ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 崩壊する世界 〜孤高の歌姫〜
- 日時: 2010/10/06 21:00
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
☆★☆★☆★☆★☆
こんにちは。紅薔薇です。
今回はダークファンタジーとして書きたいと思います。
文明が発達しすぎて何度も核戦争がおき、荒廃した世界の物語です。
登場人物はのちに書きます。
ではどうぞ。
第一章 荒廃する世界
予知少女 〜1〜 >>1
予知少女 〜2〜 >>2
予知少女 〜3〜 >>3
空の真実 〜1〜 >>4
空の真実 〜2〜 >>5
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- 予知少女 〜1〜 ( No.1 )
- 日時: 2010/10/03 10:21
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
第一章 荒廃する世界
誰のために生きるのだろう。何のために殺すのだろう。
なぜ人は奪い合うのだろう。なぜ世界は朽ちていくのだろう。
希望と再生という言葉は何を意味するのだろう。
終焉と崩壊はなぜ訪れるのだろう…。
ふと目覚めた時、温かい朝日が窓からさしていたら、どんなにいいだろうかと思う。
でも俺は朝日を知らない。温かさを感じたことはない。
冷え切っている手に、ぬくもりを感じたことも。
でもそれでいい。
この世界で生き延びるためには、欲をすてて、希望に背を向けていればいいのだ。哀れみなんて言葉も、俺はずっと前にどこかに捨ててきてしまった。
でも今はいらない。
哀れみがどんなに足手まといになるか知っているから。
だから俺は殺しも平気でやるし、盗みもやる。
生と死のはざ間のようなこの世界で、これは普通に起こることだ。大昔は人殺しや盗みを「犯罪」だなんていっていたらしいけど、今じゃどうだろうか。
人殺しや盗みは生きるための選択にすぎない。
今日も俺は頭のいかれた男を殺して、その金でこの世界では数少ない店で売っていた、湿ったパンをかじっていた。最近は収入が少ない。それに人も減ってきた。
それは仕方がないか。俺みたいな死神がうろちょろしてるからな。
そんなことを思いながら、ひょっこりと路地へ出ると、
「誰か助けて!娘を誘拐されたの!」
と半狂乱で叫んでいる女がいた。通りがかる奴等はいたが、そいつらは自分のことで頭がいっぱいなヤツばっかりだ。誰一人としてその女に興味をもつのはいなかった。
無論俺もその一人だ。自分のことで頭がいっぱいではないと思うが。
理由は、ただめんどくさいということ。その誘拐犯を追って殺されたりしたらくだらないし、それに今頃娘は殺されて、肉が食われているか、それか金目のものをとられているだろう。死者をバカみたいに追っかけて、何になるのか。
他人にたよるヤツは嫌いだ。俺は泣き叫ぶ女を尻目に事業所へと急いだ。
そこは事業所の跡であるだけで、事業所ではないのだが。
古びた建物の中に入ると、何人かの俺と同じような年頃の少年達が出迎えてくれた。
左からハンス、クロ、メルスタだ。俺は壁のはがれた廊下を歩きながらハンスに訊いた。
「ハンス。お前は今何歳なんだ」
- 予知少女 〜2〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/10/03 10:42
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
ハンスは昔強盗に左目をつぶされて、治療ができなかったから、目がただれてしまっている。だからハンスにはその目をボリボリとかいてしまうクセがついていた。彼は忌々しそうに左目をかきながら答えた。
「十四だと思う。アレクスが十五ならね」
「クロは?」
その名のとおり黒髪のクロは俺達の中で一番背が低い。
「十二だよ。僕は背も低いし年も一番下みたいだ。メルスタが十三だから」
クロが恨めしそうにいうと、メルスタはニタリと笑った。
そうしているうちに、奥についた。黒っぽい扉の前でハンスが大声を上げた。
「ティーン、アレクスです」
しばらくすると、奥から弱々しいティーンの声が聞こえた。
「ハンス、入れなさい」
中に入ると、俺達の親役をしてくれているティーンが椅子にすわっていた。
俺達は何年も前に親とやらを亡くしている。何度かの核戦争で。
ティーンは目を閉じていたが、俺が現れるとかすかに右目をあけて、優しげな声を出した。
「おお、アレクス。しばらくだったな。もう二ヶ月になるかな」
ティーンは今年で百十歳だ。俺の面倒をみてくれるようになったとき、すでに彼は百歳だった。
だから最近彼の記憶力はにぶくなってきている。
「三週間です。ティーン」
ティーンは微笑を浮かべた。
「そうか。まだそれくらいだったか。それで、急にお前を呼び出してすまなかった。
実は、昨日、ある少女がこの事業所に転がり込んできた」
俺は耳を疑った。
少女が?
