ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 華麗で憂鬱な世界の為の舞台
- 日時: 2010/08/19 16:16
- 名前: 彼方 (ID: 8zzGCz7V)
- 参照: http://velesa576.blog62.fc2.com/
そこには— 『童話』があった 『神話』があった 『噂』があった
そして全ては舞台を上り
『幻想』となる—
対立する二つの組織、仕事で街に来た集団
彼らは確かに出会うはずだった
—しかし、それは全く違う方法で
「運命の歯車はゆっくりと狂いだす・・・」
というような話です
ジャンル的にはファンタジー&バトルみたいな
グロイ表現はありませんが、血はでてきますので苦手な方はご注意を
もともとコメディ・ライト小説のほうに載せてましたがこちらに移動しました
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- Re: 華麗で憂鬱な世界の為の舞台 ( No.1 )
- 日時: 2010/08/19 16:17
- 名前: 彼方 (ID: 8zzGCz7V)
- 参照: http://velesa576.blog62.fc2.com/
『童話』
昔々に聞いた話。
子供を寝せる為に作られたただの童話。
そんなにひねった訳でも無い話。
ただ子供心に怖かっただけ。
夜更かしする子、言うこと聞かないわがままな子は車(牛車だったり、馬車だったりする)に乗った商人がやって来て連れ去って何処か遠くに売ってしまうらし
い。だから連れ去られた子の家の前には車が通った後が残る
—商人の名前はルット
—顔を見たら殺される
—さらう所を見たら一緒にさらわれる
—身長が三メートル以上もある
—殺した子供を食べている
—今となって考えてみれば、バカバカしい事この上ない。確かにあの付近では、神隠しになる子供が多かった。それを利用した童話なだけで、後半は子供達の間
で流れた根も葉も無い噂だ。
レパード・ブラックはそこまで考えるとゆっくりと眼を開けた。
昼間の町中は屋台や人でうるさい程に活気づいていた。レパードはその町中の道の途中にあった木箱に腰を降ろしている。考え事をしていたはずなのだが、最近の仕事がきつかったのでうたた寝をしていたようだ。
—…懐かしい事を思い出したな。
昔に母から聞いた童話。さっきまですっかり忘れていたのに急に思い出したのは、先程から自分がいる道の向かい側の路地にいる子供達のせいだろう。
先程から怖い童話や噂話をしている。それがうたた寝状況の自分に届いて、記憶の奥底からあの童話を引っ張り出したのだ。
また眠気が襲ってきたのでうなだれてみていると
「あの、大丈夫ですか?」
声をかけられた。
見上げてみると目の前に一人の青年が立っていた。
黒い髪は顔の周りは短いがよく見れば長く、後ろで一つに結ってある。中性的な声で、顔は驚く程整っているので性別が分からなかった。
「先程から此処で座っている様でしたので、気分が悪いのかと。」
にこりと柔らかく笑うその顔はドキリとしてしまう程綺麗だった。
「だ、い丈夫です…。」
それだけ言って立ち上がれば、その人を今度は見下ろす形となる。レパード自身は確かに背が高い方に入るが、別段その人が低すぎるという訳でも無い。
男女どちらもありえる身長なのでそれで性別を判断するのは無理だった。
—まあ、身長でわかる訳もないのだけど。
とにかく急に話し掛けられたというのもあるが、自分がうたた寝をしていたのを
見られていたということに気恥ずかしさを覚えたので立ち去ろうとした。
「ありがとうございます。では。」
「あ、ちょっと待って。」
袖口を軽く引っ張られたので止まったが、止まる必要はなかったのかもなともレパードは頭の片隅で考えた。
振り向くと目の前が紅くなった。焦点を合わせれば紅い球体である。
「…リンゴ?」
