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天地神明
日時: 2010/11/04 18:22
名前: むーみん ◆LhGj6bqtQA (ID: 20F5x0q3)


ここに投稿しようかしまいか、悩んだ末にやっぱり投稿しようと思い立ちました。
はじめまして。むーみんです。
駄作なのは承知済みですのでアドバイスいただけると嬉しい限りでございます。

では、どーぞ。

◇目次
 序章>>01

Page:1 2 3



Re: 天地神明 ( No.6 )
日時: 2010/11/04 21:29
名前: むーみん ◆LhGj6bqtQA (ID: 20F5x0q3)
参照: ONEPIECE60巻本日発売。





人がたくさん戯れている、秋なのにまだ日差しが強いグラウンド。
体育の授業が終わり、教室に戻ろうとした時、俺は屋上に『それ』を見てしまった。
屋上に、俺らが通う高校の制服を着た女の子が一人立っていたのだ。
俺には昔から幻聴・幻覚・未来予知が見えてしまう、変で迷惑な能力がある。それは誰にも言っていないし、言おうとも思わない。
そしてこの時も、「ああ、きっとまた幻覚だ。最近疲れてるからな」と自分を落ち着かせ、見て見ぬふりをしようとそのまま友達と歩いた。
今日は日差しは強いが風は冷たい。ふと目がいってしまった例の少女も、風にポニーテールにした髪を揺らしていた。


——いや、待て。
幻覚にしてははっきりしすぎている。
あれは“間違いなく人間”だ。
とすると、状況的に、あの子は間もなく飛び降りるのではないだろうか。
ということは、俺の人生に自殺現場を目撃してしまった、というトラウマが残ってしまうんじゃないか。

「翔? 急にどうした?」

「用事、思い出した」

気がつけば、俺はいつの間にか走り出していた。
ごちゃごちゃといる人の間を潜り抜け、屋上に向かって。


「ちょっと待て! そこの女ちょっと待て!」


急いで向かった例の屋上。俺はドアを思いきり開ける。
そこにはやっぱり、フェンスに手をかけ、グランドを見ている少女の姿があった。幸い、その少女が飛び降りるには間にフェンスが邪魔している。
すると、黒髪のポニーテールが揺れ、目が大きく整った顔つきの少女が顔をみせた。

「どうしたの急に」

その少女は驚いた様子もなくこっちを振り返ると、漆黒の瞳で俺を睨んでいる。
全速力で階段を駆け上がったせいで、息を切らしながらも俺は言う。

「と、飛び降りるかと思って走ってきてやったんだ俺は」

「飛び降りる? あたしがここから?なんであたしがそんなに怖いことしなきゃいけないの」

「……ふざけんな! じゃあなんで一人でこんな所いるんだよ!」

「あなたには関係ないでしょ? 分かったら帰ってくれる?」

——見下したように言ったその少女の言葉に、風が一層冷たく感じられた。
授業開始のチャイムが遠くに聞こえたが、俺もその少女も動こうとしない。

「こんな所に一人で立っていたら、自殺するのかと思われるだろ。教室戻れよ」

「あたし明日からここの高校へ転校するの。今日はあいさつに来ただけ」

「名前は?」

「普通、聞く前に名乗るのが礼儀でしょ?」

悔しいことにこの少女が言っていることは正しい。
またこの少女に興味を持っていることも事実。
俺は湧いてくる怒りを抑えながら答えた。

「俺は風宮翔」

「あたしは神埼茜(カンザキアカネ)。もういいでしょ? あなたこそ教室戻れば?」

「言われなくても戻るけど、ここにいると変な疑い受けるから家帰れ」

「家に帰れって言われても、あたしに家なんてないし。
とにかくっ! あたしはあなたみたいに暇じゃないの。ほっといて」

一瞬、茜の表情が悲しげになった、ような気がする。すぐ自信いっぱいの表情に戻ったが。
“この女は普通じゃない”
そして、会話の中で俺の第六感がそう感じていた。
この感覚は、前にも何度か経験したことがある。なにか、頭の中にキンッと金属音が鳴り響くような感覚。

