ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ハッピーエンド
- 日時: 2010/09/10 22:03
- 名前: chune (ID: 84ALaHox)
大陸一の大国、リメンダと、小国でありながら指導者「メイ」の力によって力をつけているイベロの戦争は、周辺の小国も巻き込み、もはや大陸内に真の安寧など存在しないように思われた。
戦火はおさまるどころか、日に日に拡大していった。多くの民が命を落とし、多くの民が憎しみにくれていく……。
誰もが強さを渇望していた。
そして、ここにもまたひとり……。
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- ◇1 ( No.1 )
- 日時: 2010/09/10 22:30
- 名前: chune (ID: 84ALaHox)
広間には何人もの屈強そうな人間が集っていた。その圧倒的な存在感は、いくつもの修羅場を想像させる。男がほとんどだったが女もちらほらいるようだ。だが猛者たちもまた、豪華でありながらどこか陰鬱な屋敷の雰囲気に身震いしていた。なんといったって、ここはかの有名な「吸血伯爵」の屋敷である。何が起ころうと、不思議ではない。
その中で一人、背中を丸めて不安げに集団を見つめる少年がいた。レイという。レイは英雄になることをのぞみ、村から出てきたばかりの少年だ。英雄になる第一歩、として吸血伯爵の屋敷にやってきたが、ほかの人間は自分よりずっと背が高く、筋肉があり、レイには自分の体がとても情けなく恥ずかしいものに思えた。
そんなレイの心を察したのか、鎧をまとった青年がレイに声をかけた。
「どうしたんだ。なぜそんなに怯えている?」
低いがやわらかな声音にレイはほっと肩をなでおろした。顔こそ見えないが良い人であるようだ。レイはできるだけ小声で、憂鬱そうに答えた。
「俺、強くなりたいって思ってここにきたんだけど、ほかの人を見てたら自信がなくなって……」
いうと、鎧の青年はなにか考えて、妙案を思いついたようにレイの肩をたたいた。
「なに、きみはまだ十代だろう。焦ることはない。だが、どうしても強くなりたい、旅をしたいと願うのならば、パーティーを組むことだ」
レイは首をかしげた。すかさず鎧の青年が補足する。
「仲間を作る、ということだ。一人旅はなにかと不便だからね」
「でも、俺、自分から話しかけるなんてできないよ」
そういうと、青年は待ってましたといわんばかりに笑い声をあげて、広間の奥のほうを指さした。指の先には談笑している猛者たちが何人もいた。あれがパーティーなのだろうか、とレイが考えていると、青年が話はじめた。
「あそこに、いかにも不器用そうな男と、少女のパーティーがいる。そこにいれてもらうといい。できれば、話しかけるなら少女にしておけ」
レイはもう一度広間の奥を見た。壁にかかっている女性の肖像画の近くに、たしかに二人組が見えた。
「ありがとう。でも、あんたは?」
レイが聞くと、青年は困ったような笑い声をあげて、ごまかしてしまった。気になって仕方がなかったレイだが、その関心はすぐに青年から反れ、重い扉からもれるギィギィという音が広間に鳴り響いた。
- Re: ハッピーエンド ( No.2 )
- 日時: 2010/09/12 12:59
- 名前: chune (ID: 84ALaHox)
その瞬間のことであった。暗い鉛の空から一筋の閃光がはしり、すべてのあかりが消えて、広間は完全な暗闇に支配された。
レイは突然のことに大声をあげそうになったが、それは青年の手によってはばまれた。驚いて青年の腕をつかむと、青年は小さな声で「静かに」とレイに言った。レイは恐怖のあまり震えることしかできない。広間には怒号と悲鳴がとびかっている。
──その中で、レイは不思議な音を聞いた。言葉で言い表すことなどできそうにない、それは不思議な音。音は次第に大きくなっていき、もう限界だ、とレイが考えるのとほぼ同時に、はじけとんだ。
それを境に広間は静寂に支配されている。不気味なほどの静寂と暗闇に、レイは言葉を失っていた。今までちっとも信じていなかった吸血伯爵の伝説が、急に現実味をおびてきている。
あかりがつくと、さらにレイは驚愕した。
「……すくない」
あきらかに、あかりがつく前とでは人の数が違っている。さらに、あれほどのパニックがあったとは思えないほど、広間はなにもかわっていなかった。残った旅人の顔をみたが、旅人たちはなにもなかったかのように平然としている。レイは恐ろしくて、もう一度青年の鎧を強くつかんだ。
とちゅうです。
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