「私の国ではね、林檎食べれば医者いらずっていうような言葉があるんだ。」
はい、と促されるままに差し出されたリンゴを受け取ると、その人の方から数歩離れた。
「あげるよ。そこら辺の市場で買ったやつだけど。」
そのままじゃあね、と軽く手を降ると道行く人込みの中に消えて行ってしまった。急過ぎて反応出来なかったレパードはただその人が消えて行った方向を見詰め
立ち尽くしていた。
まるで童話に出て来る妖精やその様な綺麗なものをレパードは想像した。
追っても追い付けないような
探しても見付からないような
でもいつかまた会えるような
正体を知ったら二度と会えなくなりような
そんな不思議で儚い感覚がした。
やがて我に帰ると、まずリンゴを見詰めた。そしてそのままガリリと噛み付けば
甘い果汁が口に広がる。
再び噛み付こうとしていると、不意に子供達の声が耳に届いた。自分に話し掛けて来ている訳ではないが話に耳を傾けてみる。やはり他愛もない童話や噂ばかり
だった。
レパードは先程の人とは逆の方向に歩き出しながら、またリンゴをかじった。
—根も葉も無い…ただの童話は
レパードは子供達に語りかけるように、しかし自分にしか聞こえない声でそっと呟いた。
「違う形で真実であることもあるんだよ。」
・・・・・・・・
・・・・
・・
- Re: 華麗で憂鬱な世界の為の舞台 ( No.2 )
- 日時: 2010/08/19 19:56
- 名前: 彼方 (ID: 8zzGCz7V)
- 参照: http://velesa576.blog62.fc2.com/
『神話』
昔々ギリシャのイカロスという青年は、父に作ってもらったロウで固めた羽で大空へと飛び立った。
調子にのったイカロスは太陽まで行ってやろうと、高く高く飛びつづけた。
しかし太陽に近付きすぎてその熱にロウが溶かされ、イカロスは海へと落ちて死んでしまった。
神に近付き過ぎれば地に堕とされるのだ。
—なんでこんな事になったんだろう。
スワン・サイヌスは困っていた。
そこはある暗い路地裏であった。普段人が通ることなど少ないそこで、スワンはただひたすら首を傾げてみた。
路地裏にいるのはスワン一人ではなく、彼女を取り囲むように複数の男達がいる。
—おかしいな、人探ししてるだけなのに。
少女は自分から路地裏に入った訳ではない。それは今から約数分前までさかのぼる。
スワンはただ身内の男を探していた。その時はまだ多くの人が行き交う大通りで、自作の似顔絵を見せながら聞いて回っていたのだ。
初めてくる町で身内の男は着くなり
「仕事まで自由行動!観光を楽しもう!」
みたいな事を言って行ってしまった。
もう一人の男も気付いた時にはすでに居なく、ただ一人取り残されてしまったのだった。
スワンは『ファントム』という名の集団の一人だった。探している男はその創設者でありリーダーであったが、別段何をするという訳でも無くただ集まっている
だけのものだった。今は全員の特性を活かし請負業みたいな事をやっていて、この町に来たのもその関係なのだった。
身内といっても血が繋がっているという訳でも、訳ありの家族や親戚というわけでもないので基本全員自由行動なのだ。
スワンもリーダーを探す義務など無いのだが、彼女の場合そのリーダーによって今までの生活を一変された為、自由行動といってもどうしたらいいのかが分からないのだった。
だから彼女はいつもリーダーの後をついて歩いていたのだが、そのリーダーはおろかもう一人まで居なくなってしまったので仕方なくリーダーを探していたのだ
。
その途中に彼女は柄の悪い男達に聞いたところ、知っていると言ってこの路地裏まで連れて来られたのだった。
スワンを囲んでいる男達は皆一様に下品た笑いを浮かべている。
「かっわいいお嬢ちゃんだね〜。」
「名前なんてーの?」
「おいおい、泣いちまうぞ。」
「それもいいじゃん。」
「泣かしちまおーぜ。」
