ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム)
日時: 2010/09/02 20:45
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

どうも、こんにちは。神酒 理と申します。

えー、「ミサイル。」も書かせていただいています。はい。

本来この小説は「コメディ・ライト小説」のほうにあったのですが、どう見てもシリアスにしか見えないので、こちらに移動しました。

温かい目で見ていただけるととても嬉しいです。

コメントも走る勢いで嬉しいです。。。
では、よろしくお願いします。

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Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.2 )
日時: 2010/09/02 20:47
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

【こんにちは。ようこそ、完全創造世界へ。この世界では貴方の創造した物事が現実として体験できます。それでは、ごゆっくり自分の世界をお楽しみください。】


エピローグ①

この世界は、実につまらない。

君もそう思わないか?
『日常』というものは常に私達から『自由』という生き甲斐を奪い去っていく。
そんな害虫のような存在の中で、君は何を望んでいる?
医者になりたい?教師になりたい?歌手?漫画家?芸能人?
ちょ、ちょ、そんな嫌な顔することじゃない。
別に私は君の夢を否定するつもりじゃない。
いや、君は単に私の事を「変なおじさん」と思っているだけか?そうなのだろう?
まあいい。実際そのような者だしな。
だが話は聞いてもらう。

さて、もう一度話に戻ろう。
この世界は実につまらない。君もそう思うか?
君が否定してしまったら、この話は成り立たないんだがな。
そうなんだろう?藤原 遊樹(ふじわら ゆうき)。
君がこの一連の『事件』の引き金だ。

訳の分からないって顔しているな。
無理もない。
私はそれを説明しにきたんだからな。

君が創った、【世界】という兵器の存在をな。


プロローグ① 僕の創造した世界【ルームNo,431】

2023年 9月 日本 真窮都 元新宿区 某所

「まいったな……。」
 パソコンと向かい合った、黒髪の少年は呟いた。

 ビルが立ち並び、水晶の様な澄んだ空をお互いに映し合っている。太陽は光を弱めながらも、都市を照らし出していた。
 よく磨かれた硝子とシンプルな白い剥き出しのコンクリートの建造物がひしめき合っているが、その清楚な印象は見た者に不快感をまったくあたえない。

 時は2023年、地球温暖化の影響を何とか免れた人間達が、自然と人類が一体となる事を目標とした都市開発時代だ。
 誰もがあの地獄のような『自然』の恐怖を体感した今、誰も自然に対し、貴重な国宝のように扱った。だが、その結果は自分たちの首を絞める……つまり、自分達『人類』ことはほったらかしになり、『難民』と増やすという結果になってしまったのである。
 「今、朝顔の種が不足しています。肥料のために食料の50%を削ります。」
という、不都合極まりない法令が下されても、
「自然のためならば、よろこんで!」
という回答が返ってくる。つまりは、そんな時代なのだ。
 そんな時代の中で、人間が自分たちの『不満』を解消するために手を出したのは———『脳内操作』
 現実では満たされないものを、自分達の思考をいじって、あたかも満たされたように錯覚させることだった。やがてその行為は自分達の脳に「記憶障害」「感覚障害」あるいは「発狂」という結末が廻ってくるということを知りながら、それでもなお、やめられなかった。
 『人類』は自ら自分達に『制裁』を下すことを決めたのだった。

 しかし、そんな時代の中でも、やはり反感を持つ『青年達』は存在するのだった———……。

Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.3 )
日時: 2010/09/02 20:48
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

「いや、本当にどうしよう……。」
「どうした。」
「どうしたの?」
「……何か問題でも……?」
「ゲームオーバーでもしたか?ハハハッ」
「フリーズした。」
「マジか。」
「そんなに閲覧者いたの?」
「いや、わかんないけど……。」