たったひとりで?
この事業所に?
「少女はひどく傷をおっていての。とても怯えていた。わたしが治療をしてやったら、その少女が「アレクスはいませんか」と訊いてくるのだ。なぜアレクスを知っているんだと尋ねても、少女はそれ以上何も言おうとはせん。だから、お前を呼んだ。少女は隣室におるよ」
ハンスが隣室への扉をあごでしゃくった。クロも俺を見てうなずいている。
俺はティーンの横を通り過ぎ、扉を開けた。
後ろ手で扉を閉めるとかび臭い匂いが漂う小さな部屋が現れた。
その隅で縮こまるようにすわっていたのが、その少女だろうか。少女はあちこちに包帯をまいており、血が滲んでいた。
俺が立ち尽くしていると、少女はゆっくりと顔を上げて俺を見つめた。
そして、呟いた。
「アレクス?」
- 予知少女 〜3〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/10/04 21:05
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
俺は答えなかった。うなずいただけだ。
見知らぬヤツ、しかも俺のことを知っているヤツなんかと口をきくのは性に合わない。
ただうなずいただけなのに、少女はそれを見て肩の緊張を解き、極度の安堵感を見せた。
「あなたが、アレクスなのね」
少女の様子を見たなら仕方がない。
五秒もたたぬうちに俺の中ではプライドより好奇心が勝ってしまっていた。
「お前は?」
少女はしばらく黙り込んでから、弱々しい微笑を浮かべた。
「レナ……」
「聞いたことないな」
「そうでしょうね。初めて会ったもの…」
俺はなぜか無性にイライラした。「じゃあ、なんでお前は俺の名前を知っているんだ」
俺が横目でにらみつけると、レナと名乗る少女は、黙りこくってうつむいてしまった。答えがかえってこないでので、部屋を出ようとしたまさにちょうどその時、レナが呟いた。
「あなたの……仲間だからよ…」
まるで消え入りそうなその声に、俺は思わず目を見張った。彼女は胸をおさえて苦しそうにしている。
「仲間?会ったこともないお前の?」
「…そう…」レナは誰かに聞かれてはまずいというように、声を押し殺しながらいった。
「そして、私と同じ使命をもっているの…」
全くわけがわからない。こんなおかしな女には出会ったことがない。
いきなり転がり込んできて、俺の仲間だとか、使命をもっているとか…。世の中にはこんないやがらせが流行っているのだろうか。俺はいぶかった。
「使命ってなんだ…」
「……………世界の、崩壊を止めるのよ」
*
さびれた事業所の跡に、一風変わった少女が現れた。
いきなり傷を負って、転がり込んできたその少女はレナと名乗り、亜麻色の髪をもち、端整な顔立ちをしていた。
最初、俺やハンスたちはそいつを怪しがっていたが、やがて傷も治り、俺達に溶け込んでいくようになると、明るくハツラツとするようになり、笑顔を見せるようになった。
なんといっても、レナとティーンがとても仲良くなったのが印象的だった。最近、ティーンやハンス達とまともに会話したことがなかったのだが、レナが現れてからはよく談笑するようになった。
それくらい、レナは明るくて、俺でさえも一種の魅力を感じた。
雨上がりのある朝、俺が何気なく窓から首を出すと、下のコンクリートの階段でレナが灰色の空を』眺めていた。珍しくレナは静かだった。
俺が気になって階段へ行き、彼女のとなりに立つと、すぐに気付いて微笑を浮かべた
- 空の真実 〜1〜 ( No.4 )
- 日時: 2010/10/06 18:09
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
「あ、おはよ」
それだけいうと、すぐにレナはその翳った青灰色の目を、空に向けた。
いつも同じ、汚らしい灰色の空が何も変わっていないことは分かっていたが、俺はつられて空を見上げた。
羽が折れている貧弱なカラスが一羽、俺の瞳を横切ってゆく。視界の隅に、まるで死人のように突っ立っているのは、錆びついた電柱だった。ふいにレナが瞬きもせずに呟いた。
「アレクスは、青空って見たことある?」
「いいや」俺は答えた。
「そっか」つまらなそうにいうと、レナは階段の手すりによりかかった。
「私も見たこと無いな。
実際にね……。ちっちゃい頃に、一度だけ本で見たことがあったけど、もう何十年も前の本だったから、黄ばんでて、肝心の青色は分からなかったの」