「お前……本当にただの転校生か?」

いつの間にか、俺はぼそりとそう口にしていた。
何故あんなことを言ってしまったのか——
俺は口に出してしまった後に後悔した。だが、過去をやり直すことはできず、急に恥ずかしくなって教室へと足を向けた。

「……あなたこそ、何者よ」

後ろからそう聞こえたが、振り返らずに教室へと急ぐ。
——何か、ものすごく嫌な予感がしたから。
決して授業に遅れたことにより先生に説教をされる、とかそういうレベルではなく。まぁ、怒られるのは確実なのだろうが。
そしてこの屋上でのやりとりが、平和だったはずの俺の運命を狂わせていった。


Re: 天地神明 ( No.7 )
日時: 2010/11/06 19:47
名前: むーみん ◆LhGj6bqtQA (ID: 20F5x0q3)
参照: SPかっこいいよ、SP!




「翔、帰ろうぜ」

授業が終わり、皆そそくさと帰りの支度をしている。中には部活に向かうものもいるが、俺は部活などめんどくさいことはしていないので、例外ではなく帰りの支度をしていた。
名前を呼ばれ、顔をあげると声をかけてきたのは同じクラスの遠藤隼(エンドウシュン)だった。

「おう、いいよ」

小学校の頃の事もあり、俺は中学・高校はなるべく小学校の奴らがいないところを選んだ。
その結果、俺の能力も前の事件もばれることなく、今は順調に高校生活を送っている。ごく普通に。
俺は生徒寮に住んでいて、隼も同じ寮にいるため、帰り道が一緒なのだ。帰り道と言っても、徒歩3分ほどの近場にあるのだが。
隼とはよく一緒に帰っているため、今日も一緒に帰ることにした。

ここまではいつもと同じ。
——事件は、校門に向かう時に起こった。
横で歩いていた隼が急に立ち止まり、校門のほうを指さしている。

「なぁ、あれ。お前の知り合い? ずっとこっち見てるけど」

「はぁ?」

ゲートになっていて、無駄に装飾が施されている派手ないつもの校門と、家に帰ろうと歩いているおなじ制服をきた無数の生徒。校門から生徒玄関まで並んだ木々……。
そんないつもの風景の中で隼の人差し指の先を見ると、そこには一つ見慣れないものがあった。
一人の少女が腕を組んで立っているのだ。その少女は周りに人があふれているにも関わらず、妙に存在感と威圧感がある。
あれは確か——
 
「あんなかわいい子この高校にいたっけ?」

「さぁな……あんな人知らねぇよ」

隣の奴は、ニヤニヤとした変な笑顔で俺に言っている。だが、俺の顔はいま完全にひきつっていることだろう。
いますぐ、ここから逃げ出したい。あいつに関わりたくない。
……しかし、そんな淡い願いははかなく消えた。
その女は、おそらく俺に向かって手招きをしている。ものすごく怖い顔で。
そして俺はその屋上であった茜と名乗る少女のもとへ向かうことを決心した。

「ごめん、先帰ってて」

「え、彼女? あんなかわいい子が、お前の?」

「違う。違うから先に帰ってくれ」

そう言い捨てて小走りで校門に向かう。茜に俺に関わるな、と言うために。
俺の直感が正しければ、あいつは俺と同じように凡人ではないのだ。あんな奴と関わったら“普通”に学校生活を送るのは無理だ。
確信は、ない。
しかし何故か直感的にそう感じた。

人通りの多い、校門前。行き交う人から注目されている気がする。
しかし、その注目の視線は俺ではなく、茜という美少女に向けられているもののようだ。
視線を気にせずまっすぐに彼女のもとへ向かい、彼女より先に口を開いた。

