ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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父の形見の鋏、
日時: 2010/08/30 22:59
名前: 美純 (ID: n8dA/zGw)

 今宵も寒さに風が舞う日に、

 綺麗な乙女の小雪さんは

 気立ての良さと確かな腕前で

 
 依頼された絹の布を、

 自慢の機織り機で織る。



 そんな彼女の宝物は、

 今は亡き父の布きり鋏。

 これで完成した布を切り裂く



 憎たらしくて愛しいあの人へ




 依頼してくれた、

 感謝に少しおすそ分けよ

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Re: 父の形見の鋏、 ( No.1 )
日時: 2010/08/30 23:00
名前: 美純 (ID: n8dA/zGw)

  登場人物

* 小雪 ♀

* あの方 ♂

Re: 父の形見の鋏、 ( No.2 )
日時: 2010/08/30 23:18
名前: 美純 (ID: n8dA/zGw)

「・・・・上手く出来てるねぇ、小雪ちゃん」

「まあ、嬉しいです。
 とても良く、お似合いですよ」


 そんなの一つも思ってないのに言う、

 この得意先の奥様は存在自体が苦手だ。

 何か褒めないとすぐにお供の人を理不尽に

 怒鳴り散らしたり、嫌がらせに皮肉を言うし

 それに。


「・・・まあ、あのお方だわ!
 うぅんー、格好が良いわァ
 私の旦那はむさ苦しいし、
 あのお方と夫婦になれたら。
 あははは、小雪ちゃんったら、
 もう、変な事を言わせないでよ、
 —— 恥かしいじゃないのぉ!」


「あらやだ、奥様ったらァ」


「じゃあ、この絹を貰うわすわね、
 ううん、とても良い香り、だわ。
 小雪ちゃんの匂いにソックリねぇ」



 散々勘違いした挙句に帰った、

 長話に世間話に噂に愚痴を聞くのは

 とてもとても、時間の無駄なのにね。


 ハァ。大切な時間を無駄にしちゃった、

 まあ、早くあのお方に逢いに参りましょう

 

 店を出ると肌寒かった、

 今年の夏は異常に冷夏だから

 お米がまた、値上がりしそうね。


 ふと考え事をしながら歩いてたのか

 目の前のあのお方に気づかなかった。



「あら・・・・・奥様?」



 あのお方と長話をしており、
 
 いつもとは違う笑顔に愛想良く

 あのお方の傍へ厭らしく寄り添ってた




 —— おやめになってくださいまし





 動けない。ああ、如何する。

 私は悔しくなり、その場を、

 不本意に離れてしまったのです

Re: 父の形見の鋏、 ( No.3 )
日時: 2010/08/31 11:04
名前: 美純 (ID: n8dA/zGw)

 その夜、9月になった所為か肌寒い

 それはそうと。奥様を探さなきゃ

 何処かしら、早く店に帰りたいのに


 街をさ迷い歩きながら、

 しばらく奥様を探してると



「・・・あら、小雪ちゃん?」


「奥様。偶然ですね、」


「そうだね。聞いてよ、うちの亭主が・・・」


( グザッ— )


 急に奥様がお腹を抱えて苦しみ始めた、

 血は地面に流れ落ち、海を作り出す。

 私は気にもせずに、再び腹に目掛けて刺す



「・・・なっ・・・・」


「あの方と気安く喋らないでくださいまし、
 ・・・んもう、あの方もあの方ですよぉ
 私という代わりの女がありながら、
 他の人達とお喋りをするだなんて・・・・・」


「・・・あんた、何を言って・・・・」


「とりあえず、死んでくださいまし」




 私はすぐに現場を離れたのです、

 何故なら憎き人と長くは居たく無いですし



 翌朝になると街中が大騒ぎ、

 街を歩いてると隣のお柚ちゃんが




「小雪姉さん、聞いた?
 あの一軒の奥様がァ・・・・」


「えぇ、聞いたわ。・・・驚いたわよ、
 でも、何で奥様が殺されなきゃいけないの?」


「お上の話だと、辻斬り魔だとか。
 だからなのか、夜はなるべく外出するなと」


「そうなの、ありがとう。」


「姉さんも気をつけてね」



 私はお柚ちゃんと別れた後に、

 用件を思いだし、お柚ちゃんを探すと



「・・・・・お柚ちゃん、」



 笑顔であの方とお喋りをしている姿が、

 手にはあの方が差し上げられたと思われる

 風呂敷の包みを持ち、あどけない笑顔で笑う。




 —— 好きだと言ったはずなのに




 ふざけないでちょうだい。

 まったく、私の周りの人には、

 もっとマシなお方は居ないのかしら




 私はその場を後にした。


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