ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Spring tails
- 日時: 2010/09/05 22:03
- 名前: 小雪 (ID: wX2Rt5qU)
プロローグ
———願ったことは無かったか?
世界が、1日にして自分の都合のいいように改変されはしないかと。
『幸せ』を自分の力で手に入れたいと。
俺にとっての幸せってなんだったんだろう。
今でもわからない。
そもそも幸せって何なのか元を正したら、多分答えはどこにも載ってないんじゃないかと思う。
それは辞書にものってはいない。
うわべだけの答えなら、どこにだってのってるさ。
幸せを捕まえようとしたら、いったいいつになるんだか分からない。
それでも人々はそれを追い求める。
でもそれがどこにあるのか、俺は分かった気がする。
それはとても身近にあって、『レア』なものなのかもしれない。
俺は気づかなかった。
あいつらに、逢うまでは。
あいつらがくれたものは、とても大きくて、目に見えない、大切なものだった。
でも、そこに辿り着くには、たくさんの悲しみと儚い思い出が待っていた。
そうさ、自らが犠牲になってまで助けたいと思ったこと、初めてだった。
くじ引きの一等の確率なんて分らない。
抽選で懸賞が当たる確立なんて知らない。
知らないからこそ怖かった。
それが分った時。
俺は出逢った。
その日は、記録的な豪雨。
真冬の寒空、あいつは毛布にくるまれて倒れていた。
公園の、ブランコの下… … …
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- Re: Spring tails ( No.1 )
- 日時: 2010/09/05 22:04
- 名前: 小雪 (ID: wX2Rt5qU)
1章〜オトシモノ〜
その日は、近年希に見る豪雨。
今は12月まっさかり、クリスマスをまじかに控えているじょうたいだ。
そんでもって俺は下校途中。
いきなりの雨。
朝の天気予報では晴れるといっていたのに、だ。
まあ、天気予報なんて一度も信じたことねぇけど?
無論傘なんてもってないし、迎えに来てくれる保護者もない。
… …おっと、自己紹介が遅れたな。
俺の名前は佐藤薫。現在中二の14歳だ。
小さい頃に父親がぽっくり逝っちまって母親は毎日夜遅くまで仕事。
…ということで。
俺は自立するしかないわけだな。
しょうがない、止みそうにないから帰るか。
そうやってしばらく歩くこと数分、家の近くの曲がり角にある公園を脇目に走っていると、何か人的なものが目に入った。
「… …ぇ…?」
ずぶぬれになっているのも忘れ、『それ』近づいてみると、俺は我が目を疑った。
そこには、一人の少女が、うつぶせに倒れていた。
「… 落ち着け」
ちょっと待て、こいつは、人間なのか?
人間に、猫耳と猫のしっぽなんて、生えてない!!
俺はとうとう目がおかしくなったのか。
ははっ。
そうだ、俺はおかしくなったんだ。
薫は恐る恐る少女の猫耳を引っ張ってみた、が。
どうやら、本当に、生えているようだ。
「…ッ!!」
屈みこんで抱き上げようと少女に触れる、そのとき。
何か嫌な感じがした。
関わってはいけないような。
だが薫はどうでもよくは… …ならなかった。
少女を抱きかかえ、無我夢中で家まで走った。
俺、何してんだ…俺は普通に学校から帰ってただけなのに…!
嵐のように家に飛び込み自分の部屋へ猛ダッシュ。
もう、どうにでもなれ!!!
無造作に押入れから布団を引っ張り出すと、布団をしいて少女をねかせた。
床に直に置かないところ、几帳面なのかもしれない。
『非』日常とは…ときに、無情だ。
夢は人に希望をくれる。
だが逆に、想像を超えた夢は、描いた者に悪夢を見せる。
俺はこの日、『オトシモノ』を、拾った。
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