ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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クロイロエンジェル
日時: 2010/08/30 18:55
名前: 波 (ID: 7GPkHSud)


どうも^^

このシリアス・ダークの投稿は初めてとなります。
どうぞ温かい目でご覧ください。

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第一章 黒い少女 ( No.1 )
日時: 2010/08/30 19:03
名前: 波 (ID: 7GPkHSud)




———少女は人の波に流されない。



たとえ人の波に逆らっても
少女は誰にも見られない。

心に留められない。

少女は黒という色をまとっているのにもかかわらず
うまく目立たずにいた。




少女の周りでは事件が起こる。



とてもとても小さな争い、出来事、悩みが・・・。


大きな世界では取るに足らないその事件。
しかし個人にとっては大きな事件。




少女は歩く。

ソレに気づくために。



第一章 黒い少女 ( No.2 )
日時: 2010/08/30 19:13
名前: 波 (ID: 7GPkHSud)



少女の名前はリノ。




美しい黒の容姿と紅の瞳を持つリノは
まるで闇の女王のよう。

影に生き、光の中ではさして目立たない。



しかし
いつかは闇に葬られてしまう永遠の思想を
リノは捜し求める。


自分に足りないアルモノがわからないから・・・。
それを探したいから・・・。




「———あれ?」




リノは倒れている若者を見つける。




誰にも見られず、ただ地面の障害物と化している
若者を・・・・・・・・。



第一章 黒い少女 ( No.3 )
日時: 2010/08/31 22:57
名前: 波 (ID: 7GPkHSud)



「———どうしたの?」


リノは倒れている若者に声をかける。
すると若者はそのやせこけた顔を上げた。

「食べ物・・・持ってませんか?腹が・・・・うぅ・・・・。」

そして若者はまた顔を伏せた。

「・・・ちょっと待ってて。」

リノはその辺のコンビニに買い物に出かけた。
そして5分ほどで帰ってきた。

「食べて。」

リノは若者におにぎりを差し出す。

若者には笑みがこぼれ、すぐにそのおにぎりにかぶりついた。

「ほんっとにもうっ・・・。すまなかったね。・・・アハハハハ。君のような女の子に救われるとは・・・。」

「気にしないで。」

「ありがとう。感謝するよ。君、名前は?」

「———リノ。」

「リノちゃんか・・・。僕はホームレスなんだ。今のニホンには僕みたいな人達が溢れてる。僕は幸せだ。リノちゃんに救われた。」

リノは肩までの黒髪を耳にかけた。
そして若者の目を見る。

「あなたは?」

「ん?」

「あなたの名前・・・。」

「あ、えっと・・・。ケンイチだよ。よろしくね。」

「よろしく・・・、ケンイチさん。」

リノは他にもコンビニで買った袋をケンイチに差し出す。

「ありがとう。優しいんだね。今のニホンも捨てたもんじゃない。」

「優しさではありません。富を持つ者の義務だと思っている。」

「あははは。おもしろいことをいうね。」

「・・・おもしろいか?」

するとケンイチはリノの手を握った。

「僕の話を・・・・聞いてくれるかい?」

「・・・・。」

「ずっと誰かに聞いてほしい話があるんだ。」

「・・・・どうぞ。私は何も。」

「ありがとう・・・。」

ケンイチは深呼吸をした。
そしてリノの手を離す。

「実はね、僕には妹がいる。3つ離れた妹だ。名前はアヤカ。僕達は力を合わせて生きていた。」



第一章 黒い少女 ( No.4 )
日時: 2010/09/01 23:25
名前: 波 (ID: 7GPkHSud)


「———僕は今23歳なんだけど、妹は19歳かな?いなくなってしまったのは2年前だ。いきなり現れたヤクザに連れて行かれた・・・。」

「・・・・それで、あなたはどうしたの?」

「何もできなかった。僕達には何かをする力がなかったんだ。」

「・・・今でも心配してる?」

「ああ。してる・・・・。」

リノはケンイチの持っている箱を見つけた。

「・・・食べるかい?この前まで働いていた所の箱菓子クッキーだ。まだ賞味期限もすぎてない。」

「・・・うん。」

リノはケンイチの話をクッキーを食べながら聞き始めた。

「今の警察は何もしてくれない。ヤクザを見てみぬふりさ。」

「・・・・・ひどいんですね。」

「ああ。でも・・・もう諦めかけているんだ。」

ケンイチの顔が沈んだ。

リノをそのケンイチの顔を見るように少しかがむ。

「まだ妹さんが生きていると信じてますか?」

「———・・・ああ。」

後ケンイチ何も言わなかった。
察しているのだろう。

今のニホンのヤクザは女の弱みを握り、それを利用するだけなので殺しはしないと聞いたことがある。

奴隷まがいにしているのだとも聞いたことがあった。

「———モグモグ・・・。」

リノは能天気にクッキーを食べている。
その顔は満足そうだ。

「昔のニホンは・・・————」

ケンイチは何かを言いかけた。

「————もっと明るい社会だったらしい。」

リノはクッキーをポケットの中に入れて話を聞く。

「今の2XXX年から○年前、西暦・・・2007だね。明るかったってさ。婆さんの婆さんが言ってたんだって。」

「かなり昔ですね。確か・・・平成でしたっけ?」

「ああ・・・。ああ、一回でもいいから昔に行ってみたい。」

「・・・・・・。」



リノはスクッと立ち上がった。

「クッキーご馳走様。おいしかったです。」

「それはよかった。」

「お礼は・・・また今度会いましょう。」

「ああ。僕はいつもここにいるよ。」

リノは黒いスカートをひるがえし、ケンイチに背を向けた。

「妹さん、無事だといいですね。」

そしてリノは歩き出した。




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