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- BLACK PARADE
- 日時: 2010/09/27 10:27
- 名前: くろ (ID: PJWa8O3u)
※すべてフィクションです
20XX年
"日本と呼ばれて居た"国
2013年以降、政治経済の破綻で
大不況に陥った日本は、
各地で不満を爆発させた人々による暴動が起き
強盗、殺人諸々の犯罪であふれていた。
人々は職を失い、家族、友人を失い
希望をも失った。
そして、各国との友好関係を絶った2020年。
世界地図から日本が消えた。
—BLACK PARADE—
>>1 第1話 パンテラス
>>2 第2話 "ただの子供"
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- Re: BLACK PARADE ( No.1 )
- 日時: 2010/09/24 04:30
- 名前: くろ (ID: PJWa8O3u)
BLACK PARADE
パンッ!!
銃声が響き渡る路地裏。
ゴミ箱を漁っていた野良猫が、驚いた様に顔を上げ
そのまま逃げ出していった。
「あッッぶね!!」
ザッ…!
ソールは剥き出しの肩を、硬いコンクリートの地面に引き摺った。
おかげで銃弾から逃れることはできたが、
灰色のコンクリートに赤い線が走る。
「…ちっくしょ…」
ソールは一旦崩れかけた壁の後ろに隠れ
擦れたジーンズのポケットを弄った。
現在午前2時37分
今夜は大きな満月が、闇夜を照らしてる。
ソールはもう予備の銃弾が無い事に気付き
小さく舌打ちをすると、ゆっくり壁の影から出てきた。
満月を背に立つソールに、
追いかけてきた男達は思わず魅入ってしまった。
あまりにも美しい、のだ。
ソールの白い肌とブロンドの髪は神々しく月明かりに照らされ
グリーンの瞳が夜に揺らめいている。
なんて美しいのだろう。
思わず男達は銃を構えていた姿勢を崩してしまった。
ソールはその隙を見逃さず、
強く地面を蹴って飛んだ。
男達の頭上を飛び越え、反対側に着地する。
そのまま弾切れの銃の銃口を持ち、一番手前に居た男の頭を持ち手でガツン、と殴った。
ズサリ、と男は力なく地面に倒れる。
「…まだまだこっからだぞ…」
まるで豹だ。
その美しい姿からは想像の付かないような
秘めた力と凶暴性を持っている。
残りの3人の男達の額から、嫌な汗が流れた。
第1話 パンテラス
"日本と呼ばれて居た"国
—東京区
其処は少し寂れたものの、以前と変わらない喧騒に包まれている。
変わったのはその喧騒に、銃声や悲鳴が混じったところ。
ソールは擦り剥けた肩をそのままに、東京の路地裏を歩いていた。
日の昇りきった10時23分
照りつける日差しと裏腹に、気温はかなり低い。
すれ違う人はみな厚手のコートを羽織って
足早に通り過ぎる。
世界地図から日本が消えて数十年
人々は何一つ変わらないまま、生活を続けていた。
ソールは大きな屋敷の門の前に立つと、深呼吸をした後、通り過ぎ、少し行った壁で再び止まり
壁に手をかけてよじ登った。
—見つかりませんように…
壁の内側のやわらかい芝生に着地すると同時に
ピピピピーッと甲高い音が響く。
「また夜遊びしてきたのかい?」
「…関係ねぇだろ、おっさん」
「…どんなに憎まれ口をたたいても、必ずこの屋敷に帰ってくるなんて、可愛いものだね」
ソールは車椅子で音も無くやってきた男をにらみつける。
男は不敵に笑った。
「お帰り、ソール・パンテラス(豹)。」
ここは地獄だ。
ソールは導かれるようにして車椅子の男の後ろ付いていった。
ここは地獄で逃れられないのは運命—
「すぐに怪我の手当てと、体温、心音の測定だ」
男は屋敷に入るなり冷たく言い放った。
玄関ホールの奥から白衣を来た男女が現れると
ソールは静かに彼らの後を付いて行った。
「まったく…毎回怪我をして帰ってくるなんて…」
—お前は大切な実験体だと言うのに—
車椅子の男—桜井は、再び怪しく笑った。
End
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※パンテラスとはラテン語でヒョウの学名を指します
- Re: BLACK PARADE ( No.2 )
- 日時: 2010/09/27 10:25
- 名前: くろ (ID: PJWa8O3u)
BLACK PARADE
物心ついたときから、俺はこの白く大きな塀に囲まれていた。
ソールと言う名前もこの男につけられた。
ラテン語で「太陽」と言う意味だそうだ。
そんな俺は自分の本当の名前はおろか、どこの出身か、何人か、いつどこで生まれたのかさえもわからない。
頭の中が詰まっていく気がして、そこで考えるのもやめた。
医療用のベッドの上に横たわって数分
桜井の助手である男女が、せわしなく回りを行き来している。
横にある点滴は、ソールの右腕につながっている。
この屋敷に来てから毎日(と言っても帰って来ない日もあるが)打たれている点滴だ。
無色透明の液体が血液に溶けていく度、
自分さえもこの液体と同化していく気がしてならない。
第2話 "ただの子供"
「また逃した?」
寂れたビル、かつて警察庁だった其処。
政治経済は破綻したものの、治安の悪化して行く街のために
政府は僅かな人材を酷使し、街のパトロールや、暴動などを防いでいた。
村雨—彼がその警察団の長である。
「あのなあ…子供相手に何やってんだよ…」
村雨は端整な顔をゆがませながら、黒髪を掻いた。
そう、ただの子供だ。
"ただの子供"がこの東京区一番の犯罪者になったのは何時からだろう。もう覚えていない。
「…ソール(太陽)・パンテラス(豹)」
初めてソールと出会ったのは数年前だ。
とあるアパート住人の通報で、駆けつけると
部屋の中は血の海、その真ん中で死体とともに佇む美しい顔の少年—ソールが居た。
当時の推定年齢15歳、彼は5人も殺していた。
「…ああ…頭が痛い」
「団長、そんな悩んでるとハゲますよ」
「…うるさい、さっさと警備に戻れ」
彼はその後、こちらが唖然としているうちに逃げ今日に至る。
ソールは今も時々人を殺している。
殺人衝動が発作的に起こるのか否かは分からないが
危険因子であるのは確かだ。
「…ソール、」
End
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