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たまごやき
日時: 2010/07/27 13:28
名前: 紬 (ID: nWEjYf1F)

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Re: たまごやき ( No.1 )
日時: 2010/07/27 13:59
名前: 紬 (ID: nWEjYf1F)

プロローグ

たまごやき。
それは僕にとって、世界で一番素敵な物。
それは僕にとって、世界で一番美味しい物。
それは僕にとって、世界で一番温かい物。
ずっとそう思ってた。——そう思ってたよ……母さん。
                              *

 一九九四年。僕、重松優平はこの世に生まれた。両親に愛され、兄や姉に可愛がられ、金だってたくさんあって……とにかく僕は、少なくとも誰かに存在を認められていたし、生まれるのを待ち望んでもらえた。だが、我侭な僕はそれだけでは足りなかった。
「母さんこれ買って」
「はいはい」
「父さんこれ買って」
「はいはい」
毎日がこれの繰り返しである。今思えば、自分はどれだけ無知な存在だったのだろうか。過去の事を悔やんでも仕方が無いのだが、僕には悔やまずにはいられない。だからせめて、今この文章を読んでいる方々には、自分の様な過ちを犯してほしくない……本当に、辛い事だから、切実に。

 話を変えるが、皆さんはたまごやきと言われると一体どの様な事を連想するのだろう。「甘くて美味しい」?「辛くてしょっぱい」?いやいや、味覚の話をしている訳では無い。ちなみに僕はたまごやきには醤油派だ。異論は受け付けん。
 話を戻そう。問題は「皆さんにとってたまごやきはどのような物なのか」という事である。
——お袋の味。皆さんの中でも多くの人がこの言葉を連想したのではないだろうか。
 だが、中には「お袋の味を知らない」という人や「忘れた」という人がいる。「母の温もりを知らない」という人もいるし、「温もりなんかいらない」なんて人だっている。そんな人達に、僕は知らず知らずの内に……恋した。
 今日は、そんな話。甘くて、ちょっぴりしょっぱい、お袋みたいな温かい味。まるでたまごやきみたいな、僕と彼女達の危険で不思議で可笑しな恋の話だ。


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