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気まぐれメランコリー
日時: 2010/11/07 16:39
名前: 琴莉 (ID: TAzw0xlk)

 初めまして、琴莉です。

 ここで私が書く小説に対しての感想やアドバイスなどは大歓迎致します。
 盗作・荒らし・中傷は当然のことながら禁止です。

 それではこれからどうぞよろしくお願いします!

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Re: 気まぐれメランコリー ( No.1 )
日時: 2010/11/07 16:46
名前: 琴莉 (ID: TAzw0xlk)

—プロローグ—


 ぼくの名前は夜神楽織舞(よるかぐら おりむ)。
 こんな一人称だけど、一応生物学上は女。中学二年生の十三歳。

 随分と大層なフルネームを持っているにも関わらず、特に目立つものなんてない。
 通う中学校での成績は中の下くらい。まあ、つまり勉強は苦手。運動も好きじゃない。
 自己紹介をした後には誰もがすごい名前だとか、お金持ちそうだとか言ってくるけど、家だって普通。
 父さんが会社の社長でもないし、母さんが大人気の女優でもない。ごく普通の一般家庭だ。

 それにぼくの容姿だって……まあ、これは説明不必要だろう。簡単に言えば、癖のある短い髪にちょっと細い形の目——よく《死んだ猫のような目》と言われるのはこの際気にしないでおこう。身長は背の順で並ぶとクラスの女子で後ろから八番目。体重は平均。ちなみに告白はされたこともしたこともない。
 まあ、なんていうか……綺麗な名前だって褒めてくれるのは嬉しいんだけど、ね。
 でも、ぼくって絶対に名前だけ知っている相手に会ったら、がっかりさせそうだよなぁ。


 そんなぼくでも、この度結構目立つ仕事に就職することになりました。




 それは————異世界の《王》です。

Re: 気まぐれメランコリー ( No.2 )
日時: 2010/11/07 19:25
名前: 琴莉 (ID: TAzw0xlk)

「陛下、朝ですよ。起きてください」

 遠くから声が聞こえる。
 いや、声の主は近くにいるはず。

「陛下。起きましょう……?」

 綺麗な男声。オペラに出てくるならテノール担当になること間違いないだろう。
 そんなことを考えていると、ぼくが包まっている真っ白なシーツが揺さぶられた。あくまで、優しく。

「ん……。あ、オニキスさん。おはようございます」
「おはようございます、陛下。もう七時ですよ? 早く着替えましょうね」

 目の前に立つこのオニキス・カークランドさんはぼくをこの世界に導いた本人である。

 まずこの人を見て思い浮かぶ言葉は——ステレオタイプの英国紳士。

 だって、黒いロングコートを着ているうえに、室内でもシルクハットを被っているんだよ。
 今までぼくが生で見てきた人のなかで、こんなにステレオタイプの英国紳士じみた格好の人を見たのは初めてだ。
 それにしても、驚くほどに肌が白い。それにシルクハットから出ている長い髪は真っ白だった。ありふれた言い方をするなら、雪のような白さだ。どうやらその白髪を、うなじ辺りで一つ結びにしているらしい。
 この人の目はいつでも閉じていた。目を閉じているが、目を開くときには真っ赤な瞳が見える。
 ちなみにこの人はアルビノで盲目だ。

 一週間ほど前、ぼくは通っている中学校の帰り道でオニキスさんと出会った。

 そのとき彼に渡された銀色のチェーンに金色の王冠をモチーフとしたペンダントを付けた途端、この異世界に瞬間移動した。
 何度も夢やドッキリ番組じゃないのかと思ったが、ここでぼくが見たものは全て現実。

「ねえ、オニキスさん」
「はい。何でしょう?」
「これは夢じゃないよね?」
「何を仰るのですか。もちろん、現実です」
「…………ぼくは誰?」
「夜神楽織舞様。この国の王でございますよ」
 

Re: 気まぐれメランコリー ( No.3 )
日時: 2010/11/08 17:17
名前: 琴莉 (ID: TAzw0xlk)

「お戯れを」と言ってオニキスさんは部屋を出た。

 とりあえずぼくはオニキスさんが用意してくれた服——と言っても最初にぼくがここに来たとき着ていた黒いセーラー服に着替えた。
 それから顔を洗い、髪を梳かして食堂に向かう。




「いただきます」
 目の前に用意されている料理は地球で言うところのフランス料理みたいだった。

 銀のフォークとスプーンを使って食事をしていると、食堂の扉が開いた。

「おはよう、お母さん!」

「おはようございます、母上」

 ぼくの息子二人が登場した。
 礼儀正しく挨拶をして、お辞儀をする。


「えへへ。今日もいい朝だねっ、お母さん!」

 ぼくの右隣りの席に座ったのは、フェリーチェ・デ・ラウレンティス。
 エメラルドグリーンの瞳にはややアンバランスな短い黒髪。柔和だが端整な顔立ち。外見的に年齢はぼくよりほんの少し上くらいだと思う。
 そして、派手ではない落ち着いた貴族の服のようなものを着ている。


「母上、絵を描いていて少々遅れてしまいました。申し訳ありません」

 ぼくの左隣りに座ったのは、ルディ・デ・ラウレンティス。
 サファイアのような青色の瞳に、やはりアンバランスな短い黒髪。多分、この城にいるなかで一番幼く見える顔立ち。外見的には十歳くらいだが、ルディはフェリーチェの実兄だ。
 フェリーチェとは違い、レトロな黒い学生服のようなものを着ている。


 オニキスさんによれば、この世界で王族は黒髪だと決まっているらしい。

 ちなみにこの人達はもちろん、ぼくが生んだ子供ではない。

「あのね、二人とも。ぼくのことは名前で呼んでって言ったはずだよ。あんまり《お母さん》とか《母上》って呼ばないで」

「はーい」

「すみません……」





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