ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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変人に悩み事を相談をしてしまうと
日時: 2010/11/05 18:51
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: ViM8jUbu)
参照: かなり忙しいから、更新速度ダウンします。

どうも、皆さん初めまして。
お久しぶりのお方はお久しぶり。空でございます。
前回意気込んで書いた「となりの駄菓子屋さん」、あれ廃止になりました((汗
ということで、改良番の「変人に相談してしまうと」とお送りします!
皆さん、よければどうぞ読んでください。

ちなみにジャンルは学園ものです。
それでは注意事項。
①荒らし、チェンメ、中傷などはやめてください。
②スレ主はかなり更新が遅いです。
③頑張りますので応援宜しくお願いします。

それでは始まり始まり…。

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Re: となりの駄菓子屋さん ( No.3 )
日時: 2010/10/30 20:46
名前: Nekopanchi (ID: 271PzwQK)

さてさて、以前鑑定して頂いてから空さんの隠れファンになっている駄猫が参りましたよ、と。…おや、SBSは先送りなのですか。…まあしかたないですねえ。
…というか俺の事覚えてますかいな…?

Re: 変人に相談をしてしまうと ( No.4 )
日時: 2010/11/05 19:00
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: ViM8jUbu)
参照: 序章 始業式での出会い

 空は快晴。水色のペンキでムラなく塗られたようなこの空。登校してきた時はそうだった。今は体育館の中にいるため、どんな風になっているのか解らない。ちょっとひんやりとした、だけど確実に春の風が体育館を包んだ。
 私は深くため息をついた、首が下にカクンと俯く。視界に私の白い運動靴が見えた。少し黒くなっている。買ったのは半年も前だから当り前か。
 その時、校長先生が壇上に上がった。教頭先生が「一同、礼」と言い、生徒達はみんな頭を下げる。
「いよいよ新学期。春ですね」
 この言葉で、これから長くなるであろう校長先生の話がスタートした。
 紺のセーラー服に刺繍は白。赤のネクタイにスカートはプリーツスカートで紺。名札には始祖部という刺繍と三年二組というクラスバッジに校章。名札と服装がきちんと正されていないと体育館には入れない。またいつもの十人くらいが入口で校長先生の話を先生監視のもと、聞いているのだろう。私はそんなバカの真似はしない。
 フルネームは始祖部愛華。三年生は受験生。もう進路の話が出てくる時期だ。ほとんどの生徒が勉強に勤しみ、部活は卒業。様々な生活溢れるこの学校から出ていく準備をする。まぁはっきり言うとそんな感覚はまだない。ゆっくりこれからって感じだ。
 ショートカットの黒髪。黒髪じゃなければ完全に校則違反だ。そして、前髪が下ろしている。美人でもブサイクでもない顔立ちと自分では思っているけど、みんながどう思っているのか知らない。まぁ、「私って美人? ブサイク?」と言ってクラスのみんなに聞きまわるのもおかしい。
 私はチラリと目線を天上に向ける。天窓から光が降り注ぎ、そこからさっきと変わらない快晴の空が見えた。快晴を確認すると目線を前に戻す。
 こんな青い空で私達は何をやっているんだろう。教師の長い話を聞いてなんになる。くだらない。
 それはみんなも思っているようで、周りの生徒は欠伸をしたりだらしなく手を組んだりして退屈を一生懸命紛らわしている。
 私はこんな快晴の空が嫌いだ。大嫌いだ。そしてそれも同じように学校も嫌いだ。今の時代、学校が大好きなんて小学生くらいかもしれないのはわかっている。学校なんていうものは、まだ世間というものを何も知らない赤子を一生懸命抱いてあやしている場所。私達はまだ何も知らない。だからこそ、大人が教育し理解させ、世界や様々な分野で活躍することを願っている。しかし、そんなものはただの夢や希望。ほとんどの者は皆、挫折というものを経験し断念する。それが事実だ。今、一生懸命聞いている校長の話など、十分もすれば友達との他愛無い会話で忘れる。

Re: 変人に悩み事を相談をしてしまうと ( No.5 )
日時: 2010/11/05 19:22
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: ViM8jUbu)
参照: 序章 始業式での出会い

