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人生げぇむ
日時: 2010/11/21 01:50
名前: Cendrillon (ID: M2Q62.Ff)

初めての投稿です(^ω^*)
本当に駄作なんで、色々と目をつぶってください。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
○登場人物○
ハーゲンティ→この小説の語り部。
姫→ハーゲンティと同居している女性。

✝
 
 今日もまた、彼女はガラステーブルの上でボードゲームを広げる。その顔は、まるで新しい玩具を貰った小さな子供のようだ。嬉々とした表情は輝いていて、耳を澄ますと鼻歌まで聞こえてくる。このメロディーは確か、彼女が愛してやまないクラシック音楽だ。

「ゲームの準備出来ました、します?」

 ぼうっと考えていたら、突然聞こえた女性らしいソプラノの声によって我は我に返った。目の前には、さっきまで人生ゲームの準備をしていた彼女の顔が目いっぱい映し出されている。ちらりとテーブルのほうを見ると、準備は完ぺき。なんて早さだ。

「…やらん。お前が一人でやるために準備していたんだろう。自分ひとりでやれ」
「つれませんね。まぁ、そうなんですけど」

 彼女はすっと我の視界から出ると、ガラステーブルの前に戻る。ボードの上のスタート地点には四つのコマがそろっている。あいつはいつもそうだ。何故かいつも一人で四人分のコマを操り、人生ゲームを始めては一人で楽しむ。以前、「そんなことして楽しいのか」と尋ねたら、「ええ。とっても」と嬉しそうに答えた。全く、彼女の考えがわからない。
 そんな事を思っていると、彼女は早速一つ目のコマを動かすため、ルーレットを回し始めた。ゲームを始めると、もう止められない。我は深いため息をつき、何か渇いたのどを潤すために、カウンターテーブルに置いてある水の入ったコップを手に持ち、ギュッと持っている手に力を入れ、精神を手に集中させる。すると、水はみるみるうちに半透明な赤紫に色を変える。色が変るうちにほのかなアルコールとブドウのにおいが鼻をくすぐる。ブドウ酒の完成だ。ふっと手に入れていた力を抜き、精神の集中を解く。コップを口に近付け、含み、こくんと飲み下す。コップにブドウ酒という組み合わせは何とも不釣り合いだったが、味には変わりない。もう一口、口にしようとした時、リビングから体に視線が突き刺さった。誰だかわかるが、一応振り向いておく。そこには、先ほど人生ゲームを始めていた張本人がぽつんと立っていた。

「ハーゲンティ、良い物を飲んでますね」
「お前は飲むなよ、姫。酒だからな」
「未成年だからってそんな」
「あと体弱いだろ。持病持ち。引っこんでろ」
「わかりましたよ」

 姫は明らかに不満そうな顔をしながら、テクテクと去って行く。聞き分けがいいのが救いだ。はあっ息を吐くと、少しアルコールの匂いがした。少し開けた窓からは、小鳥のさえずりが聞こえる。か弱く非力な声。何もできないような声。まるで、あの時の彼女のようだ。すべてが白一色で、娯楽も苦痛も何もない、ただただ死を待つ、まるで地獄のような生活を送っていた姫の、悲しくて、辛くて、悔み憎むあのか細い声に。
 自然と口のはしがつりあがる。思い出すだけで面白い。あの時の、助けを求めずに諦めていた滑稽な彼女の姿が。

「…はははっ」

ついつい笑い声が漏れる。本当はもっと大きな声で、腹を痛めるほど笑いたいが、姫がリビングにいるのでやめておく。どうせあとで文句を言われ、問いただされるに違いない。すっと上を向き、なんとか漏れる笑い声を鎮めると、我はキュッと口を結び、同時にニィッといやらしく口を歪めた。
———やはり、彼女は面白い。契約を交わして正解だ。
———その儚い命が散るまで、永遠についていこう。
我はそう心の中で呟き、その場を後にした。



完。

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