「だから、その頃から私は無性に空に焦がれるようになったの。
夢も見たわ。もうこの世界には残っていないだろう真っ青な草原に一人立って、雲ひとつない青空に両手を広げているの。まるで、空を自分のものにしようとしていて…」
それから、深いため息をついた。
「きっとそれは前世の記憶だったのかもしれない。前世はきっと、私は幸せだったに違いないって、目が覚めて思ったわ」
そう呟くレナの瞳は、俺ではなく空想の青空を見ていた。
果てなく、続いていく美しい青。乾いた俺の心に、一瞬さわやかな風が吹いた気がした。
だがそれはすぐに暗黒に飲まれていった。
この厚い雲が千切れて、太陽がのぞく日がくるなんて、今の俺には想像もできなかった。
「で、俺とお前の使命ってなんなんだよ。あれからお前、何にも話そうとしないじゃん」
俺が横目でレナを見ると、いつになく深刻な横顔のレナがいた。
「……信じてくれないと思って…。言えなかったの。
でも、本当なの。この使命が果たせないと、みんな死んでしまう…」
驚愕している俺に、レナはゆっくりと振り向いた。
「この世界が荒廃してる理由は、実は文明の発達が原因じゃない。
世界支配をもくろむデス・テラという闇の組織が人の脳を壊すウイルスを発明して、それを排出したの。人類の命運はそのウイルスの排出で尽きたわ…。ウイルスはどんどんと人の脳を破壊していき、ついには核戦争を起こさせるまでになった……。人類が半減して、全ての秩序が乱される時代、今のこの「テラ」時代があの組織、デス・テラの黄金時代となったの…」
まるで夢見たいな話を、レナは語り始めた。
「だけど、デス・テラにとっての邪魔者は、まだ潜んでいたのよ」
それだけ言うと、レナは俺を見つめ、それから針金の突き出たボロいコンクリートの地面に目を落とした。
- 空の真実 〜2〜 ( No.5 )
- 日時: 2010/10/06 20:59
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
「それは、「フュール」と呼ばれる神々の血筋である人々…。
超人である彼らにウイルスは効果がなく、正義感が強い人々が多かったから、デス・テラの脅威に他ならなかったのよ。だから、デス・テラはフュールの征伐をうち出した。そして、何百人ものフュールが犠牲になり、今にいたっているの……」
「そして…私もその一人…」ためらいがちに言った彼女の目は、コンクリートの地面から、俺へと移っていっき、確信に満ちた表情でうつむいている俺を見つめた。
「あなたもなんでしょう?アレクス・シェーンブルン」
一瞬、世界の色が剥がれ落ちた気がした。
*
——人生の転機とは、突然訪れる。
静寂と、沈黙、そして闇を引き連れて。
人は、あまりに急な出来事に慌てふためき、素直に受け入れることができなくなることがある。
俺も、そうだ。
だが、俺がフュールである以上、それは受け入れなくてはならないのだ。
世界の破滅が、俺の選択にかかっているから…。
「アレクス。レナには全てきいた。
お前はこれからレナとともに、デス・テラの計画を阻止せねばならん、という使命だそうだな。おまえ自身はどう思っているのだ」
ティーンが、いつになく真剣な顔で、俺を鋭く見据えた。
レナは今ここにいない。理由は分からないが、きっと気をつかっていなくなったに違いない、と感じた。
「…わかりません。未だにレナの話が信じられないし、それに世界を救うことができる力が、俺に備わっているということも疑問に感じるんです。俺はただの平凡なフュールなんだと……」
俺がためらいがちに言うと、ティーンは微笑んだ。
「フュールに平凡や、非凡などいない。
神の力は全て一つの輪となり、この不安定な世界を支えているのだ。だが、その神々にですらもうこの世界は修復不可能になっている。それはこの老いぼれにも分かる。
ときたま、世界の弱い鼓動と、鋭い悲鳴を感じる時がある。もう、何もかもが手遅れなのだ。
人間という、身勝手な生き物がこの世界を廃し、腐らせている……」
鼓動と悲鳴。それは俺でも感じる。
何とかしなければ。そんなことは分かっているけども、こんな、汚くて、よどんでいて、荒廃した世界を助けなければいけない義務が、果たして俺にあるのだろうか。俺みたいな殺し屋や盗人の溢れるこの世界を、なぜ必死になって守らなければならないのだろう。
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