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合間に短編
日時: 2010/08/27 12:33
名前: agu (ID: zr1kEil0)

最近、スランプなaguです。
どうもまともな文章を書けなくなりました。

リハビリとして短編でも執筆しようかと思います。



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Re: 合間に短編 ( No.1 )
日時: 2010/08/27 12:33
名前: agu (ID: zr1kEil0)

【ある兵士の日常】













目の前にはただの瓦礫と化したドイツ軍戦車が置かれていた。
私はそれを凝視し、ある記憶を甦らせる。









戦友が火炎瓶を投げつけようと、戦車に走る。

モロトフ・カクテルと呼ばれたそれは、戦車には無力かもしれなかったが
対戦車兵器がない以上、使う武器はこれしかない。

燃料タンクにでも当れば発火するだろう、そんな安易な考えだった。


彼は走る。
戦車は気づいていない。もう少し近づけば、カクテルは確実にタンクに直撃するだろう。

成功の時は着々と近づいている、私にはそう思われた。

しかし、戦の女神は残酷で意地が悪い事を、我々は失念していたのだ。


突然、上部ハッチが開かれた。そこから出てきたのは、サブマシンガンを構えた戦車搭乗員。
咄嗟の事で戦友は反応できなかった。彼はマシンガンを近距離で乱射され、蜂の巣になった。

私は一瞬硬直したが、すぐにモシン・ナガンM1891/30ライフルを構えると、ハッチから出てきた敵兵に向かって発砲した。
運が良い事に、発射した弾丸は敵兵に命中したようだった。そいつはバタリと倒れ、動かなくなった。

数秒が経つと、他の搭乗員が事態を把握したのか、戦車が動き出した。
車体の方向が変えられ、私が潜伏している二階建ての家にその砲塔を向き始める。

危険だと感じた私はすぐにモシン・ナガンを小脇に抱えると、一階への階段を急いで降りる。
その途中、凄まじい轟音と揺れが私に襲い掛かる。

身を崩した私は尻部から階段を降りることになった。

事態を把握する為に、周囲に目を巡らす。
私が先程までいた2階には粉塵が漂っていた。恐らく砲弾が直撃したのだろう。
あそこにいたら私の身体はバラバラになっていたはずだ。

一階に降りた私は、逃走経路を確認する。

玄関からは論外だ。戦車と正面で鉢合わせすることになる。
それなら窓か、もしくは裏口か。

裏口から脱出するとなると、一階の居間を通らなければならない。
居間は戦車がいる方向に面している。危険だ。

そう判断した私は、近くの部屋に入ると、窓をモシン・ナガンの銃尻で叩き割った。
そこから身を乗り出し。外へ出る。

直後、二度目の衝撃が私を襲った。

恐らく、戦車が二度目の砲撃を行ったのだろう。
私はたまらずに疾走した。

家が壁となって私を覆い隠してくれる。敵戦車はこちらの逃走には気づかないはずだ。

私はがむじゃらに足を動かし、その場から離れようと必死になった。
雪原に足を取られながらも、とにかく走る。

あの特徴的なキャタピラ音が背後から聞こえた。

私は後ろを振り返る。

そこにいたのは、あの我が戦友の命を奪った鉄の化け物だった。
奴は砲塔をこちらに向けている。嗚呼、私も同じ運命を辿るのか。

その時だった。

凄まじい爆音とともに、私の前方にいた戦車が吹き飛んだのだ。
何事かと辺りを確認して見れば、少し遠くに味方のT-34中戦車が確認できた。

彼らが私を救ってくれたのだろう。初めてあの鉄の塊に口付けしてもいいと思った。










戦況は優勢らしい。
コンスタンチン・ロコソフスキー元帥率いる第16軍がドイツ第6軍を逆包囲したらしかった。

喜ばしい事だとは思う。
ただ、最も私が望む事、それは戦争の終結だ。

家に帰って、気立ての良い妻と、少しやんちゃな娘と平和に暮らしたい。
いつもそれを夢見ている。



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