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闇色のタキシード
日時: 2010/10/27 06:35
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: wlOs4aVY)

どうも、初めまして又は二度目まして。九龍です。
今回は、一方通行の恋をテーマにした作品をかいてみます。
題名を見て「なんでタキシードなの?」と思った方もいるでしょう。
そのわけは、多分あとがきの時に書きます。

ここからは、注意です。
荒らし・チェーンメールはお断りです。即刻立ち去ってください。
僕が嫌いな人……は、ここに来ないはずですが、間違ってという可能性もありますよね。
僕が嫌いなのでしたら、避難した方がよろしいかと思います。
最後に。この小説は、一方通行の恋なので、後味とか悪そうな感じがします。苦手なら、猛ダッシュで逃げてください。

……これでも、残ってくださるんですか?
できれば本文も読んで行ってくださると、嬉しいです。

第一幕 闇の先に
>>1 >>2 

第二幕 純白の先に
>>3 >>4 >>7 >>12 >>13 >>14

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Re: 闇色のタキシード ( No.1 )
日時: 2010/10/25 18:48
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: PlVnsLDl)

今日も変わらないな。人間界は。
私はそう思いながら、人間界を眺めていた。
私の名はディオニュソス。ギリシャのオリュンポス十二神の1人であり、葡萄酒の神だ。

雲の下に見える人間界は今日もにぎやかで、日が落ちた空は雲に覆われている。
月も、星も見えない空の下では、車のライトや家の窓から漏れる電気が見える。
空の上から見たら、その光はとても小さく、まるで黒い床に砂金をこぼしたような感じだ。
そんな夜の闇の中を速足で歩く人間達は、何かと忙しそうだ。

私はだんだん、この世界を見るのに飽きてきて、どうせなら、いつも見ないような国を見てみようと思い、違う国の方に目を移した。
そこで、ふと目に留まったのが、山奥にある葡萄の木だった。

その葡萄の木のそばには、一匹の子熊がいて、木の枝にぶら下がっている葡萄をじっと見つめていた。
———あれを、とりたいのだろうか?
だが、小熊はまだ木には登れないらしく、木の枝にぶらさがっている葡萄をじっと見つめているだけだ。
私はその小熊が、だんだん可哀そうに見えてきた。
まだ、木にも登れない小熊には、あの葡萄は取れないだろう。
他の手があるとしても、あの幼い小熊がいい案を思いつくとは思えない。

———仕方ない。
どうせ暇だったのだし、葡萄くらい、とってやるか。

私はそう思い、人間界に降りて行った。
幼い小熊に、葡萄を食べさせてやるために。

Re: 闇色のタキシード ( No.2 )
日時: 2010/10/25 18:53
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: PlVnsLDl)

人間界に降り、葡萄の木の太い枝に着地すると、小熊は私のことを不思議そうに見ていた。
空から人が降ってくる。なんてことは、そうないだろうしな。
私はそう思いながら、木の枝の上を静かに歩く。
枝は私の重みで、揺れたりメキメキと音を立てたりする。
まぁ、この枝には葡萄の実がなっているし、木の枝が折れても葡萄の実は取れるだろう。
ちょうど葡萄の実が見えてきたところでしゃがみ、葡萄の実の茎を折る。
その葡萄の実を持って、私は枝から降り、地面に着地し、小熊の前に葡萄を置いた。
小熊は葡萄の臭いをかいでから、葡萄の実を口にくわえ、山奥へと消えて行った。

さて、あの小熊に葡萄をあげたし、これで目的は果たしたな。
そう思いながら、私は葡萄の木にもたれかかり、静かに目を閉じた。
耳に入ってくるのは、木々のざわめきと、虫達の鳴き声。
涼しい風が体に当たり、とても心地が良い。


「……あの」

澄んだ声が、私の耳に入る。
私が目を開けると、目の前には人間の女が立っていた。
肩まである黒い髪に、黒い目。服は、シンプルな白いワンピースを着ていた。

「あの、貴方、どうしてこんな時間にこんな山奥にいるんですか? 危ないですよ」

危ない、か。
人間にとっては危ないかもしれないが、私は動物にあっても、怖くもなんともない。
動物も人間も、父が作ったものなのだからな。
父が作ったものが、父の子である私を襲うわけがない。

「お前こそ、このような時間にこのような山奥にいて、大丈夫か? お前は女なのだから、このような時間に外を出歩かない方がいい」

私が女にそう注意すると、女はムッとした顔で私を見る。
大きなお世話だ、と言いたそうな顔だな。
私はため息をつきながら、続けた。

「先ほど、小熊の様なものを見かけた。もしかしたら、熊の親子と遭遇するかもしれんぞ? もし遭遇したら、お前はどうなる?」

私が女にそういうと、女は不安そうな顔をした。
この山に小熊がいるということは、親の熊もいるはずだ。
だとすると、この女が熊に襲われるという可能性もあるのだ。
私は立ち上がり、女の目を見て言う。