カタカタ カタカタカタタタ カタリ

 リズミカルな音と共に、携帯電話の通話口に向かって言葉をつむぐ黒髪のひ弱そうな青年。
 青年がいる部屋はいかにも学生、というようなデザイン的な部屋である。
 色彩は白と黒で統一され、シンプルなイメージが訪問者に良い印象を与える。
 天井に空調も取り付けてあり、観賞用の植物も2,3個置いてある。
 部屋の主に似合わず、部屋の物は堂々としており、荒れていないことから一人暮らしで、かなり几帳面なことが感じ取れる。
 そんな部屋のメインデスクにノートパソコンを広げ、右手に携帯電話を持ち、左手でパソコンの不調の原因を探るという器用なことをやってのけている青年は、部屋に浮かぶことなく『異質さ』を周囲に振りまいていた。
 その『異質さ』は———言語。
「ええっと……どうなっているんだろう……。」
「大丈夫か?」
「こっちからもアクセスしてみようか?」
「……もしよければ……今から行くけど……。」
「ハハハッ!死亡フラグ立ちまくりだな!ハハハッ」
「ふざけてる場合じゃないよ。もうちょっと待ってね……。」
 普通の会話だが、しかし、相手となっている人間は、一人ではない。複数の人間と一つの回線で繋がり、それを聞き分け、なおかつまったく違う言語、イタリア語、中国語、英語、スペイン語を相手にあわせて喋っているのだった。
「ああ、えっと……ごめん。リコ、今から僕の部屋に来れる?」
「……了解……。」
 リコと呼ばれた綺麗な英語を発する電話の相手は、短くそう答えると回線を切った。
「あーあ、いつでも遊樹はリコを頼るんだから。」
「ごめんよ。リファ。」
 中国語を発する女性と思しき声———リファは、「ううん。」と明るく答えると弾んだ声で言った。
「いいよ。だけど、フリーズした原因はちゃんと報告してよね。」
「わかったよ。」
 そう黒髪の青年———藤原 遊樹が答えると、一斉にして回線がぶつりと切れた。その音量に意識もぶつりと切れそうになったが、何とか持ちこたえた。
「何でリファと一緒に皆切るのかな……おかげで頭が痛いよ。」
 遊樹は右手で頭をおさえながら、自分の仲間、リコが来るのを静かに待つことにした。

Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.4 )
日時: 2010/09/02 20:48
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

プロローグ② ビジネスマンは事件を引っ掻き回す【ルームNo,873】

 まったくもって、つまらない世の中だ。
 事件の一つも起こりやしない。
 だが、おれはこの世の中を愛してる。
 言ってることが矛盾している?
 黙ってくれ。お前に興味なんかない。
 おれは『世界』を愛しているんだ。
 お前達『人間』じゃない。
 何も喋るな。お前達なんか大嫌いだ。
 
 さて、これからすごいことが起ころうとしてる。
 この『事件』が広がれば、おれは『世界』を純粋に愛することができる。
 フフフフフ
 フハハハハハハハハハハハハハハ
 アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.5 )
日時: 2010/09/02 20:49
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

プロローグ③  天才ハッカー夫婦は駄弁り歩く【ルームNo,068】

「なあ、お前はダイハード4を見たか?」
「黙りなさい。地球上の貴重な酸素がもったいないです。」
「あのCPを使った爆発術は正直惚れるね。押したとたんに、ドカンッってな!」
「さっき貴方が踏んだマンホールが地雷だったらよかったのに。」
「それにしても、ここは人が多いな。うじ蟲の様だ。」
「早急に口をつぐみなさいゴミ蟲。」

 混沌とした会話。二人の男女がお互いに密着しながら、意味のない会話を続ける。
 二人の姿だけ見れば新婚したばかりの仲睦まじい夫婦に見えるが、男女の表情は、正反対だった。
 男の顔は、疲れて半開きの目を浮かべ、今にも過労死しそうな表情をしているが、彼の言葉はどこまでもはっきりと、大きく芯の通る声でどこまでも明朗で前向きだった。
 しかし逆に女の顔は、その表情は幸せの絶頂期にあるかのような、聖母の笑顔であり、綺麗なブロンドの髪がボブカットにより優しく顔を包み込んでいる。だが、彼女の言葉は、聞いた人間に不快感を与えるような内容と、消え入りそう声だった。

 そんな奇妙な二人が駄弁りながら、町を徘徊する。
「ああっは!見ろよ、エルジュ!!人間が空を飛んでるぜ!!」
「二酸化炭素を吸って酸素でも吐き出しなさいな。」
「ほらほら!本当だってば!ほら、黒髪の……ありゃ学生か?跳ね飛ばされたみたいにぶっ飛んでるぜ!!」
「貴方が車に撥ね飛ばされればいいのに。そうしたら、世界も少しは楽になるでしょうね。」
「あ、落ちた。なあなあ、行ってみようぜ現場!!」
「一緒に行く時間があるなら、仕事の一つでも片付けなさい。ジョゼ。」
 そうは言いながらも、一緒に現場に駆けていく男女———ジョゼとエルジュは、野次馬達をかきわけ、現場の最前列にたどり着いた。
 うつ伏せに倒れている青年は、おそらくは15歳前後だろう。全体的に体は細身だった。服装はそこらの高校生の私服、黒のパーカーにジーンズをはき、体に対して異様なほど大きな鞄を肩からかけていた。顔は倒れていて分からなかったが、黒髪の短髪であった。日本人だろうか。