 笑顔が溢れる教室や廊下でも表ではそうかもしれないが、裏では影がよぎっている。いつも生徒の背中に付きまとい、生徒はそれを振り払い、逃げ続ける。その繰り返し。それでも生きていかねばならないから一応前進する。思春期の私達なんて毎日が葛藤だ。そんな集団行動にもまれて暮らすのはごめんだ。いつもいつも同じ日々の繰り返し、会えば同じ顔に同じ声に同じ言葉。聞きたくもない人の悪口、自慢話、男子に対する女子の声のトーン……見ていてイライラする。灰色の学園生活にまた黒を足して濃くつまらないものになんかしたくない。もう前が見えないほど灰色に塗り潰されているのに。
 それでは学校に何も楽しみはないのか、そう問われれば即答してイエスとは言えないが、イエスは言える。それも五秒くらいためてだ。学校行事などは勝つため楽しむため魅せるため、それぞれが頑張り努力する。しかし、三年生にもなってくると行事の好き嫌いが激しくなってしまう。そして何よりの原因は飽きだ。こんなこと、もうするのは若いうちで一生に数えることくらいしか出来ないけど、やはり飽きたらつまらない。
 友達との会話は楽しくないのか? そう問われれば楽しいと即答で答えられるだろう。たわいもない話をして笑って……それこそ学園生活という感じだが、順風満帆過ぎるのも私は嫌う。
 この始業式が終わったら友達と喋りながら帰って先生の話を聞いて、それで……予想出来る毎日ほど楽しくないものはない。
 こんなことを思いながら、あっという間に校長先生の話が終わった。そして、次に新しく職務についた先生を紹介する時でひと際目を引いた。それはみんなも同じなのか、その教師を見た瞬間、一斉にざわつく。というか、教師なのかどうかも解らないような人だ。
その人はゆっくりと壇上に上がり、マイクを口に持って言った。
「どうも初めまして、おはようございます。猫又志郎と言います」
 その人は、ゆるりとした口調で言った。その姿はあまりにも印象的すぎる。まず、今の現代からかけ離れている緑の着物、からくさ模様の羽織り。下には下駄をはいておりカランカランと音がする。
 髪型はぼさぼさの赤色の髪。少し前髪と後ろ髪が長くなっている。その独特の雰囲気は見るものを魅せつけて離さない。そんな感じがした。その時、その姿を見ただけで灰色の学校生活に色とりどりのペンキがぶちまけられたのは事実だった。何かが変わっていく。鼓動が速くなってまだ寒い四月の朝に掌に汗が滲み出る。目が大きく見開き瞬きを許さない。
 変な人、それでなお且つ面白そうな人。これが第一印象である。
「えっとぉ〜……僕は保健室の隣のカウンセリング室に必ずと言っていいほどいます。悩みがある人は僕に会いに来てください。一応猫又先生と言って下さい。これで説明は以上です」
 その時、急に目がスッと細くなった。なぜだかわからない。私は身長が低い方だから前の方で壇上の姿がよく見える。だからそんな気がした。
その目でいきなり私と目線がぶつかる。私はいきなりの出来ごとで慌てて目線をそらした。その時、猫又先生がゆっくりと口を開いた。
「皆さん、今の学校は楽しいですか?」
 その瞬間、体育館の中に嫌な空気が漂った。急に変なことを聞いてくる先生も先生だけど、その質問の内容に驚いてるのが大半のようだ。
「あ、すいません。いきなりこんな質問をしてもわかりませんよね。私はカウンセリングの先生をやっているので聞きたかったんです。それではカウンセリングの先生からのお願いだと思って少し聞いてください」
 カウンセリングの先生とは思えない格好でマイクを握る。
「貴方達の今この時間は絶対に戻ってきません。この歳だからこそこの経験が出来るのです。だからこそ、この時間を大切にして下さい。後悔しないように——」
 先生は最後、優しい静かな笑みを生徒達に向けると壇上からおりていった。それが生徒達に晒された一発目の姿だった。

Re: 変人に悩み事を相談をしてしまうと ( No.6 )
日時: 2010/11/05 19:16
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: ViM8jUbu)
参照: 序章 始業式での出会い