「夜も遅いし、私はもう帰るとする。お前も、早く帰るといい」

私がそういうと、女は暗い森の中を歩いて行く。
私は女とは反対方向の道を歩き、天界へ帰ることにした。

あの女、無事に帰れればいいがな。

Re: 闇色のタキシード ( No.3 )
日時: 2010/10/25 18:50
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: PlVnsLDl)

天界に戻ってから、白い石でできた椅子に座り、また人間界を眺める。
雲の上から見た人間界の夜は、窓からもれる電気は消え、一部の通りの明かりしか見えないので、その通りがとても目立つようになっていた。
———そういえば、あの女はどうなっただろう。
私の頭に、白いワンピースを着た黒髪の小娘が思い浮かぶ。
あの女は、無事に家に帰れたのだろうか?
そう思いながら、ゆっくりと目を閉じ、あの小娘の姿を思い浮かべる。
先ほどは私に注意をしてきたぐらいに元気であったが、今はどうだかわからない。もしかしたら、熊や野犬に襲われているかもな。
そもそも、あのような山奥で出歩いていた小娘が悪いのだろうがな。
私はあの女と初めて会ったばかりだし、私が心配する必要はないだろう。
私はそう思い直し、頭の中からあの女のことを追いだそうとした。

だが、どうも気になる。
あの女は私の信者でもないのに、何故気にする必要があろうか。
私はそう自分に言い聞かせるが、どうしたものか、あの女のことが頭から離れない。
何故、私はあの女のことを考えているのだろう。
あれも他人ではあるが、父上がつくったものであり、私が守るべきもの、人間だからか?

考えていても、答えは一向に見えてこない。
答えなど、もう、どうでもいい。
今は、あの女の安否が気になる。

とりあえず、明日、またあの山へ行ってみよう。
そしたら、あの女にまた会うかもしれないしな。
もしかしたら、あの女の残骸が見つかるかも知れぬが。

まぁ、あの女が無事に帰ったことを祈ろう。
神が願い事をするなど、また不思議なものだ。
私はそう思いながら、椅子の背もたれにもたれかかり、目を開け、曇った空を見つめていた。

Re: 闇色のタキシード ( No.4 )
日時: 2010/10/26 20:18
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: wlOs4aVY)

今日も、昨晩のように人間界に来た。
昨晩と同じ葡萄の木の下で、葡萄の木にもたれかかって座り、足を思いきり伸ばす。
木の枝や葉の間から、太陽の光が差し込む。
木の枝と葉が風に揺れ、小さく音を立てる。
あぁ、とても、心地が良い。人間界も、それなりにいいものだな。私は静かに微笑みながら、青い空を見上げて、目を閉じる。
しばらく経つと、誰かがこちらへ歩いてくる音が聞こえてきた。
だんだん、足音が近づいてきて、突然止まった。
不思議に思い目を開けてみると、目の前には昨晩の、黒髪の女がいた。
女は私に気がついたようで、私が目を開けると、私の前にしゃがみこみ、話しかけてきた。

「貴方、昨晩この山にいた方ですか?」
「ああ。お前、熊に襲われずに帰れたのか?」
「えぇ。途中で少し道に迷ってしまいましたがね」

女はそう言って苦笑し、乾いた声で笑った。
私も小さく笑った。
何故だかは解らないが、この女が無事だと知っただけで、安心した。
何故だろうな。このようなことは、過去にもあまりなかったのに。

「あの、貴方、何処から来たんですか?」
「ギリシャだ。何故、突然そのようなことを聞く」
「貴方の髪と目の色がとても珍しいので。それ、元からなんですか?」

女の質問に、私は黙って頷いた。
私の髪と目は紫色で、後ろ髪はこのごろ切っていないので、長くなっていると思われる。
日本人から見たら、元からこの髪の色というのは珍しいだろう。
私はそう思いながら、自分の前髪を触ってみた。

「あの、貴方のお名前は?」

女が興味津々でそう聞いてきた。
私はやわらかく微笑み、女の問いに答えようとした。
だが、よく考えれば、私の本名を言うわけにはいかない。神の名を名乗るなど、頭がおかしいと思われるとしか思えんしな。

「ディオスだ。ディオス・カツィカス。お前の名は何と言う?」

私がとっさに思いついた名を名乗ると、女は笑った。

「私は月森 林檎と申します。この山の近くに住んでるんです」

女がそう言って、私に女の身の回りの事を話し出す。
私は頬杖をつきながら、それを聞いていた。


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