口々に喋る男達にスワンはやはり不思議そうに尋た。
「あの。」
「ん?なーに、お嬢ちゃん。」
「ワタシ、この人を知ってるって聞いたので来たのですけど、どこにいるのですか?」
一瞬静まり返った路地裏に男達の笑い声が響いた。
「マジ今の状態わかってねーんじゃねーの?」
「何?馬鹿なの?お馬鹿ちゃんなの?」
「どっかの令嬢なんじゃね?」
「いや、格好は旅行客風だぜ?」
「あ、じゃあ家出娘だ。」
「いけない子〜。お仕置きしなきゃ〜。」
笑いながら男達はスワンに近付いていく。それでもスワンの表情からは恐怖の感情は読み取れない。
「えと…?じゃあ、あのカーウェイさんがどこにいるか分からないんですか?」
「はぁ?カーウェイ?誰だそれ。」
「状況わかってる?お嬢ちゃん?」
「ちょっとは嫌がろうよ。面白くないじゃん。」
「騙されてるって気付こうよ、そろそろ。」
「…騙されて…る?」
スワンが独り言の様に呟いた時、男達の中の一人がスワンの腕を掴んだ。
- Re: 華麗で憂鬱な世界の為の舞台 ( No.3 )
- 日時: 2010/08/20 17:55
- 名前: 彼方 (ID: 8zzGCz7V)
- 参照: http://velesa576.blog62.fc2.com/
「…!触らないで下さい!」
掴まれた腕がバネの様に男の手を弾く。そこで初めてスワンの表情が強張った。
そんなことでさえも面白がるように、男達は笑いながら次々と手を伸ばす。
「いや…!」
スワンはそれらの手を払いのけて逃げようとする。しかし囲まれているせいで上手くいかず、壁に追い詰められてしまった。
「カァ…ウェイさん…。」
壁に寄り掛かり縮こまるスワンは、肩を震わせながら涙声で探し人の名前を呟く。それでさえも男達は嘲笑った。
「そんな絶対こない奴なんかほっといてさ、俺らの方を見ようよお嬢ちゃん。」
「君も楽しんだ方が良いって!」
「…絶対に…来ない?」
「そうだよ。だからこっち向いてよ、おじょーちゃん。」
泣いて脅えていたハズの少女は、最後の一言を呟くと同時に震えが止まった。そんな事に気付かなかった男の一人が声と共に肩を叩いた。と、その手に鋭い感覚
が走る。
「…は?」
先に声を挙げたのは他の男達だった。一瞬遅れて肩を叩いた男の手から腕にかけて赤い線が浮かぶ。次の瞬間にはドロリと赤い液体が溢れ出た。
「っぁあああああ…!」
それと同時に痛みが駆け抜け、男は悲鳴をあげる。
「そう…ですよね。」
ぽつりと呟かれた一言で男達は少女へと再び視線を戻した。
「ワタシ一人でどうにかしなきゃイケませんよね?」
そう言って立ち上がった少女の手にはナイフが握られていた。
「いつまでも甘えてちゃあダメですよね?」
「つ、捕まえろ!」
「押さえろぉ!」
口々に叫んで男達はスワンを捕まえようとする。しかし、軽い地面を蹴る音と共に飛び上がったスワンは、軽々と男達の手をかわす。助走もあまりつけてないは
ずなのに、スワンは男達の身長さえも飛び越える。
すれ違いざまに肩や腕を切り付けているので、男達はスワンから距離をとり、無闇に襲って来なくなった。
少し遠ざかったとは言え、隙を伺いながらじわじわと近付いて来ては離れるというのを繰り返している。
こんな状況でも諦めないのは、相手が少女なのだからナイフさえ奪えばどうとでも出来ると思っているからなのだろうか。
スワンは周りの男達を警戒しながら、逃げ道を探していた。このまま一人で応戦するのは分が悪かった。しかし、この囲まれている状態では、たとえ一点に突進
したとしても止まってしまった時点で捕まるのはわかっている。
—上手くやらなきゃ、イケませんよね…。
スワンは静かに決意してナイフを握り直そうと手を動かした。
その時に彼女を気付いていなかった。派手に相手を刺した訳では無いので、流れ出る血も飛び散った血も多量ではなかった。
だが、全くという訳でもない。飛び散った血の一部がスワンの手とナイフの柄に付いていた。