 それ以来、私の胸の中は興奮状態だった。学校へ向かう足が少しだけ軽くなる。あの先生ともっと話したい、どんな人だか知りたい。恋愛感情とかそんなのではなく、ただ単に珍しいものと触れあいたい。そんな気がしてならなかった。実際、先生から「今日はどうしたの、始祖部さん」なんて言われる始末だった。
 しかし、そんな私の心を掴んで放さない先生は、あの日以来一向に姿を見せることなどなかった。移動教室の時や、何気にトイレへ向かう時など廊下などに目を走らせ先生のあのよくわかるからくさ模様の羽織姿を探しているのだが、一向に見つかる気配はなかった。
 先生が現れなくなり、また私の学校生活は灰色のものへと化してしまった。
 朝のHR。先生からのお話。それが終わると総務委員の号令がかかる。
 気を付け、礼。号令がかかると同時にチャイムが鳴った。そして、みんなは一斉に友達の机へ向かったり様々な場所へ散っていく。
「おはよ、愛華!」
 その時、私の目の前にいきなり現れた影。私の友達鶴岡麻美だ。彼女は私が小学校からずっと一緒の親友であり、小学校のほとんどを共に過ごしてきた腐れ縁でもある。私をよく解る理解者であり、彼女のことを第一に理解し考えているのも私だと思う(そりゃ赤ちゃんのことまでは解らないけど)。
 まつ毛が長いパッチリ目が特徴的で可愛い顔立ちをしている。なので、絶好調の時は一日に三回も告白されることがある。
 私も男子だったらこの子の虜になってしまうかもしれない。
「ねぇねぇ、新任の紹介の時かなり目立ってた先生いたよね!」
 麻美が笑顔で口走る。やはり、あの先生はみんな気になっているだろう。現にあの先生の話題が耳に何度も入って来ている。
「あぁ……猫又志郎先生」
 その時麻美が大声で「そうそれ!」と人差し指を私に向ける。かなりのオーバーリアクションは麻美特有であり、朝っぱらからこんなテンションが出せるのも麻美特有だ。
「なんか昔の名前っぽいよねー。でも猫の字が入ってるからちょっと可愛いかも。もしかして、猫っぽいとか!」
 ……朝っぱらからの麻美ワールドはちょっとキツイ。
 私は、「うん、そうだね」という曖昧な返事を残し、相づちを打たせてもらえないままどんどん口が動く麻美を見ていた。
「猫又先生って、見かけないよね……でも。始業式から大分経つのに、なんでかな?」
「さぁ、解らないよ。もしかしたら物凄く忙しいのかも」
「でも、主担任を持ってるわけじゃないし……それにカウンセリングの先生でしょ? そんなに忙しいとは思わないなー……」
 麻美が小首をかしげる。この動作だけでも恋に落ちてしまう男子は多い。一体、何人もの男を虜にし告白を撃沈させたんだろう……(麻美はまだ一人も付き合っていない清純のまま)。
「うちの新聞部もちょっと言ってたもん。あの始業式の珍しい着物の先生はどうなったって。次の新聞記事をその題にしようかと思うんだけどって」
 ちなみに麻美は元新聞部部長で大きな見出しはほとんど麻美が、そして下級生の原稿チェックも麻美がやっていた。お陰で学校の噂や情報などが早くに耳に入るから、物凄く感謝していたんだけど、もう麻美は引退しちゃったから、読者側になった。だけど、たまにちょくちょく顔を出しにいってるみたいだ。
「やっぱり結構有名になってるんだ……」
 まぁあの服装であんな摩訶不思議の言葉ならだれでも……。でも、誰もその正体を突き止めようとしないのは、きっと不気味な感じも心の中でうずいてるんだろうな。しかも先生だし……受験生は何かと先生ともめて内申落としたくないって人多いし……。
「そのうち、出てくると思うよ」
 私は、窓の外を見ながら答えた。天気は曇天。ましな天気だ。一番はやっぱ雨がいい。
「出てくるよね!」
 麻美が私に向けて笑顔を送った。そして、麻美の出てくるという言葉に希望を持つ。
 あの先生はいつもどこへ行くのか、何をしているのか、どんなカウンセリングをするのか、何も解らない。


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