「お前、お願いだから俺に関わらないでく……」
「風宮翔。質問に答えなさいっ!」

しかし言葉を言いきる前に、茜の高い声が俺の言葉を遮った。

「あなた、どうしてさっきあたしの事見破ったの?」

「は?」

あまりに唐突に言い放たれたその言葉を、理解するのに時間がかかったのも無理はない。
見破った? 屋上でのあの会話の事か?
思い出すとまたあの時発した言葉を激しく後悔してしまう。いっそのこと無かったことにしたい。
まだ言葉が整理できないが、とにかく言い訳を考えてこの場を逃げようとした。

「屋上の事? あれはただ単純にただの転校生じゃないと思っただけであって……」

「それよ! どうしてただの転校生じゃないって思ったかいいなさい」

「直感、だよ」

「やっぱりね……、あなたこそ昔から変なこととか無い?」

やはり、茜も俺と同じような類の能力を持ってして生まれたのだろう。そして、あの屋上での会話で俺のように直感が働いて、ここにいるのに違いない。
とすると……かなりまずい。
まるで蟻地獄の如く、話せば話すほどまずい方向に話が進んできている。
だめだ、絶対にだめだ。あの事を人に言っちゃだめなんだ。そして、俺はこの女と関わってはいけないんだ。

「無いって。ただの直感だっていったろ」

「そう。言っておくけど、あたしに嘘はつけないわよ?」


——あぁ、神はどこまで俺を不幸にさせたいのだろう。

Re: 天地神明 ( No.8 )
日時: 2010/11/07 22:01
名前: むーみん ◆bbb.....B. (ID: 20F5x0q3)
参照: 文字数制限…だと?なんなんだ、このやろう




「ここよ」

茜はそういうと、ビルの前で立ちどまり、俺のほうを見た。
目の前にあるのはビルと言っても高層ビルなどではない、5階程度の小さく古びた建物。側面にはつたが絡みつき、窓ガラスも汚れ、中には割れているのもある。どの窓もカーテンで閉め切られており、中の様子はうかがえないようだった。

「ついてきて」

「……嫌なんだが、拒否権は?」

「あるわけないでしょ、来なさい」

茜は強い口調でそう言った。
ここにたどり着くまで、俺はもちろん、何度も逃げ出そうとした。しかし、茜は俺の動きに素早く反応し、手をつかむか、足をかけて俺を転ばせるか、ひどい時は本気で首を絞めてきたのだ。よって、今俺は身体のあちこちが痛い。
散々痛い思いをした俺は逆らう気も起きず、茜の言うとおりにここまでついて来てしまった。
茜は躊躇せずにビルの中へと進む。俺も仕方なくついて行く。
そしてこれまた新しいとは言えないエレベーターに乗ると、茜は迷うことなく最上階、5のボタンを押し、エレベーターは小さな金属音とともに上昇していった。
上昇するエレベーターの中は会話が無い、何とも気まずい雰囲気に包まれた。
数秒もすれば、エレベーターは5階に到達した。
最上階に行くと俺の目の前に、ビルの外見とは対照的なキーロック・顔認証付きの鉄で出来た分厚い壁が立ちふさがった。
何故……何故俺がここにいるんだ? そして、これから何が起きるんだ?
早すぎる展開に、俺の思考回路もどうやらついていけなくなったようだ。
茜は、手なれた様子で鍵を取り出し、どうやらこの厳重なロックを解除している様子。するとパネルから男の人の声が聞こえた。

「藤本さん。茜です」

「……横の男は?」

「私の推測するに彼も能力者です。入室許可を」

——いやいや、ちょっと待て。聞いてないぞ、そんな話。
そんなの、完全にアウトじゃないか。
俺は普通に生きたいんだ。極普通に。
頭の中にクエスチョンマークが羅列している。

その瞬間、エレベーターに向かって全速力で走り出した。この状況から逃げるために。
エレベーターの扉は視界に入っている。もう少し、もう少しだ。
——しかし、その小さな抵抗も虚しく散った。
ドスっという重い音がしたと思うと、視界がゆがみ、右腹部が激しく痛み、俺は気がつけば床に叩きつけられていた。
上を見ると、茜が俺を睨んでいる。

