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サービス・ソルジャーズ
日時: 2010/11/16 21:43
名前: ラーズグリーズ (ID: gzQIXahG)

ここでは初。
SF物なので、まぁ苦手な方はスルーすること。


【登場人物】

・ジョニー・リコ(ジョニー)
主人公。機動歩兵。

・ジェラル軍曹
ジョニーの小隊の臨時隊長。


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Re: サービス・ソルジャーズ ( No.1 )
日時: 2010/11/16 22:15
名前: ラーズグリーズ (ID: gzQIXahG)


俺はいつだって降下の前になると、あの震えがやってくる。もちろん注射も予防催眠も受けてはいるが、そうかといって本当におれが恐怖を覚えなくてすむというわけではない。艦に乗っている精神病医は、おれが眠っているあいだに脳波をしらべ、馬鹿げた質問をし、そのあとで、それは恐怖でもなんでもない、ただ、はやりたった競馬馬が出走の前に震えているみたいなもんだと言う。
本当にそうなのかどうか、おれには分からない。おれは競馬馬になったことなどないんだから。だが事実、おれはそのたびに、心底からこわくなるんだ。
 

降下三十分前<ロジャー・ヤング>の降下室に集合すると、小隊長はとっくりとおれたちを調べた。彼は臨時小隊長だった。というのはラスチャック少尉がこの前の降下で戦死されたからだ。彼の本当の階級は小隊軍曹、ジェラル軍曹だ。ジェリーは、プロキシマ系・イスカンダー星出身のフィン・トルコ人で、どこかそのへんのサラリーマンみたいな、色の浅黒い小男だが、おれは一度こいつのすごいところを見たことがある。やつは、背伸びをしなければ手のとどかないほど大きい乱暴者の兵隊ふたりをひっつかみ、そいつらの頭をココナツみたいに鉢合わせさせ、倒れるふたりから、すかさず飛びのいたもんだ。
非番のときのかれは悪くない——下士官としてはだ。かれに面とむかってジェリーと呼びかけたっていいんだ。もちろん新兵ではだめだが、少なくとも戦闘降下をやったことがあるものなら、だれでもだ。
だがいま、ジェリーは勤務中だ。おれたちはみな自分の武装を調べ——おい、きさまたち、自分の命にかかわることなんだぞ、という調子だ——小隊軍曹代理はおれたちの点呼をとったあと、もう一度注意ぶかく調べ、そのあとをこんどはジェリーが、その何物をも見逃さない眼玉で、じろじろとおれたちを調べなおした。かれはおれの前にいる男のところでとまり、そいつのベルトのボタンをおして、健康状態を示すメーターを見た。


「出ろ」


「でも軍曹、ただの風邪なんです。軍医は……」


ジェリーはそれをさえぎり、鋭い声で言った。


「なにが、でも軍曹だ! 軍医は自分で降下するわけじゃない……おまえもだ。一度半も熱があるくせに何をぬかす。降下直前に、おまえとくだらん話をしている暇はないんだ。出ろ!」


ジェンキンスは、がっかりして、いまいましそうに、おれたちからはなれた。おれのほうも胸糞が悪かった。というのは、少尉がこの前の降下で戦死したあと、みんな順ぐりに挙がっていったから、今日の降下となると、おれが第二分隊の分隊長補佐をやるという破目になっていたんだ。それなのにいま分隊に穴がひとつあき、それを埋める方法はないときた。こいつはうまくない。だれかが窮地におちこみ助けをよんでみたところで、助けにきてくれる者はだれもいないということを意味しているんだ。
ジェリーは、そのほかだれも、ふるい落とさなかった。やがてかれはおれたちの前に進みでると、おれたちをながめまわし、悲しそうに首をふってうなった。


「なんというモンキー野郎どもばかりだ!きさまらがみなこの降下であの世行きにでもなれば、はじめっからやり直しで、少尉どのが欲しがっておられたようなまともな兵隊がそうろうかもしれん。だがだめだろう……ちかごろ入ってくるようなやつではな」


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