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偽善者Yさんゲーム( バットエンド
日時: 2010/07/23 18:54
名前: 羽留 (ID: kws6/YDl)

中3の夏。
最期の中学生活は後から振り返って「あの頃は輝いていた」と、胸を張って言えるような夏になると思っていた。
でも、違かった。
それは、ある≪ゲーム≫によって輝かしい日々が失われて行くのだった—。

1章〜ハジマリデオワリ〜

「なぁ、父さん、ケータイ買ってよ」
俺がしても肝いが、上目ヅカイでうるうると頼んでみた。
ケータイ。
中学生なら誰でも欲しいのではないだろうか。
いや、ほぼ皆が持っているのではないだろうか。
クラスでも持ってないのは俺だけだった。
ダチにも「だっせぇ」と言われた。
そりゃそうだ。
だって従妹の小5の依留歌も持っていた。
小5だぞ?
小5が持ってて中3持ってないってダサ過ぎだし。
「駄目だ、お前にはまだ早すぎる」
その13個の平仮名だけであっさり俺の夢は消えた。
母さんなら買ってくれたかもしんないのに—
俺の母さんは羽端市の通り魔殺人に会い、俺は2歳の時に死んだ。
だから今は父さんと俺と妹の3人で暮らしている。
まぁ傍から見りゃ、「だから何」みたいな話なんだけど。


「大智、まだケータイ買ってもらって—」
「そうなんだよっ」
今、教室のド真ん中に俺と親友の伶汰はポッキーをむさぼり食いながらケータイの話題を話していた。
「父さん頑固すぎるからさ、一生買ってもらえ—」
「ならさ」
突然机の横からひょいっと親友2号の涼が顔を出した。
すると俺の隣の席でぎゃあぎゃあやってた女子が「キャーっ、榊原くーん」と黄色い声をあげる。
単刀直入に言うと、涼はすっげぇ可愛い。
学年で一番可愛いのだ。
男なのに。
髪はテンパで自然なくるくる、薄い茶色でピンクオーラを出す涼は誰からも愛される人気者。
男で涼に告白した奴も居た。
それもこの辺で有名なヤンキーと噂される、強田強志。強が2回も入っている。
別の意味でも、すごい。
強田は涼のパシリになってたし。
言い様に使われてたなー。
「かわゆくさ、お願い♪って言えばコロっと落ちるよー」
そんなのお前の親ぐらいだ。
蛙の子は蛙って奴じゃないだろうか。
違うのかな。
まぁ、俺の父さんはどっちにしろ落ちるわけない。
そんなんで落ちたら今までの苦労はどこに…って感じだ。
「じゃぁ今日俺大智ん家行くわ」
そう言うとササっと立ち上がり、人差指を唇にあて、
「この唇だけで落とすから♪」
と言った。
…言っちゃ悪いけど寒い。
今日は気温37°なのに。
なんっでじゃぁこんなに寒いのだ。
…あ、鳥肌立ってるし。
サムイボサムイボ。
…ってあんなピンクオーラばら撒いてる奴家にあげたらヤバすぎる。
妹が…ね。
って言う前にもうどっか行っちゃってるし。
なんだアイツは—。

「おじゃまします♪」
うっわ。
本当に来やがった。
手にはコージーコーナーの箱。
ケーキで父さんは釣れないと思うけどな。
まぁ妹は代表委員で帰りが遅れるらしいから良かった。
でも、父さんが居る。
あんな危険人物—
「大智、誰か来てんのか」
そう言って居間から顔を出す父。

こ、れはまずい…!

「あ、の、この人は—」
「どうもこんにちはーっ僕は大智の親友の榊原涼でーす♪」
うわあぁやっちゃったヨ☆
こうなったら後には引けない、よな。
なにか言わなくちゃ…必死に物を考える俺。
澄まし顔の涼。
複雑な顔の父さん。
「あのぉ、はっきり言いますけど、大智にケータイ買ってあげてください」
なっ…?
ワッツ?
ワッツ=意味不明
だっけ。
わっつどぅーゆーらいく。
ちょちょちょちょ。
涼おぉぉおおおっ!
コイツ何言ってんの?!
いきなり言うんじゃねーよ!
「買わん」
だろ。
当然の答えだ。
するとそれを予想していたかのようにニコぉっと笑って、
「あ、手土産も無しにすいません、ハイ。これ」
そう言って父さんにコージーコーナーの箱を渡した。
「甘い物は嫌いだ」
アハハ、やっぱりね…。
分かってたから、こうなるのは。
「これぇ、夏限定のトロピカルボックスケーキ入ってて、甘さ控えめなんで平気です♪」
涼もさっきよりさらにニコォォと恐ろしいぐらい笑顔になった。
銀歯はキラリーン☆と光る。
俺は眩しすぎて涼を直視出来ないでいた。

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