「どこ行くの、まさか逃げれるとでも?」

そう言った茜の上から睨みつける顔が、本気で悪魔に見えたのだった。
どうやら、ついに蟻地獄の中心に落ちてしまったようだ。

Re: 天地神明 ( No.9 )
日時: 2010/11/07 18:21
名前: むーみん ◆bbb.....B. (ID: 20F5x0q3)
参照: 文字数制限…だと?なんなんだ、このやろう




人間の理に反する力を、人は魔術だとか、超能力と呼ぶ。
それらは人に大きな影響を及ぼしかねないとして、表には決して姿を見せない。

『十字架のレリーフ』

それは非政府組織にして、決して表には出ない裏の民間組織だ。本拠地はドイツに置き、世界十数カ国に支部が点在している。
この団体の目的は、魔術や超能力といった、一般人の日常生活を大きく狂わせる恐れのある存在の隠ぺいと実際に起きた超自然現象の調査など。
ここ日本支部はまるで普通の会社のように存在していて、そこに入るは選ばれし者のみ。街中のビルの最上階の一室に、この世に極々まれにいる異能力者たちが集っているのだという。


カーテンによって光が遮られ、蛍光灯の薄暗い光によって照らされている一室。コンクリートの壁がさらに冷たい雰囲気を漂わせていた。
室内はかなり広く、テーブルが中央に置かれ、そのテーブルを囲むようにパイプ椅子が並んでいる。茜は俺をここまで連れてくると、そのパイプ椅子に腰かけ、無責任にも本を読んでいた。
そして一番奥にある大きな机とふかふかの椅子に腰かけている男は、藤本と名乗り、俺にそう説明した。
白いシャツに黒のジーパンをゆるく着崩し、細いメガネをかけている。何ともだらしない格好だが、状況から察するにこの男が長なのだろう。
隣には藤本と対照的に、黒のスーツをピシっと着こなした黒髪のきれいな女性がなにか資料を持って立っていた。

「君、昔から予知夢見たり、異常に勘がよかったりするんだろ? それってつまり、人から外れた能力の持ち主なんだよ」

「……なんでそんな適当なこと言うんだよ、確証は?」

俺がそう尋ねると、彼は口角をあげ、フフっと鼻から息を漏らした。

「確証なんて無いけど、そんな感じがするんだよ。君から」

「そんな能力持ってない」

「君もあるだろ? 例えば、今日茜に会った時に変な感じがしたりとか、今もずっと変な感覚に陥ったりだとか」

「……っ」

藤本は頬杖をつきながら、俺に頬笑みかけている。
事実、今俺はこの男を前に、激しい頭痛に襲われていた。それは茜の時の比にならないほどの。
出来ることならこんな所、一秒でも早く出ていきたい。

「俺は、俺は普通に生きるんだ。こんな所にいる気はない」

「たまにいるんだよ、異能力者って」

俺の言葉を無視するように、男は話を続ける。

「こいつもそうだし、茜もそう。もちろん仲間はたくさんいるけどね」

こいつ、と言って指さしたのは藤本の隣に立っている女性だ。
茜も急に自分の名を呼ばれこっちを向いて首を傾げたが、自分の話ではないと分かるとすぐ本に目線を戻した。

「逆に、仲間じゃない異能力者もこの世にはいる」

藤本は相変わらず小学生を相手にしたような声色だが、その言葉に表情は少し険しくなった。
そして俺が言葉を発する前に隙なく続ける。

「僕らの敵はそいつらなんだ。持って生まれた能力を悪用したり、自分の儲けのために公に見せびらかしたりする奴ら。もともと、僕らの能力はこの世界にあるべきものじゃないんだ。だから、僕ら『十字架のレリーフ』は全力でそれを排除する」

