待ってろ。」
そう言い残すと、部屋へ入っていった。
部屋からホコリだらけの分厚い本を取り出すとページを捲り出した。
「野丘三尾・・・。お、あったあった!」
「どこだ?」
「ま、慌てるな。・・・、お、近場だな。」
と言って皺を歪める。
「ここの店出て、右に曲がって真っ直ぐ行って左に曲がったら『野丘』って表札があるんだとよ。」
「サンキュー!」
椅子から飛び降りると鉄製のドアを開け外へ出た。
「右っと・・・、んで左・・・。あった!」
目の前には『野丘』という表札があった。
『ピーンポーン』
インターホンを鳴らす。
『どちら様ですか?』
「依頼主に頼まれて来た者です。」
『そうですか・・・。どうぞ、入って下さい。』
鍵を開けてもらい中に入った。
家族の写真が玄関に立て掛けてあった。
家族思いの父というのが人目で分かった。
「それで、何の御用ですか?」
「あぁ、ちょっとですね・・・。」
「立ち話もなんですから中にどうぞ。」
「あ、失礼します・・・。」
リビングでは子供達、そしてお母さんがいた。
「パパ!この人だぁれ?!」
二つ結びの女の子が尋ねる。
この子か?9歳の娘ってのは。
「お客さんだよ。それで何でしょうか?」
「地上界の事なのですが・・・。」
「依頼主とは、芽衣の事でしょうか?」
「芽衣さんかどうかは知りませんが・・・、そちらの方です。」
「やっぱり・・・。」
少し顔の色が暗くなった。
「僕は・・・、死んだのでしょうか?」
「・・・、貴方は死にました。」
「・・・、そうですか・・・。」
下を向きながら喋る。
「何か、伝えたい事があるのですか?」
「芽衣に・・・、娘に・・・。歌を届けたいのです・・・。」
言葉を震わせながら答える。
涙が溢れながらも喋り続ける。
「歌・・・。それで娘さんに?」
そう問いかけると頷く仕草をした。
さすがに歌を届ける事はできない。
「歌は無理かもしれませんが、言葉ならお伝えします。」
「・・・、パパは・・・、パパは大丈夫と伝えてください。」
「分かりました。お伝えします。」
そう言ってソファから立つと玄関へ向かった。
「お邪魔しました。失礼します。」
「はい。どうも有難う御座いました。」
お辞儀をすると外に出た。
外はすっかり夜が明けて日が差し込んでいた。
あとは、報告か・・・。
自分の家へと向かった。
- Re: 幽界人 ( No.3 )
- 日時: 2010/07/22 11:58
- 名前: 黒木さん。。 (ID: fMPELWLk)
第三話 愛しき貴方に捧げる讃美歌(3/3)
『もしもし。』
「あ、どうも。依頼主の方ですか?」
『はい。何かありましたか?』
「三尾さんから伝えたい事があった様です。私からお伝えさせて頂きます。」
『夫からですか・・・?!』
「ええ、はい。・・・、パパは大丈夫だそうです。」
『三尾・・・。グスッ・・・。』
「それと・・・、娘さんの歌、しっかり聞いてあげて下さい。三尾さんと思いながら・・・。」
『有難う御座います・・・。有難う御座います。』
言葉を震わせながら喋る。
「・・・、それでは。」
『有難う御座いました・・・。』
『ツーッ・・・。』
電話を切った。
これで良かった。
今日もお役に立てた。
ベッドに潜り込むと深い眠りについた。
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