そのせいで
「…あ。」
ぬるりと彼女の手を滑り、軽い音を立ててナイフが地面に落ちた。
しまったという顔で急いで屈むスワンを見て、やっと状況を理解した男達が叫ぶ。
「今だ!」
「捕まえろぉ!」
だが、そんな男達よりも先にスワンに近付いている者がいた。
スワンは気付いていたが、ナイフを落として彼女の心に隙が出来た瞬間、そいつはまだ大分あった距離を驚くべき速さで縮めていた。
ナイフを掴んだ彼女に影が被さった。ハッとして後ろを向けば、最初に腕を切った男が何処から持って来たのか、鉄パイプを振りかざして立っていた。
「さっきはよくも…このクソガキゃああああぁぁぁ!!」
目の前に迫る鈍色の物体に思わず目をつぶる。スワンは手を交差させて顔をかばった。
痛みと衝撃がくると思い身構えていたが、その瞬間は訪れない。代わりに、
「おいおい、女の子一人相手にこの人数と鉄パイプはやり過ぎだろう?」
一人の男が鉄パイプを掴んで立っていた。
- Re: 華麗で憂鬱な世界の為の舞台 ( No.4 )
- 日時: 2010/09/24 20:52
- 名前: 彼方 (ID: 8zzGCz7V)
- 参照: http://velesa576.blog62.fc2.com/
—さて、参ったことしちまったな…。どうしようか。
鉄パイプを止めたまま、クリック・ディーゼルは迷っていた。
絡まれている女の子を見て飛び出して来たのはいいが、ハッキリ言って何も考えていなかった。それどころか手ぶらで見逃して貰う為に払うような金すらない。
—いや〜、参った参った。
ディーゼルは頭を掻きながら、すぐ近くに立ち上がったスワンを見た。鉄パイプを持った男は渾身の一撃が止められた事で、ディーゼルに脅威を覚えたのか他の
男達と同じく遠巻きでいる。
だがその目からは闘志は消えておらず、隙あらばまたスワンを狙おうとしていた。
「んーと、大丈夫か嬢ちゃん?」
「あ…はい。大丈夫…です。」
何気なしにスワンに話し掛けてみれば、突然のことでほうけているのか弱々しい応えが返ってきた。
「なんだテメェはぁ!」
「オメーがカーウェイって奴か?」
いらついた声で尋ねる男達にディーゼルはふざけた調子で答えた。
「まぁ…そういう事にでもしといてくれや。」
「えっ…。」
その答えをスワンが本気で受け取ってしまったことにより、緊迫状態だった事態は再び動き出す。
「ふざけてんじゃねぇよ、オッサンがぁぁぁぁ!!」
馬鹿にされた事に対する怒りをためた男達が一斉に攻撃を仕掛けた。
それに対しディーゼルは
—ああ…本当に面倒だ。
と思いつつスワンを自分が盾になるように後ろに行かせた。
最初にディーゼルに殴り掛かろうとした男の手を取り、その勢いを借りて転がした。
いわゆる合気道を真似した物だったが、ディーゼルが合気道を修得していることも、ましてや習ったりしていることないのでモドキとしか言いようがない。ディーゼル自身も合気道とは思っておらず、何かで偶然見かけた合気道を見様見真似で自己流にアレンジした物だった。
現に相手を転がすのだって半分は力で無理矢理やっている。その為合気道で見るような相手が綺麗に回転するという光景も、地面にたたき付ける様な荒々しいものになっている。
一人目を転がし、それにつまづいた二人目を踏み付け、そのまま体を捻って三、四人と倒していく。
「俺は…!」
起き上がって来そうだった一人目の頭を踏み付け地面にキスをさせ、そのまま前にいた五人目の顎を蹴り上げる。
「面倒な事は…!」
無防備になったところを殴り掛かってきた七人目をギリギリで避け、腕を取り合気道で転がされると身構えたところで、クルリと体を反転して無理矢理背負い投げをした。
むろん、これも柔道モドキであるし、力任せであった。
「嫌いなんだよ!」
言葉と共に七人目を地面に叩き付けた。
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