「つまり、あなたのような異能力者はほぼ強制的にここに所属していただきます。敵に回さないためにも」

初めて藤本の隣の女性が口を開いた。大きい声ではないが、妙に通る、透き通った声。
凛とした黒の瞳が、まっすぐに俺を見ていた。
だが、俺の考えは変わらない。

「断る。俺はこんな能力誰にも言ったりしないし悪用なんかしたくもない。だから帰らせてくれ」

「そう、残念。でも俺らの敵には回らないようにね。あと、ここの事他の誰かに言ったら、僕らは君をこの世から排除する。気をつけて」

「藤本様、よろしいのですか?」

「んー、だって嫌そうだし。いいんじゃない?」

そう言った藤本の顔は笑っていたが、俺の頭痛は治まらず、むしろひどくなっている。
こいつはとんでもない人だ、と心の中で感じた。
そして深くため息をつくと、俺は出口に足を向けていた。

「ちょっと、待ちなさいっ!」

後ろから茜の高い声が聞こえたが、この息苦しい空間から一秒でも早く抜け出したかったの俺は、立ち止まることなくエレベーターに向かった。


急いでビルから出ると、もう夕日は沈みかけていた。
夕日が沈む時に放つ赤い光が雲や街までもを赤く染める。

「きれいだ——」

人のいない路地裏で一人呟く。
見上げた茜色の空は何故かいつもより広く、高く感じた。


Re: 天地神明 ( No.10 )
日時: 2010/11/08 18:43
名前: むーみん ◆bbb.....B. (ID: 20F5x0q3)
参照: 文字数制限…だと?なんなんだ、このやろう





例え前日がどんなに忙しくて、どんなに非現実的だったとしても、次の日は必ず訪れる。
昨日は結局眠れずに、いつの間にか翌朝を迎えてしまったようだ。
歯磨きをしながら鏡に映る俺の顔は、髪の毛はぼさぼさで目の下にはクマが出来ていて何とも疲れ果てていた。

「しょうがない、学校で寝るか……」

うがいをして、鞄に適当な荷物と枕を詰め込む。
授業は適当にさぼって屋上で寝よう、とひそかに計画を立てていた。
ブレザータイプの制服に袖を通し、ごそごそと学校へ行く準備をしているとき、隼の「翔ー、朝だぞー」といううるさい声が響いた。こんな朝から、近所迷惑もいいところだ。

「分かってるよ、今行く」

こいつの能天気で無神経な声を聞くと、昨日の事が嘘のように思えてくる。
自分のほかにも変な能力を持っている人が存在して、裏で活動しているという信じられない現実を知った俺は、少しの罪悪感と大きな解放感が心の中を交差していた。
しかし、その事実を知ったところで俺の生活は変わらない。
気がつけば時計の針は8時を回っていて、隼も「遅刻するぞー、急げ」と外から騒いでいる。急いでネクタイを締め、鞄を手に取り玄関へ急ぐ。

——あたし明日からここの高校転校するの。今日はあいさつに来ただけ。

ふと、昨日の屋上でのその言葉が頭に浮かんだ。
そう、今日からあの茜とかいう女が学校に来るとか言ってなかったか?
昨日の出来事がまた頭の中をよぎった。
しかし、時計の針がさす時間は遅刻寸前。はぁ、とため息をつくと履きならしたスニーカーを履いて、玄関のドアノブに手をかけた。

「遅ぇよ! それにクマ出来てるぞ?」

「昨日はいろいろあったんだよ……」

「何っ!? あのポニーテールの美少女とあれから何があったんだぁっ!」

隼は目を大きく開き、まるで狂ったかのように俺に大声で攻め立ててきた。「そんな奴だったのかっ! 裏切り者! 見損なったぞこの野郎!」とか、散々喚いているが俺は全て無視。
変な説明をしても話はこじれていくばかりだし、まさか本当の事をいう気もさらさらない。

「ほら、遅刻するから行くぞ」

とだけ言って、自分の部屋に鍵を掛けると、学生寮の古い階段に向かった。
一段下るごとに古い金属がきしむ音がするその階段を一気に駆け下りる。隼も「おい、置いて行くなよ!」と言って、案の定、急いで付いてきたようだ。階段がきしむ音がどたどたと聞こえる。

「今日は天気いいな」

俺は空を仰ぎ、何気なく言ってみた。

「そーだな」

隼が、後ろでぼそりと呟いた。



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