「おい、大丈夫か。しっかりし……。」
 ジョゼは青年を抱き起こそうと手を差し伸べたところで、静止した。
「どうしたの。ジョゼ?」
「ああ、エルジュ。こいつは関わらないほうがいい。」
「?」
「俺達のようなハッカーが、こんな奴に触っちゃいけないんだ。」
 そんな夫の言葉にますます混乱するエルジュは、ジョゼの隣にしゃがみ、その青年をまじまじと見た。だが、どこからどう見ても、ただの学生にしか見えない。その様子を見て、ジョゼは脂汗を浮かべながら、ゆっくりと言葉を———『真実』を口にした。

「こいつは……ネット上で指名手配されている、『脳内殺し(ブレーンブレーカー)』っつー、天才科学者だ。」

Re: ようこそ、完全創造世界(パーフェクトプログラムルーム) ( No.6 )
日時: 2010/09/02 20:49
名前: 神酒 理 (ID: QCkuis7p)

第1話 事の発端α『7:3』【ルームNo,294】

「やあ、久しぶりリコ!」
「……はい、久しぶりです……遊樹先輩。」
 そうぼそりと呟きながらもリコの表情は、嬉しさの光で満ちていた。
 玄関のドアを閉めながら、こちらに笑顔で近づいてくる自分の大切な先輩———藤原 遊樹の姿を見て、リコは少しだけ微笑んだ。
「リコが笑ってくれたね。そんなに僕のこと心配?」
 リコはコクリと頷く。その様子を見て、少しだけ遊樹は哀しそうな笑みを浮かべる。
「僕は大丈夫。そんなに心配されると、その、かえって……プレッシャーになるからさ。あんまり、心配しないでね。大丈夫だから。その……ごめんね。」
「……はい、わかりました。」
———先輩はやっぱり、口下手だなぁ……。
 そんな惚気た事を思いながら、リコは遊樹の淹れた紅茶を飲みながら、フリーズしたという遊樹のパソコンを見ていた。
「……先輩。」
「ん?何?」
 そう言って、パソコンを覗き込む遊樹。
 今の光景を見ていると、仲の良い兄弟と間違えてもおかしくない。そう、この二人は、そんな和やかな雰囲気を自然に周りに振りまいているのだった。
 だからであろう。遊樹の周りに国を超えて、多くの人間が集まるのは。

「……やっぱり…外部からの同時大量アクセスが…問題じゃないかと思います。」
「そうなの?ごめん、ありがとう……ってああ!!!」
 いきなり大声で叫び立ち上がる遊樹に、リコは少し身を引いてしまう。
「どう…したんですか……!?」
 顔をばっとこちらに向けてくる遊樹。その目には若干光るものが。
「どどどどどどうしよう……!リファが『そんなに閲覧者がいたの?』って聞いたとき、僕『違う』って堂々と言っちゃったよ!!原因伝えたらおおお、怒られちゃうかも……!!どど、どうしよう!謝らなくちゃ、リファに謝らなくちゃ…。」
 顔を手で覆って床を転げまわる遊樹を、リコはどうしていいかわからず、ただあたふたするのみ。しまいには、床で縮こまりすすり泣いてしまう遊樹を慰める者はいなかった。
———どうしよう。先輩は泣き始めちゃったし、パソコンは強制終了するとデータ消えちゃうし……。
 救いを求めるように遊樹を見るが、相変わらず此処にいないのにリファに対する謝罪の言葉を呟きながら泣いている。
 しかも、運が悪いことに携帯電話は家に置いてきてしまった。
———せめて、先輩が泣きやんでくれれば……。
 そう思い、リコは人生で一度も経験したことのない『先輩を慰める』ことをしようと決心したのだが———

ガコンッッ

 歪な音が聞こえたかと思うと、窓の外がにわかな喧騒に包まれ始めた。


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